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一途すぎる女の異世界転移  作者: 油穴
リューテリア王宮編
3/3

2-絶望の事情説明

国の名前はよく分からないけれど、私たちの呼び方もよくは分からないけれど、これだけは分かった。


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ご主人様ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。よく分からない事情に巻き込まれ?狙われ?たのかは分からないけれど、だけど今日の約束は守れませんごめんなさい。今すぐに連絡をしてさしあげたいけれど、間抜けなことにスマホを落としてしまって手元にはないのだ。遅刻の連絡もできないダメペットでごめんなさい。福田さんが何か見てたはずだからパパ経由で連絡が行けばいいけれど、それでもご心配をおかけしてしまうわごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


「おい、あんた大丈夫か?」


短髪男性の声がひどく遠くに聞こえる。自分の心臓の音がやたら強く聞こえて呼吸が浅くなっている。そして顔から妙に熱が無くなっていくのを感じる。目の前が真っ暗な気持ちになる、とはどういうことかを身を持って知った。


だが。倒れられない。

今倒れてしまったら、この不気味なローブたちに弱みを完全に握られてしまう。主導権を握られてしまう。顔色が悪いのもショックを受けているのも相手はもうわかっている。これ以上握られてはならない。一過性のものだったと思わせなければならない。切り替えなければ。切り替えなければならない。


でないと、こいつらから情報は抜けない。


大きく息を吸って目を閉じて大好きで大好きで大好きなご主人様の顔を思い浮かべ大きく息を吐きだす。目を開けて短髪男性に焦点を合わせる。とびっきりの笑顔でニッコリと笑いかける。気持ち切り替えの起点を作ってくれたお礼だ。


「ええ、大丈夫よ。ありがとう」


白髭ローブにもニッコリと笑ってやる。自分の顔が良いのは分かっているのだ。ここは出し惜しみ無しで主導権を握りにいかなければならない。少しでも有利な状況を作らなくては。


「そう。私の大事な話を潰してくれたのね。あなたたちの国家財政に匹敵するほどの大事なものを」


怒りを滲ませた私の言葉を聞き白髭ローブの眉がピクリと動く。

こいつは「願い事」と言ったのだ。願う立場で私の不利益を出したのだ。このことをまずは分かってもらう。この場にいるローブの面々に私の言葉を染み込ませるのだ。そうして時間を稼ぐ。その間に先ほどの情報から推察しなければならない。


私と他の3人を勇者様がたと言っていた。となると、随分と現実離れした発想ではあるけれど、昔小耳に挟んだファンタジー世界への転移とか召喚とかかしら?転移よりは召喚かしらね。そして「勇者」となると何かと戦ってほしいのだろう。

だけれど私たちは戦いの素人だ。それでも戦いで頼るならば何かしらの戦闘力を得る手段があるか、もしくは召喚の儀式に紛れているかのどちらかね。

戦闘力を得るなんらかの手段があるなら私たちを呼ばずにこの国の人が行えば良いだけ。条件が異世界人に設定されていない限りはそれが自然なものだわ。ならば、召喚儀式に紛れている形で私たちの戦闘力が加算されていると考えるのが自然かしらね。

何故か全く違う国であろうこいつらの言葉が分かるし、何かしらのものが召喚の儀式紛れているのは確定だろう。


そして儀式に紛れ込まされている戦闘力をこいつらの手を借りて確認するのは良くない。貸しが少なくなるし、何よりリスクが大きいわ。正直に教えてくれるとも限らないし、その確認の際に枷をつけられるかもしれないもの。


どうにか自力で確認できなければ優位な状態には立てないと思うべきね。確かこういった話が好きな友人が言ってたのはなんだったかしら?状態確認?あぁ、なら――


「≪ステータス≫」


----------------------

【名前】桜木 杏奈

【職業】賢者

【Lv】1

【スキル】魔力増大/魔力操作増大/全魔力適正

【称号】梨沙のペット/召喚者

----------------------


白髭ローブたちがギョッとしているのを雰囲気で感じる。

そりゃそうだろう。わざわざ教えて優位性を取ろうとしていたものを、さっきまで狼狽していた女が勝手に実行しているのだから。


だが。


それよりも何よりも嬉しいのは【梨沙のペット】の称号だ。

ご主人様との絆は異世界にも認められるくらいのものだという何よりも動かない証拠だからだ。

異世界に行っても、どこに行っても、連絡が取れなくても、私はあの方のモノだというのは動かないのだ。この世の摂理なのだ。世界に認めさせたのだ。嬉しくないわけがない。嬉しい。スマホが無い状態でご主人様との繋がりがなくなったと思っていたが、ちゃんとまだあったのだ。ひたすら嬉しい。これがあれば私はまだ頑張れる。どこまでも頑張れる。


上がりそうになる口角を表情筋で抑え、他の3人に言う。


「あなたたちもコレを確認しておいた方が良いと思うわよ」


「そうか。≪ステータス≫」

「ぇ……。ス、≪ステータス≫」

「あぁ?どういうことだよ!」


短髪男性と女子高生は素直にステータスを唱えた。短髪男性はさっきの声かけと言い、かなり頭の回転が速そうだ。女子高生は流されやすい可能性があるわね。でも計算は出来る気がするわ。

だけど、問題は金髪チャラ男かしらね。頭の回転は悪いし反発心だけで生きてそうだわ。チャラ男に近づいて小声で言う。


(あなた、あのローブ達に借りを作りたいの?)

「はあ?よく分かんねえよ」

(……ステータスって言ってみるのをオススメするわ)

「あぁ?≪ステータス≫。うおっ」


ため息が出そうになるのをぐっとこらえる。かなり頭が悪いわね。この状況を私一人だけでは切り抜けられないだろうけれど、金髪は切り捨てるのも視野に入れるべきかしら。とにかくよくよく言って聞かせてダメな場合はどうにかしないとマズいわね。


だけど、とにかくまずはひとつ。ローブたちとの交渉に使える札は手に入れた。

ステータスはご主人様との絆確認用ツール。それ以外はおまけ。

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