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エピローグ
戦いのあと、世界はゆっくりと呼吸を取り戻した。
瓦礫はまだ残り、完全な再生には程遠い。けれど、人々の目には、かつて失われた“余白”が戻っていた。
レイは丘の上に立ち、風に揺れる草原を見渡していた。
緑は一色ではない。深い緑、淡い緑、陽に透ける黄緑。
それぞれが混ざり合い、境界を曖昧にしながら、確かに生きている。
隣に立つユイが、小さく息を吸った。
「ねえ、レイ」
「ん?」
「世界ってさ……」
彼女は言葉を探すように、一瞬だけ空を仰いだ。
「色は色めく色々と、なんだね」
レイは少し考えてから、頷いた。
「完成しないから、色づく。
混ざるから、意味が増える」
かつて無色王が求めた“完成”は、ここにはない。
代わりにあるのは、不揃いで、曖昧で、時にぶつかり合う無数の色。
だがそれこそが、世界だった。
遠くで子どもたちが走り回り、笑い声が風に乗る。
赤も、青も、白も、紫も――
名もなき色さえ、そこに混じっている。
ユイは忍び装束を脱ぎ、影から一歩外へ出た。
レイは正面に立つ者として、今日も世界の流れを受け止めている。
誰かが前に立ち、
誰かが隣に並び、
誰かが後ろから支える。
色は固定されない。
役割も、意味も、常に揺れ動く。
それでも世界は続いていく。
色めきながら。
色々と、重なり合いながら。
――そして、物語は終わらない。




