第18話
野比岳人。会社員やってるけど、見た目も中身もあんま会社員っぽくねえってよく言われる。
まぁ、趣味が筋トレにアウトドア、格闘技もちょいかじりで、スポーツはやらねえけど、なんでもそこそこできると自負してる。
豪快だけど落ち着いてる、動じねえ山みたいな男、って周りに言われる。
まぁ、悪くねえ評価だ。
今、俺は悩みと言うか心配事がある。
佐藤健一。俺の数少ない親友で、会社の別の部署の同僚。タイプは全然違うけど、なんか話が合って、親友って呼べるやつだ。
7月16日、健一の50歳の誕生日だった。その日、仕事終わりに「月の盃」って店で獺祭飲む約束してた。
健一、酒好きだし、誕生日くらい良い酒を飲もうぜ、って盛り上がってたのに、約束の日、会社に来なかった。
朝から連絡取れねえ。LINEも電話も無反応。会社から何度も連絡したけど、音信不通。
心配した上司から「野比、お前、健一と仲いいだろ? 自宅見てきてくれ」って頼まれて、17日に健一のマンション行ったけど、不在。
部屋、誰もいねえ。なんか、嫌な予感しかしねえ。健一、どこ行ったんだよ? 事故か? 病気か? まさか、神隠し?
それから毎日、気になって仕方ねえ。会社でも「佐藤、どこ行った?」って話ばっか。
心当たりを色々当たってみたけど、ダメだった。
家族もいねえ独身野郎だし、親戚も遠方で連絡つかねえ。
なんか、胸騒ぎが収まらねえ。そんな中、今日、昼前に知らねえ番号から電話かかってきた。
出てみたら、若い女の子の声。
「あの、野比岳人さんですか? わたし、佐藤葵、高校生です。佐藤健一さんのことで」
佐藤? 健一に娘はいねえ。親戚か? まさか、隠し子? いや、んなわけねえだろ。
健一、そんなタイプじゃねえ。でも、佐藤って名前、偶然か?
んで、葵って子が話し出した内容、ぶっ飛んでて冗談としか思えん。
健一が「異世界」にいるだと?
湖と草原、山脈に囲まれた小屋にいて、月が二つ、白い生物が白竜で、守護者の老人に会った、とか。
スマホに謎の日記アプリが出てきて、健一からのメッセージ読んで、文字でやりとりしてるって話しを信用しろと?
しかも、16日に「月の盃」で獺祭飲む約束だった、って。マジか。それ、俺と健一の話だ。
葵、どうやって知った? 健一から聞いたって、ほんとかよ?
「ちょっと待って、君、健一がどこにいるって? 異世界? 日記アプリ? そんな」
思わず声上げちまった。だって、こんな話、普通信じねえだろ。SF映画かよ。
電話の向こう、めっちゃ必死で訴えてくる。
「ほんとです! 健一さん、湖の小屋にいて、魚罠作ったり、ヤリ作ったり、困ってるんです! わたしに助けてって!」
声は本気に聞こえる。嘘ついてる感じじゃねえ。でも、異世界? 月が二つ? 頭整理しきれねえ。
健一、16日から消えて、確かに連絡つかねえ。葵の話、荒唐無稽だけど、「月の盃」の約束、ピンポイントで合ってる。健一と関わりあるのは確かだ。
電話じゃ埒が明かねえ。
場所を聞くと意外と近い。
「今、〇〇のカフェにいます」
「そこ、近いな。今から行く。30分で着く」
そう伝えた。幸い、車で20分くらいのとこ。なんか、直接会って話さねえと、健一の状況わかんねえ。
葵、どんな子だ? 高校生って、16から18くらいか。佐藤って名前、ほんとに偶然? 健一の親戚とか? でも、健一、親戚の話あんましねえし。
隠し子って線も、さすがにねえよな。健一、そんなやつじゃねえ。
車運転しながら、必死に頭回す。葵の話、信じていいのか? 異世界とか、白竜とか、ふざけてんのか?
でも、健一、16日から消えてるのは事実。「月の盃」の約束、俺と健一しか知らねえ。
どうやって知った? 健一がほんとに葵にメッセージ送ってるなら、なんかヤバい状況なのは確かだ。
異世界は信じられねえけど、健一が困ってるなら、放っとけねえ。親友だ。助けなきゃならん。
この葵って子、嘘ついてる感じじゃねえ。けど、念のため、慎重にいかねえと。
健一の無事を確かめるのが第一。葵がほんとに健一と繋がってるなら、なんか証拠あるよな? 日記アプリ、見せてもらおう。
カフェ着く直前、頭整理した。まず、葵に会って、話聞く。日記アプリ、じっくり見せてもらう。健一の状況、もっと詳しく知りたい。「月の盃」の話、間違いねえなら、葵、健一とガチで繋がってる。
異世界か。まだ信じきれねえけど、健一がどこかにいるのは確かだ。湖と草原、山脈、小屋。白竜、守護者の老人。
なんか、頭ん中で映像が浮かぶ。健一、どんな状況だ? 魚罠作って、ヤリ持って、老人に会って、希望見えたって。
健一、いつもクールなのに、こんなとこでサバイバルしてんのかよ。なんか、らしいっちゃらしいけど。
カフェの駐車場に着いた。深呼吸して、ドア開ける。葵、どんな子だ? 高校生二人、って言ってたから、友達連れか。
話聞いて、健一の無事を確かめたい。異世界でも、遭難でも、なんでもいい。健一、生きててくれよ。俺、なんとかしてやるからな。
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