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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第3章『ほほえみデンタル、異世界の医療へ一歩』

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05.異世界でも資格確認できます

受付の前にある白い機械のまわりに、人の気配が集まっていた。

外からの光が天板の上に薄く落ち、その中でカードを入れる口だけが小さく影を落としている。

誰も余計な言葉を挟まず、その場の静けさだけが伸びていた。


「どれどれ~…」


サムの声がゆっくり落ちる。

その声に合わせて、周囲の視線が一斉に機械へ向かった。


サムが自分のカードを取り出し機械に入れる。

指先の動きに合わせて、カードの端が光を一度だけ弾いた。


カードリーダーの画面が切り替わり、個人認証を求める画面になる。

光の色が変わり、表示の向きが静かに揃う。


(え?……使えるの?)


胸の奥で同じ思いが重なり、音にならない波が短く揺れた。


(……そういえばさっき、院長が通した時も資格確認できていたような……あれ?)


別の思考が続き、空気の底にゆっくり沈んでいく。


「これはどっちがいいんだ?」


サムの問いが画面の前で止まる。


「4桁の暗証番号で本人確認をするか、カメラを起動して顔を映し出して本人確認かのどっちかですよ」


真人の声が落ち着いて伸び、選択肢の説明だけが場に残った。


「……じゃあ、顔の方にするかな」


サムの声が静かに決まる。


カメラが起動してサムの顔を映し出す。

画面の中で輪郭が形を取り、受付の前に立つ姿と重なる。


しばらくして画面が切り替わり医療情報等の同意画面になる。

表示が変わり、光の向きだけが少しだけ変化した。


「これは?」


サムの問いが短く落ちる。


「サムさんの過去の医療情報…過去に飲んでいたお薬の情報とか、診療情報を提供することを同意しますか?という質問です。なのでどちらかを選択してください」


真人の説明が丁寧に重なり、言葉だけが静かに積み上がっていく。


「同意するとどうなる?」


サムの声が、次の説明を促すように細く伸びる。


「我々にその情報…まぁあれば…ですけど、が提供されて、我々はそれを閲覧して例えば薬とか病歴があったらこういうことに気を付けて診療をする。ということができます。結構重要な情報だったりします」


真人の声が淡々と流れる。

画面の向こうにある情報だけが、そこにあるものとして示される。


「ほぉ……同意してみるかな」


サムの声が一度沈み、決定だけが場に残った。


画面が切り替わり操作が終わる。

表示の動きが止まり、光の明るさだけが一定に落ち着く。


「あっという間だな」


サムの言葉が小さくこぼれた。


「今みたいな個人カードを入れて、その人の保険証の情報も確認できるんですよ~」


真人の声が、機械の存在をなぞるように広がる。


「ほぉ……保険証確認かぁ……」


サムの声が低く落ち、受付のあたりに薄い層をつくった。


(……え?保険証が通じている?)


同じ疑問が胸の内側で形を取り、重なり合う。


「あ…あの!!サムさん」


大和の声が一歩前へ出る。


「なんだ?」


サムの視線が大和のほうへ向いた気配が、空気の向きで伝わる。


「保険証って……」


大和の言葉が途中で揺れ、その先を委ねるように留まる。


「お前さんたちの個人カードがその保険証っていうなんだろう?」


サムの声が静かに流れた。


「あ……はい」


大和の返事が短く落ちる。


「みんな持ってるさ。何かしらのカードを…」


サムの言葉が、当たり前のこととしてそこに置かれた。


「あの……その保険証なんですが……年齢によって医療費の金額が…変わるんですけど…」


あすかの声が控えめに伸び、言葉の端で小さく揺れる。


「俺らの国もそうだぞ。あとついでにいうなら個人カードを持っていないものは医療費の減額を受けれない」


サムの声が低く重なった。


「へぇ……」


美里の声が短く落ち、場に薄い余韻だけを残す。


「……ま、安心してデンタルクリニックを運営してくれ」


サムの言葉が静かに場を締める。


受付の空気が少し緩み、次の声がその隙間に滑り込んだ。


「昔カードがなかった時にですね、薬の横流しとか同じ薬を何回ももらいに来るっていうのがあって……あとは身元詐称とか……」


リンの声が淡く流れ、過去の出来事だけが輪郭を持たずに示される。


「それを是正するために個人カードの発行を義務化したんだよ。カードの発行は各ギルドでやってんだ」


サムの声が続き、今に至る仕組みだけが短く描かれる。


「いろいろあったんです」


リンの一言がその上に落ちた。


「何があったかは想像に任せるさ」


サムの声が、これ以上は語らない線を引く。


「いろいろな苦労があったんですね……」


智子の声が静かに沈む。


「まぁな……」


サムの返事が短く響いた。


サムが手元のカードを少し持ち上げる。

その表面が光を受け、受付の前に小さく反射した。


「ちなみに、医療ギルドで発行しているカードはこういうのだ」


その言葉とともに、カードの形がはっきりと場に示される。


(え?……マイナカードと同じじゃん。なんで?)


見覚えのある形を前にして、同じ思いが胸の奥で重なっていく。


サムが見せたカードは見覚えのあるカードの形をしていた。

輪郭も大きさも、どこかで見たことのあるものとよく似ている。


「……えっと……今日はいろいろとありがとうございます」


志帆の声が静かに落ち、締めくくりの言葉として場に広がる。


「個人カードで受付できることも書かないとですね。この機械の写真を撮らせてもらいますね」


リンの声が受付の機械へ向かう。


「どうぞどうぞ~」


真人の声が軽く続いた。


リンたちは写真を撮りクリニックを後にする。

レンズの向こう側に白い機械とまわりの空気が収まり、足音がゆっくりと入口のほうへ遠ざかっていく。


(……なんか知らないけど……助かった~~~~)


胸の奥でその思いが長く伸び、誰にも聞こえないまま静かに落ち着いていった。

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