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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 2学期

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3-21. 11月……思い出したん?(1/2)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

松藤(まっとう):仁志の友だち。バスケ部。美海のことが昔から好きで告白する。

司書:図書室の受付お姉さん。仁志を「少年」呼びする。

乃美(のみ) 梓真(あずま):美海の友だち。あーちゃん。

湖松(こまつ):仁志の友だち。こまっちゃん。

 俺は妹の彩に半分唆される形で外へ出た結果、思い出して嬉しいやら彩の言う通りになって悔しいやらと思うところがあるものの、想い出の言葉をあの日のやり取りとともに鮮明に思い出した。


 それから、その夜に俺は『仁志:美海、言われていたのに連絡してごめん。だけど、会って話したいことがあるんだ。美海の都合が分からないから、明日から次の日曜まで、毎日16時半から17時半に想い出の公園で待ってる。美海とちゃんと話したい』というメッセージを送った。


 というわけで、美海にリンクを送った翌日。今日から次の日曜までの約1週間だけ、16時半から17時半の間で想い出の公園で待つことにした。


 その初日ということもあって、そわそわした俺はなんと16時から待ち始めてしまう。晴れのち曇りという一番信用ならない天気予報なので、雨ガッパも持参している。


「そもそも、未読なんだよなあ。寒い……っていうか、尻が冷たいな。明日からは敷物が必要だな」


 俺は土管の中でブランコも横目に見ながらスマホも眺めて、温かいお茶を入れてきた水筒に口をつけている。おかげで身体は温かいが、その温もりがすべて尻を通して地面へと逃げていってしまう。


 それよりも寂しいのは未だに既読のつかない自分のメッセージだ。今までなら半日もあれば既読になっていたメッセージがほぼ一日経過してもそうならない事実に心の方が寒々としてくる。


 だけど、まだ初日! 諦めてたまるか!


 そんなこんなであっという間に17時半になってしまい、俺は諦め悪くもう10分だけいてからすごすごと帰ることになった。


 2日目。月曜日。


「おや、少年。今日はえらく中途半端な時間に帰るんだな?」


「ええ。ちょっと」


「どうした? まだ美海ちゃんと話せていないのか?」


「……どうして知っているんですか?」


「おっと、禁則事項です♪」


 あぁ、美海から聞いたんだな。っていうか、そのセリフってたしか……。


「もしかして……それ、かなり古いですよ」


「何っ!? 古いだと!?」


 16時過ぎまで図書室にいた俺は少し話したがっていた様子の司書を後にして、自転車を爆速で漕いで想い出への場所へと向かう。


 今日はミニブルーシートとクッションを用意した上に使い捨てカイロも持ってきた俺に死角はない。と思ったのだが、やっぱり11月は寒い。おかげで子どもが公園で遊んでいないので不審者扱いされずにとても助かるのだが、じっとしているとどうにも身体が冷える。


 今日もまだ未読だ。さすがにブロックはされていないっぽいけど、非表示にされていたら通知もないだろうし、もしかしたら気付かれないままで終わるかもしれない。


「司書にそれとなく言ってもらうとか……いや、ダメだ。覚悟が足りてないぞ、俺!」


 そう気付いてもらえなければ、それはそれで諦めると決めたんだ。


 というか、司書にお願いした上で未読だったり既読でも来なかったりなんてした時にはダメージがデカすぎるから、立ち直るまでに時間が掛かりそうなんだよな。もちろん、そうなったら、聖納に癒してもらうしかないわけだが。


 そんな今後のことも早速ちらついてきた2日目も何事もなく17時半を迎えてしまった。


 3日目。火曜日。


「仁志くん、大丈夫ですか?」


「え?」


 昼休みに聖納と会った。聖納曰く、美海は相変わらず昼休みに教室か図書室にいるらしいので、俺は気まずくて図書室横のミニホールという名の広場で聖納と話していた。さすがに昼休みまで外にいると夕方に耐えられそうにないからだ。


「ちょっとお疲れのようですけど?」


「あー、まあ、ちょっとね」


「美海ちゃんとお話できましたか?」


「まだだけど、一応仕掛けはした」


「仕掛け?」


 聖納が不思議そうな声色で俺にオウム返しをしてきた。


 俺は小さく肯く。


「そう。それでダメならすっぱり諦めるって決めたから。聖納が美海に言うとは思わないけど、美海に俺の思ったルート以外で伝わるのは嫌だから内緒にさせてくれ」


「そうですか。内緒なら仕方ないですけど、無理はしないでくださいね?」


「あぁ、ありがとう」


「心配です……」


 そんな昼休みも終えて、放課後に図書室でしっかりと暖を取った後、16時に再び想い出の公園へと移動する。


 今日は昨日の敷物セットと使い捨てカイロに加えて、12月くらいに出そうと思っていた紺色のロングダッフルコートを持ってきた。


「さすがにこれなら温かいな。しかし……未読か……あぁ……意地を張るか……聖納に……いや、聖納にあんな宣言したんだぞ、俺。ここで聖納に頼ったら、聖納にまで愛想を尽かされるに決まっている! 寒いからネガティブになるんだ。明日はもう少し使い捨てカイロを持ってこよう」


