表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/22

第十七章 そして、這い寄る闇



「これに写ってるの、何か分かります? あ、動画もありますけど、確認します?」


 彼と初めてキスをしたその場所で、私は窮地に追い込まれていた。

 あの日からまだ八日しか経っていない。



「出遅れちゃったなぁ~まさかもうここまでの仲だったとは。オタクだって言うから、そっちの好みにも必死に合わせたのにさあ? 俺のことだっていいなって思ってたでしょ? すごく優しくしてくれたじゃん。もうちょっとでオトせると思ってたんだけどな~ハア~すげえショックだわ~。慰めてほしいくらい」


 目の前でヘラヘラと下品に笑っている男は、私の知っている細川くんではなかった。いや、別人だと信じたかった。

 けれど、そんな私を嘲笑うように彼は言った。


「どうしたんですか? そんな怯えた顔して。大丈夫。高梨さんが俺の、あ~間違えた……僕の言うこと聞いてくれたら、この写真も動画もぜーんぶデータ消しますから。週刊誌に売られたら困っちゃいますもんね? あなたの好きなアイドル、Shangri-Laの三上凪……いけね、ま~た言い方間違えたなあ。《《細川くん》》はこういう言い方しませんもんね? ダメだなあ僕。……あなたの大好きな、大家のじいさんの孫が」

 ケラケラと喉で笑う不快な声。

 それを聞きながら、足が震えだしそうなのを必死で堪えていた。背中にはさっきからずっと嫌な汗をかいている。


「……どうして」

 ――どうして、こんなものがあるの……?


 吐き出した息に音が乗って声になる。吐き出されたそれは脚とは違い、すっかり震えてしまっていた。

 足元から這い上がってくるのは、言い知れぬ不安と、確かな恐怖。

 男が摘まんでいたその写真には、恋人達にとっては、ごくありふれたスキンシップが写っている。それは、私と彼の思い出の日。


 幸せそうに微笑み合い、口づけを交わす私達の姿だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