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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 2学期

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3-23. 11月……バカじゃないですか?(1/2)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

松藤(まっとう):仁志の友だち。バスケ部。美海のことが昔から好きで告白する。

(あや):仁志の妹。小学6年生。かわいいけど、イタズラ好きで抜け目がない。

 金曜日に美海と仲直りした後、帰宅直後に速攻でぶっ倒れた。で、気が付いて目覚まし時計を見たら土曜日の昼だった。


 額にはしっかりと冷却ジェルシートが貼ってあって、ふと横に置いてあった体温計が目に入ったので熱を測ってみると38℃台を叩き出していた。これでも昨日よりは楽だから、昨夜は39℃台くらいあったのかもしれない。


 まだちょっとボーっとした頭でそんなことを考えていたら、ノックもなしに扉が開かれた。


「あ! お兄ちゃん、起きた!?」


 彩だ。手には冷却ジェルシートを持っていて、顔は安堵した様子がありありと表現されている。


「彩か。看病してくれたのか?」


 彩が数回頷いた。


「うん。お母さんと交代交代で。あ、起きなくていいからね、今、私がおでこのシートを取り替えるよ」


 俺がどうにか重い身体を起こそうと腕に力を込めて起きようとすると、彩が少し慌てた様子で近寄ってきた。


「悪かったな……ほら風邪をうつすかもだからしなくてもいいぞ? もう大丈夫だから」


 俺が彩の言うことも聞かずに身体をなおも起こそうとしていると、彩に肩をがっと掴まれて思いきり睨まれてしまう。


「大丈夫なわけないでしょ! いいから大人しく寝てなさい!」


 彩はいつものイタズラっぽい笑みやからかうような言葉もなく、真剣な目と言葉で俺をまるで母さんのように叱りつけてきた。


 母さんそっくりというか、なんだったら母さんに言われたと思ったくらいだ。


「……一瞬、母さんかと思った」


「……えへっ、似てた? でも、今のはお母さんじゃなくて、私の言葉だからね。病人は大人しく寝てて。お腹も空いているでしょ? 後でご飯を持ってくるから」


「分かったよ。いろいろとありがとな」


 病人を叱りつけたバツの悪さか、彩は舌をチロッと出して笑ってごまかし、そのままささっと額にあったシートと手に持っていたシートを交換する。


 ヒンヤリした冷却ジェルシートのおかげで少しずつ頭が冴えてきた気がした。頭が冴えてくるといろいろなことが思い浮かんでくる。


 あ、美海に連絡できていない。


「いいけど、美海ちゃんや聖納さんにもちゃんと伝えておいてね」


「え?」


 まるで俺の心を読んだかのようなバッチリなタイミングで、彩が美海と聖納のことを言い始める。


 ん? あれ? 美海と……聖納?


「リンクの通知が昨日の夜からかなりきてて、仕方ないからロック外して、美海ちゃんと聖納さんのグループリンクに連絡しちゃったから」


「え? ええ?」


 俺は急いでスマホを手に取ってロックを解除すると、通知がすごいことになっていた。


 まず美海がグループリンクを復活させる宣言的なものをしてから、聖納が安心したような残念がっているような返事をして、しばらくそのやり取りが続いていた。


 しかし、俺がいつまでも返事をしなかったため、美海が会った時に俺が熱っぽかったのを思い出し、聖納にそのことを伝えて、そこから2人の心配、心配、心配のオンパレードだった。


