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交換日記は異世界から ―教室に届いた異世界からのSOS―  作者: クサフグ侍


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第28話

 驚きと会話で喉がカラカラな事に健一は気が付いた。


「すみません、水を飲みに湖まで行ってきます……」


 すると、アルビオルが静かに目を閉じ、何かを呟いた。すると、空気に小さな渦が起き、水の粒が集まってくる。みるみるうちに、透明な水球が健一の前に浮かんだ。


「これで喉を潤せ」


 健一は目を丸くした。


「え……魔法!? すごい、初めて見た!」


 動揺が喜びに変わって、思わず笑顔になった。水球に手を伸ばし、口を付ける。冷たくて新鮮な水が口に流れ込んできた。

 喉がスッキリして、体が元気になった感じがする。


「ありがとうございます! これ、どうやって?」


 アルビオルは穏やかに説明した。


「この世界では、真法と呼ぶ。真なる力を使って、世界に願いを届けるんだ。世界に害を為さない者なら、誰でも扱える。お主も問題ないはずだ」


 健一は興奮した。自分にも出来る?!


「私もできるんですか? 教えてください! お願いします!」


 食いつくように頼むと、アルビオルは小さく笑った。


「よし、望むなら教える。真法は真なる力を使い、あらゆることを起こす。その規模は、世界に求められる者ほど強くなる。使い熟すには熟練も大事だ。まずは、お主の体に真なる力を流し体感してもらう」


 アルビオルが体を少し近づけ、息を吐いた。健一の体に温かい何かが流れ込んでくる。最初はくすぐったい感じだったけど、だんだん体の中が光で満ちるような感覚になった。


「これが、真なる力か……」


 健一は目を閉じて、感じ取ろうとした。体が軽くなって、世界とつながってるみたい。


「慣れてきたか。力を感知でき存在を理解できたら大丈夫だ。次は世界に願ってみろ。小さな火を」


 健一は集中して、手のひらに小さな炎をイメージした。


「出てこい……」


 すると、ぱちっと小さな火が浮かんだ!


「わっ、できた!」


 喜びが爆発した。次は水。同じように願うと、少量の水が手のひらに溜まった。


「すごいよ、これ! ありがとう、アルビオルさん!」


 アルビオルは満足げに頷いた。


「最初はこれくらいだ。練習すればもっとできるようになる」


 アルビオルは異変の範囲を確認に向かうと言った。健一に大陸の形を知っているかと聞き、健一が高原からの景色しか知らないと答えると続けた。


「お主にこの世界の形を教えておこう。この大陸は、巨大な山が中央にあり、周りを山脈が囲む。そこに高原がある。お主のいる場所だな」


 健一は耳を傾けた。


「その山と山脈をグルリと囲むのが大森林。そして、外側は大草原で占められていた。大陸から五つの半島が飛び出して、超高空から見れば人の掌みたいに見える」


 健一は想像した。手のひら形の大陸か。面白いな。


「大草原が一番広かったのに、一夜で黒い森に変わっちゃったんですね……」


 アルビオルは声を低くした。


「そうだ。あの変化は異常。守護者は山、森林、大草原、半島それぞれにいる。お主の知る老人は山と山の民の守護者だ。あいつなら詳しく知っているはず」


 健一は頷いた。老人に聞くべきことが増えた。


「アルビオルさん、ありがとう。こんなに教えてくれて……」


アルビオルは体を起こし、飛び立つ準備をした。


「そろそろ行く。お主は小屋に戻れ。俺は世界の変化を確認する」


 健一は慌てて礼を言った。


「本当に助かりました! 守ってくれて、魔法も教えてくれて……。何かわかったら、教えてください。また会えますか?」


アルビオルは静かに答えた。


「また会うさ」


 そして、長い体をうねらせて空に飛び立った。健一は見送りながら、胸が熱くなった。あの白竜、いい奴だな。

 小屋に戻る道中、健一は昨日の異変と今日の変化を振り返った。黒い森の不気味さ、世界の形、真法の力。頭がいっぱいだけど、なんだかワクワクもする。湖の水面がキラキラ輝く中、健一は小屋の扉を開けた。


 小屋に戻ると、健一は暖炉のそばに座った。ふと、日記アプリを確認してなかったことを思い出した。


「そういえば、葵からの返事、来てるはずだ……」


 ポケットからスマホを取り出し、アプリを開いた。新たな日記が届いている。


『現在、私と友人の彩花、岳人さんと娘さんの千智さんで相談しながら調べてます。この日記は24日に書いてますが、健一さんに届くのは26日と予測してます。健一さんは夜に書いてるのかな? その当日の朝に私に届いてます。不思議』


「千智!?」


 健一は驚いた。岳人の娘、野比千智。ちっちゃい頃から知ってる子だ。健一には子供がいないけど、親友の娘はまるで自分の子みたいに思えた。

 よく面倒を見た事を思い出す。


「彩花って、葵の友達か。みんなで動いてくれてるなんて……」


 胸が熱くなった。葵、彩花、岳人、千智。東京でこんなに多くの人が自分を助けようとしてくれてる。感謝が溢れて、目が少し潤んだ。


「ありがとう、みんな……」


 日記の時差も確認できた。健一が夜に書く日記は葵の朝に届き、葵の日記は2日後に届くいている。


「不思議だよな、このアプリ」


 健一は苦笑しながら同意した。さて、文字の制限があるから、今日の出来事をどうまとめようか。黒い森の変化、白竜との出会い、真法を覚えたこと。情報が多すぎる。


「これ、収まらないよな……」


 暖炉に火をくべ、健一は黄緑色の果実を食べながら考えた。大草原が黒い森に変わった異常事態。アルビオルとの会話、真法の力。どれも信じられないけど、事態は変化していく。

 今は老人や葵、岳人、千智に頼るしかない。落ち着いた気持ちで、健一は日記を書き始めた。


『大きな異変に巻き込まれて、気を失った。白竜のアルビオルに助けられて話をした。大草原が一夜で黒い森に変わった! アルビオルに真法を教わった。火と水が出せる! アルビオルも異常事態だと言っている。日記の時差は確認できた。みんなに感謝を伝えて』


 保存ボタンを押し、スマホをポケットに戻し、草の寝床に横になった。湖に映る二つの月を見ながら、健一は呟いた。


「たくさんの人が支えてくれてる。頑張らなきゃな」


 疲れが押し寄せ、目を閉じた。十三日目が終わった。

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