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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 2学期

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98/140

3-22. 11月……思い出したん?(2/2)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

松藤(まっとう):仁志の友だち。バスケ部。美海のことが昔から好きで告白する。

 美海が来た。それだけで俺はなんだかこの一週間がすべて報われたような気がした。


 それと同時に、疲れがドッと身体に流れ込んできて、なんだか気だるさを感じる。


「ごめんね、ひーくん……リンクを無視しちゃっててごめんね……」


 今にも泣きそうな声で美海が俺に話しかけてくる。だから、俺は見えているかどうか分からないけど笑った。


「いいんだよ。美海に連絡するなって言われたのに連絡したんだから」


 美海に泣いてほしくない。だから、俺は精一杯に明るくしようと思った。


「ねえ、ひーくん……隣にいってもいい?」


 俺はスマホのライトを使えばいいと気付いて、慌ててライト機能をONにする。


 美海だ。たしかに、美海だ。


「もちろん。美海用のクッションも用意してあるからな。あと、使い捨てカイロも」


 泣きそうなんだか嬉しそうなんだか分からない複雑な表情になっている美海が土管に中に入ってくる。


 俺はスマホを適当に置いて、美海用に持ってきていたクッションをリュックから取り出しす。さらに使い捨てカイロも3つほど取り出してから、ささっと開封してシャカシャカと勢いよく振って渡そうとした。


 不意に美海の手に触れて冷たさを感じ、手を冷たくしてまで来てくれたことが嬉しくなった。


「っ……ひーくんの手、熱くない? 大丈夫?」


 スマホのライトの加減ではっきりと美海の顔が見えるわけじゃないけど、きっと心配してくれているのだろう。だが、先ほどまで使い捨てカイロを手に持っていた俺の手が熱いのは当たり前だ。心配されるようなことではない。


「大丈夫、寒さ対策の使い捨てカイロでポカポカしてるだけだから」


 俺は自分の使い捨てカイロをシャカシャカと振りながら笑った。その後、少しだけ沈黙の時間が続いたが、美海がさらに近寄ってきてぴったりとくっついてきた。


 嫌われていない。美海に嫌われていなかった。それだけで今日は満足できる。


「……ひーくん、ほんとに毎日待ってたん?」


「あぁ、待ってた。美海がいつ来てくれるか分からなかったし、来たらこうやって話したかったから」


「……こんな寒い中……毎日?」


「ああ」


 最初の言い方がちょっと恩着せがましいというか、なんか美海を責めている感じになっていないかと後から肝を冷やしたが、美海はそこを気にすることもなく、どちらかというと俺の行動を気に掛けていた。


「……ごめん!」


 美海が謝ってきた。


「さっきもそうだけど、なんで謝るんだ?」


「土曜の夜に来てたのは通知で知ってたの。でも、途中までしか見えなかったし、既読を付けるのも考えちゃって……でもね、ウチ、後悔してた」


 そっか。途中までしか見えてなかったか。たしかに通知だと1行分くらいしか出てこないしな。それなら分割にすればよかったかな。


 さらに美海から引き出された「後悔」という言葉。


「後悔?」


「ひーくんを突き放して、連絡してこないでってウチが言ったんに、すぐにひーくんから謝る連絡が来ると思って、でも待ってても全然来なくて、だから、もうウチなんてどうでもいいんだとか勘違いしちゃって、ウチも悪かったんに謝れなくて拗ねちゃって、いまさら来たとか思って土曜の夜に来たリンクを無視しちゃって……」


 なんだ、すぐに連絡すればもっと早く解決できたのか。


 ……いや、無理。あんなに怒られて、連絡するなって言われて、すぐに連絡できるほど、俺は強くない。


 だけど、美海は美海で自分の行動に後悔していたのか。


「そうだったのか。ちゃんと言っておくけど、美海のことをどうでもいいなんて考えたことは一度もないぞ。それだけは言わせてもらう」


「うん」


「……あの時は本当にごめんな。責めた言い方をしちゃって。すぐに謝れたら良かったんだけど、正直俺もちょっと怒っちゃってたし、それに、すぐに連絡するのは余計に嫌われそうで怖くて」


 俺は正直に話す。疲れたのか、頭があまり回っていないのもあるけど、美海とは今真正面からぶつからないといけないと思ったからだ。


「そうやよね……ウチ、そんなこと全然考えてなくて、ひーくんがせーちゃんの方に行っちゃったとか思って落ち込んで、だから、どんどんウチからも連絡しづらくなって」


 美海は俺が自然消滅を狙っていると思っていたのだろうか。


 内心、ちょっとだけ笑ってしまう。俺は美海が自然消滅を狙っていると思っていた部分があったからだ。


「俺は逆に美海から連絡が全然来ないから、美海がもう松藤に決めたのかと思って、でも松藤にも連絡も何もなくて不安とまだ大丈夫って希望が一緒にやってきて」


 なんだかすれ違っているよな。やっぱり、ちゃんと話さないと分からないよな。


「ごめんね……ごめんね、ひーくん」


「ごめんな……本当にごめん、美海」


 俺と美海は仲直りができた。


 だからだろうか。美海が甘えたくなったときくらいにべったりとくっついてきてくれた。


「ところで、本当に思い出したん?」


「あぁ、うん。すごい恥ずかしいセリフだった。俺、王子様ってガラじゃないのにな。美海はモテるから最後の最後ってどんだけ先のことだよっていうか、一生来ないんじゃないかとかこの前思い出したときに思ったし」


