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交換日記は異世界から ―教室に届いた異世界からのSOS―  作者: クサフグ侍


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第25話

 7月25日、佐藤健一は小屋の草を敷いた寝床で目覚めた。生活に慣れ、野比岳人や高校生、守護者の老人の存在が心の支えとなり、健一は孤独の中にも希望を見出していた。

 テーブルの上には黄緑色の果実、木の実の塩、香草、老人からもらった米や干し肉が並び、生活の基盤が整っている。

 ポケットからスマホを取り出し、日記アプリを開き、新たな日記を確認する。


『佐藤葵です、よろしく! 佐藤被り、奇跡ですね。調べたら日本での行方不明事件の多さに驚きました。似たケース無いか調べてみます。日記アプリは岳人さんや友人は見れないみたいです。ノートに書き写して相談しています』


 健一は驚きつつ、笑みがこぼれた。


「佐藤葵……同じ佐藤!?」


 高校生の名前がわかり、偶然の一致に運命的なものを感じた。「調べたら日本での行方不明事件の多さに驚きました」という言葉に、葵が本気で動いてくれていることに感謝が湧いた。

 日記アプリが自分と葵しか見られないというのも興味深い。


「このアプリ、ほんとに謎だな」


 岳人や葵の友人が見られないなら、特別な仕組みがあるのかもしれない。スマホをポケットに戻し、健一は活動を開始した。


 朝食に黄緑色の果実を食べ、湖の水で喉を潤した健一は、手製の槍を手に小屋を出た。

 まず、湖の魚罠を確認。浅瀬に近づくと、水面下で動く影が見えた。罠を引き上げると、銀色の魚が二匹、網目の中で跳ねている。


「よし、今日も獲れた!」


 機嫌よく魚を手に、焚き火を準備。湖畔の草地に乾燥した枝を集め、火打ち石で火をつける。

 魚をナイフでさばき、鱗をこそぎ、内臓を取り除く。枝に刺し、木の実の塩を振りかけて焼いた。

 香ばしい香りが漂い、カリッとした皮とふわっとした身が絶妙。


「シンプルだが、うまい!」


 魚罠を麻紐と小枝で補修し、虫を餌に再び仕掛けた。

 湖周辺を歩きながら、健一は生息する動物を観察した。草地を走るウサギのような小動物は、頭に小さな角がある。遠くで草を食む鹿のような動物は、角が複雑に分岐し、毛の色が青みがかった灰色だ。


「地球とは微妙に違うな」


 鳥も羽の模様が異様に鮮やかで、これらは白竜の庭の特徴なのだろうか。守護者の老人に聞きたいことが増えた。


 午後、健一は湖を離れ、森側に足を向けた。高原の端、徐々に勾配が下り始める場所まで歩く。

 徒歩1時間ほどで、草地がまばらになり、急な斜面が始まる地点に到達。足を止め、眼下の景色を眺めた。

 裾野には濃密な常緑樹の森が広がり、針葉樹と広葉樹が混在する神秘的な帯。その頭越しには、果てしない大草原が金色と緑の波をなして地平線まで続く。

 風がそよぐと、森の葉擦れと草原の揺れる波の様な波形が、まるで波紋が広がる大海原だ。健一はしばしその雄大な光景に浸った。


「こんな景色、東京じゃ絶対見られないな」


 生活が安定した今、高原の美しさが心に染みる。いままで、帰る手がかりは皆無だ。森や草原に足を踏み入れれば何かあるかもしれないが、半日かかる下りと道のない森、戻る労力を考えるとリスクが大きい。


「老人や葵さんや岳人に頼る方が現実的か」


 岳人に生存が伝わったのは大きな希望だが、具体的な進展はまだわからない。

 

 その時、地面が揺れた。


「ん!?」


 まるで空間そのものが掻き回されるような、奇妙な振動。地震とは違う、不自然な揺れが健一を襲った。

 足元がぐらつき、バランスを崩して草地に倒れ込む。


「なんだ、これ!?」


 地面に伏せながら、頭がクラクラする。視界が歪み、まるで世界が一瞬溶けるような感覚。東京からこの世界に飛ばされたあの瞬間を思い出した。意識が薄れ、健一は気を失った。


最後まで読んでくれて感謝します!

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