 やがて、彩が言ったように、俺が体調不良でぶっ倒れたってことをby彩付きのメッセージで送られていて、心配に油が注がれて大炎上していた。


 なんなら数分前にも安否確認のメッセージが2人から飛んできている。


 昨日までと別の意味で気まずいというか、ちょっとこの心配がすっと自然消滅してくれないかと狙いたくなってきた。


 ……ここまで心配されてそんなわけにはいかないけど。つうか、既読付けたから早めに返信しないとマズいか。


「あ、連絡したのは1回だけ。それもお母さんが言ったからだから。あとは通知欄をちょっと見たけど、早めに返してあげた方がいいと思うよ?」


 彩は当然ながら自己弁護しながら俺に助言をしてくる。


 もちろん、勝手に連絡入れたのは何とも言えないが、状況が状況だけに怒るわけもなく、むしろ、彩がメッセージを入れてくれたからこの程度で済んでいるんじゃないかと思う。


「ええ……ああ……そうだな……」


 しかし、どうしたものか。


「ちなみに、お母さんが『美海ちゃんと聖納ちゃんがどうしてもお見舞いに来たいなら、仁志の熱が37℃台前半まで下がって、そちらの親御さんの許可をもらったなら、こっちは目を瞑るわよ』って言ってた」


 さすが母さん、よく分かってらっしゃる。


「分かった」


 ただ、2人に風邪がうつるのも困る。


 だからなるべくそうならないようにと思いつつ、俺はグループリンクにメッセージを打ち込み始める。


 彩はそれを見て、邪魔にならないようにと配慮してくれたのか、部屋からそっと出て行った。


『仁志:ごめん、心配かけて』


『みなみ:ひーくん!! 彩ちゃんからすごい熱だって聞いたけど、もう大丈夫なの!?』


 まずは美海が反応してくれた。


『仁志:今、38℃くらい。寝てれば、月曜にはちゃんと学校で会えるよ。俺、意外と回復力には自信があるから』


『みなみ:38℃!? ウチが無視なんかしたからやあああああっ! ごめえええええんっ!』


 あ、マズい。熱のことを言うんじゃなかった。


 美海が負い目を感じるって容易に想像がつくだろうに、何も考えずに正直に今の状況を連絡してしまった。


 俺は慌てて、美海のフォローをする。


『仁志:美海のせいじゃないよ。俺が勝手にやっただけ』


『みなみ:でも! でも! ウチが!』


 そんなこんなで美海とやり取りしていると、聖納が静かに怒っている犬のスタンプを使ってきた。


 聖納も美海もスタンプはよく使ってくるが、聖納が訝し気な表情のスタンプではなく怒っている雰囲気のスタンプを使ってくるのはほとんどない。ちなみに、美海はよくある。


『仁志:聖納?』

『みなみ:せーちゃん?』


 さて、どう考えてもすごく怒っている。聖納が暴走気味になることはよくあるし、少しムッとして怒ることもあるけど、ものすごく怒っているところってあまりないというか、あの文化祭での一件くらいしか思い当たらない。


『津旗 聖納:お見舞いに行ってもいいですか?』


 丁寧語の静かな感じがよけいに怖い。


 何か言われるのだろうと覚悟していると「お見舞いに来たい」というメッセージが飛んでくる。母さんには目を瞑ると言われたものの、やっぱり風邪をうつす可能性もあるからお見舞いはかなり抵抗感がある。


 ここはやんわりと断ろう。


『仁志:風邪をうつすかもしれないから、気にしなくていいよ』


 聖納が再び静かに怒っている犬のスタンプを放ってくる。


 ダメだ。完全に怒っている。


『津旗 聖納:言いたいことがあります。明日、お見舞いに行けませんか? どうしても』


 これは提案じゃなく、半ば強制の許諾要請だ。


 いろいろと理由を考えたものの、聖納に勝てるイメージがつかないため、ここはド直球に母さんが言っていた許可をそのままメッセージにして打ち込むことにした。


『仁志:俺の熱が37℃前半まで下がって、聖納は親の許可がもらえるならいいけど』


『津旗 聖納:分かりました。では、下げてください』


 結構キツめ、ほぼほぼ命令のようなメッセージに俺は震えあがった。


 ってか、俺の一存で熱なんて下がるわけがないだろう?