 俺は過去の恥ずかしい話を真正直に言うのが恥ずかしくて、少しばかりネタのように話してみる。美海もそれは承知の上で、クスクスと笑ってくれた。


「えー、そう? いいじゃん、王子様! 運命って感じするし! ウチはそれですごく心が温かくなったし、ひーくんのことをあのときに好きになったんやよ。最後の最後にはウチのことを好きになってくれる人がいるって、すごく嬉しいし安心できるもん」


 そっか。やっぱり、美海は俺のことをあの時から認識していたのか。


「それがさ、あの時さ、俺、逆光で美海の顔がよく見えてなくて」


「ええっ!? そーなん!? じゃあ、中学の時にウチを見かけても分からんかったん!?」


「そう……全然分からなくて……」


 俺が事の真相を話すと、美海が大きな溜め息を吐いた。


「なんやあ……もっと前から声をかければよかった……あのときのことを忘れられてるのかと思って、勝手に失望してた」


「いや、まあ、ちゃんと見えてなかったから、忘れていたのもあるけど……ん? 失望? じゃあ、なんで、春に告白してくれたんだ?」


 失望されたままなんだったら、春に美海が告白する流れにならないんじゃないか?


「だって、それこそ不思議なくらいにまたフラれた時にひーくんがいて、なんか運命的な感じがして、それに話を聞いてくれて、やっぱり、ひーくんって優しいなって思ったの。話をして安心したし……でも!」


 美海の表情がコロコロ変わっているんじゃないかって思った。暗がりじゃなきゃ、美海の百面相を楽しむこともできたかもしれない。


 しかし、なんか責められ始める雰囲気だったのでそんな余裕はない。


「え? で、でも?」


「付き合ってくれるって言ったのに、あのとき断ってきたから、心の中で『はあ!?』ってなったけどね! 友だちから始めるって言うから、まだ許せたけど!」


「それは、なんか、本当にごめん」


 友だちから始めるというか、本当に友だちでって意味だったけど、それを今さら蒸し返しても意味ないのでスルーした。


 しかしまあ、最終的には美海と付き合えているけど、俺、結構、きわどいところを通っていた感あるな。


「だけど、なんかいろいろすれ違っていただけって、今日分かったからいいの」


「ありがとう。美海」


 俺と美海はひと段落ついて、ちょっとだけ沈黙になった。でも、居心地の悪さはない。ぴったりとくっついて、なんだか美海と触れている方だけとても暖かい感じがした。


「ねえ、ひーくん」


「ん?」


「ウチのこと、まだ好き?」


「当たり前だろ」


「せーちゃんのことも好き?」


「それは……うん、聖納のことも気になる。ごめん、嘘は吐けない」


 このやり取りは予想していた。だからこそ、俺は本心を告げるしかない。


 美海が好き。最初は気付かなかったけど俺の初恋でもあるし、やっぱり話していると元気が出てくるし、美海のことを守ってあげたいと思うし、とにかく、好きだ。


 聖納も気になる。俺を好きでいてくれるし、一緒にいると落ち着くというか安心するし、たまに暴走して困らせてくるのもなんだかんだでちょっと楽しいし、過去のことを聞いて守ってあげたいと思うし、正直、今はもう美海と同じくらい気になる存在だ。


「そっか……じゃあ、がんばらんと」


「がんばる?」


「ウチがひーくんの1番ってこと」


「そっか……じゃあ……」


 俺は……俺は、松藤に勝った? いや、勝ったって表現は良くないけれど、でも、松藤から美海を奪われないってことだよな?


 なんか安心して、どっと疲れが押し寄せてきて、なんかやっぱりだるい。


 あと、こんなに待たされてフラれる松藤を思うとちょっとだけ心が痛い。


「ひーくん?」


「あ、ごめん、ちょっとふらついたけど、大丈夫」


 寄りかかられていたはずの美海に少しだけ寄りかかってしまい、美海と肌が触れ合う。


 すると、美海はびっくりしたような声を発した。


「ひーくん? うわっ!? すごい熱! お母さん、車ある? 呼ばなきゃ!」


 母さん、運転はできないんだよなあ。父さんもまだ帰る時間じゃない。


 それに、美海に心配や世話を掛けるつもりはない上に、もうすっかり暗くなっている。


 だから、残念だけど、一旦ここで話を終わらせよう。


「いや、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。だけど、そう、もう遅いし、一緒に帰ろうか。またリンクで話そうか」


 俺は美海の返事も聞かずにごそごそと荷物をまとめ始める。


「う、うん……本当に大丈夫? 一緒に家まで行こうか?」


 この公園は美海の家の方が近いし、女の子を暗がりで帰らせるわけにもいかない。


「いいよ、もう暗いし、美海の帰りの方が心配になる。来てくれてありがとう」


 この後、俺は美海を家まで送り届けてから帰宅した。帰宅した途端に安堵もあってか、急に体にガタが来て、俺は玄関でぶっ倒れた。


 やべ、熱っぽいのはぼんやりと自覚していたけど、倒れるとは思わなかった。


「おかえり……って、お兄ちゃん? 何、玄関で寝てんの? ねえ……え? お兄ちゃん!? お母さん! お兄ちゃんが!」


「はあ……はあ……リンクしないと……あー……やべ、目が回る……」


 薄れゆく意識の中で、美海にリンクしなきゃとだけ思ってたけど、それから間もなくして世界が暗転した。

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