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色は色めく色々と  作者: 境乃 シキ
11/17

阿吽の最奥、崩れかけた観測回廊。

床には幾何学模様が走り、まるで道のように枝分かれしていた。


メガロは杖で床を叩き、淡く光る線を指し示す。


「無色王の核へ至る経路だ。だが、正面突破は想定していない」


レイが眉をひそめる。


「正面に立つって言ったのは、あんただろ」


「立つのは“最後”だ」


メガロは苦笑しながら言った。


「ここはな……そこは片側二車線!

力も覚悟も、流れを間違えれば即座に詰まる」


ユイが線の密集具合を見て、鼻を鳴らす。


「……これじゃ、ミチミチだ!

影が入り込む余地がない」


「だから用意した」


メガロは外套の内から、小さな水晶球を取り出した。

内部で、色が絶えず動いている。


「これは“逃げ道”ではない。“余白”だ」


レイが受け取り、首を傾げる。


「余白?」


「正面に立つ者が砕けたとき、

完全に消えないための緩衝材だ」


ユイが覗き込み、鋭く言う。


「……右肘だけではないな?

身体全体に回る構造」


「察しがいい」


メガロは続ける。


「核に触れた瞬間、色は均される。

だから――詰める場所を選ばねばならん」


ユイがレイの背中を押す。


「そこよりここがいいわ。

中心じゃない、少しズレたところ」


「なぜだ?」


「だって気持ちがいいもの。

均されにくい」


レイは苦笑する。


「感覚派だな」


メガロが、ふと思い出したように呟く。


「……昔は右寄りだったんだけどな」


「何が?」


「私の考え方だ」


そして、レイの髪型をちらりと見て言う。


「横分けでござるか?

なるほど、偏りを隠すには悪くない」


「今それ関係あるか?」


「あるとも。世界は偏りで持つ」


メガロは、最後に真剣な声で告げた。


「いいか、止まるな」


「止まらない?」


「そうだ」


彼は、杖を強く床に突いた。


「動いて、動いて、動いて、動いて参る。

均される前に、形を変え続けろ」


回廊が震え、奥で低い唸りが響く。

無色王が、完全覚醒へ近づいている合図だった。


ユイが影に溶けながら言う。


「保険は一回きりよ」


レイは水晶球を握りしめ、前を見据える。


「十分だ」


メガロは、霞んだ目でその背中を見送った。


「……生き延びろ。

それが、私の最後の願いだ」


正面に立つ者は、

砕けることを前提に――なお、進む。


保険は用意された。

あとは、それを使わずに済むかどうか。


阿吽は、静かに次の門を開いた。


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