 だから、俺の返事は……毅然とした感じで……。


『仁志:はい』


 ……俺は明日までに確実に熱を下げなければならない。絶対だ。聖納は普通に何があっても乗り込んできそうな感じさえする。


『みなみ:ウチも行く!』


 美海がそのメッセージの後に、うるうるキラキラと瞳を輝かせて懇願する猫のスタンプを使ってきた。美海は断れそうな雰囲気もあるが、断ると聖納だけ許可したみたいになるから、結局美海にも聖納と同じことを言うしかない。


『仁志:美海も親の許可がもらえるならいいけど』


『みなみ:わかった!』


 俺はそのやり取りを一通り終わらせてから再び眠る。


 その結果、夜には37℃前半にまで下げたため、晴れて俺の条件をクリアし、美海と聖納にリンクで伝える。


 もちろん、2人ともどう説得したのかは不明だが、明日朝10時に来ることになった。


 で、日曜の朝10時。


 玄関のチャイムが鳴り、その後、対応する母さんの声が聞こえてからしばらくして、俺の部屋をノックする音が聞こえてきた。


 ハッと気づいて、俺はマスクを急いでつける。咳はないが、唾で飛沫感染するかもしれないしな。


「どうぞ。勝手に入ってもらってもいいか?」


 俺が入室を促すと、美海と聖納が入ってきた。


 美海は温かそうなモコモコした白い上着と太ももも見えるくらいに短いスキニーパンツで、上はともかく下が寒そうだ。女の子のオシャレはやはり覚悟が違うな。


 聖納は黒いセーターにチェックのミニスカートで、ちょっと寒そうだが、黒いタイツで足をきちんと覆っていた。ふと、黒いタイツは属性判定していいものかと判断に迷う。


 ちなみに、2人ともマスクをしてくれていた。とてもありがたいが、聖納の顔が全然見えないので、聖納の雰囲気を唯一教えてくれる口元さえも隠されてしまっている。


 聖納がまだ怒っていたらどうしようと、俺の緊張が解けない。


「お邪魔します」

「お邪魔します」


 美海は恐る恐る、聖納はすごく静かな感じだ。


 正直、美海も聖納を気にしているのか、美海がちらちらと聖納の方を見ている。


「美海、聖納、パジャマ姿でごめんな。椅子は用意したから、そこに座ってもらえるか?」


 さすがに病人のベッドの上に座ってもらうのもあれだと思い、母さんに事前に椅子を2つ用意してもらっていた。


「ひーくん、もう大丈夫なん?」


 美海が椅子に座りながら心配そうな声で俺に容体を聞いてくる。


 俺は両手を肩まで挙げてガッツポーズみたいな感じで元気さをアピールした。


「あぁ、もう大丈夫。平熱までグッと下がったし、明日には普通だよ。学校でも会おうな」


「……ごめんね……ウチが早く行かんかったから……」


「いや、美海は悪くないよ。俺が勝手にやって自爆しただけ」


「ううん、あのときも話をしたけど、ウチがもっとひーくんのことを信じていれば良かったんに……」


 やはり、美海には負い目があるようだが、そこはきちんと払拭しないといけない。


 俺が「悪くない」と言っても首を横に振るばかりだ。


 すると、聖納が美海の方を向いた。


「そうです、美海ちゃんは悪くありません」


 静かな言葉。一言、一言が静かな上に重くて迫力がある。


 一瞬で雰囲気が変わり、俺はその変わった雰囲気にただただ呑まれていた。


「せーちゃん」

「せ、聖納?」


 聖納は俺の方を向く。


「仁志くん」


「はい」


 俺が返事をした後、聖納はマスクを取った。これじゃマスクを付けた意味がないんじゃないか、なんて軽口を叩ける雰囲気などない。聖納がマスクを取った理由も俺に自分の感情を見せるためなんじゃないかと思う。


 よくよく見ると、ぷるぷると震えた聖納の頬に、前髪で隠れた目から出た涙がつーっと流れている。


「……本当に……バカじゃないですか?」


 その言葉を発すると同時に聖納が涙を幾筋も流しながら、俺に堪えきれなかった怒りをぶちまけてきた。

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