 俺は段々と弱っていく気持ちに喝を入れて、自分でなんとか奮起させたものの、この日もやっぱり未読のままで美海が来ることもなかった。


 4日目。水曜日。さすがにちょっとずつ連日のダメージが蓄積しているようだ。


「金澤、寝不足か?」


「寝不足?」


 親友のこまっちゃんこと湖松が、俺にいきなりそう聞いてきた。


「どう見ても調子が良くなさそうだが?」


「まあ、ちょっと最近、外で待つことがあって」


「そうか。温かいものを飲んで身体を温めておけ。あと、睡眠時間は絶対に削るな」


「ありがと、こまっちゃん」


「金澤は意外と頑固だからな。一度決めたら中々引かない。だから、周りで何かしら言ってやるくらいが精一杯だ」


「そうかな?」


「自覚がないのも問題だな」


 こまっちゃんはそう言って笑っていた。


 それからあっと言う間に放課後になって、今日も今日とて待ち続ける。


「さすがにここまで未読のままだと……もう……いや、最後まで俺は諦めないぞ!」


 今日は昨夜の雨のせいか、昨日よりも寒い。ただ、明日は昨日くらいに戻るようだ。大丈夫、まだ待てる。日曜まで待つって決めたんだから。


 5日目。木曜日。


 昨日はいつもよりたっぷり寝たから、少しだけ体調が戻った。昨日、こまっちゃんが寝不足と聞いてきたのも肯ける。いつもよりもっと寝た方がいいな。


「金澤、最近、ののちゃんどうなんや?」


「知らない」


 松藤が昼休みにひょっこりと現れて、状況把握したいとばかりに俺へ訊ねてきた。


 ……待て。ってことは、松藤も美海の状況が分かってない? 美海はまだ告白のこと保留にしているのか。9月末からだからもう1か月以上か。そりゃ、いつまでも待つ気持ちがある松藤でも内心焦るよな。


 美海、何を考えているんだ?


「は? 知らないって?」


「1週間以上前に言い合いになって、ほっといてって言われて、それから話せてない。それよりもそっちはどうなんだよ?」


「金澤のことだから俺が聞きに来た時点で察してるやろ? こっちも相変わらずでののちゃんと話してない。俺かて聞き出すのは無理やから待つしかない。しかし、ののちゃんも何を考えてるんか分からんなあ。よっぽど悩んでるのか、それとも、何かを待っているのか」


 何かを待っている? 待っているのか? だとしたら、俺のメッセージじゃないだろうな。今も未読なんだから……でも。


「俺も美海が何を考えているか分からない。けど」


「けど?」


「俺は美海を信じるしかない」


 俺はそれでも、美海を信じるしかない。


「……さよか。そやったら、俺もののちゃんを信じて待つしかないやんな」


 松藤は何かを納得したように教室へと戻っていった。


 その日も俺は放課後に公園へと急ぐ。予想通り、気温が少し戻っていたから昨日よりはマシだった。とはいえ、寒いことには変わりない。


「今日もダメか……」


 俺は今日も17時半に公園を出て、足りなくなりそうな使い捨てカイロを買って帰った。


 6日目。金曜日。


 さすがに連日の待ちぼうけもあって、若干、体調の悪い感じがする。行き掛けに温かい飲み物をたくさん買うか。


「おい、金澤……って、大丈夫か?」


「乃美か。大丈夫って……俺は別に何ともないが?」


 今日は乃美が来た。順繰りに来るのはなんかあるのか?


「顔色悪く見えるけど」


「ふうん。乃美って俺の顔色を見てくれてたんだな」


「なっ……ふんっ! 減らず口を叩く元気があるなら大丈夫だな」


 乃美は心配してくれていたが、なんだかからかいたくなってそう言うといつもの乃美って感じに戻る。


「ところで、どうした? 美海になんかあったのか?」


「あぁ、みーちゃん、相変わらず元気がないんだよ。金澤、想い出の言葉を見つけたのか?」


「……見つけた」


 俺がそう言うと、乃美が俺の肩を掴んでまじまじと俺の顔を見つめてくる。ここまで乃美の顔を間近で見るのは、1学期に胸ぐらを掴まれたり無理やり教室に連れてかれたりしたとき以来か。


「見つけたのか!? だったら、みーちゃんと話せよ!」


「想い出の場所で言いたいんだ」


 もう意地だった。なんでこんな意地を通しているのか、今では全然分からないけど、でも、一種の願掛けのようなものなんだと思う。


 待っていれば、美海が気付いて、想い出の場所で想い出の言葉を言って、ハッピーエンド、俺の下へと戻ってきて、またいつもの日常になっていく。


 そんな脳内がお花畑のような感覚。


「だったら連絡しろよ!」


「連絡はしてある。美海が未読のままだけど」


「だったら、直接——」


 俺がキッと乃美を見つめると、乃美の言葉が止まった。脅かしたつもりはなかったが、ちょっとだけ眼光が鋭くなってしまったかもしれない。


「すまん、乃美。ただ、さっきも言ったけど、想い出の場所で言いたいんだ」


「っ……変なところで覚悟しやがって……」


 その日も俺は自転車で公園へと向かった。しかし、日中は天気のいい日が続いているな。日頃の行いが良いからだろう。


 その日頃の行いからか、今日ついに変化があった。


 いつも通り、敷物をセットし、使い捨てカイロをいくつも開けて、スマホの画面を見たらその変化に気付いた。


「き、既読になってる! 美海がようやく、ようやく気付いてくれた! やったあああああっ! ……って、あ、そっか……乃美に黙ってもらうように言ってなかった」


 俺はこの変化に嬉しさが込み上げてきたあと、ふと、乃美に内緒にしてもらうように言ってなかったことを思い出した。


 正直、最近調子が良くなくて、頭があまり回っていない。


 あぁ……せっかくの願掛けを……。


 そう考え始めると途端に、俺は既読になっても来てくれないんじゃないかと不安になってきた。一気に苦労が水の泡になったような感覚に苛まれて、ガタガタと身体が震えている。


 どれくらい経ったろうか。もう日の入りはとっくに始まっていて、段々と暗くなっていく空に心細さを感じる。


 このままもう……。


 そう思い始めたそのとき、近くで自転車のブレーキ音が聞こえてきた。


「ひーくん!」


「……美海……?」


 美海の声が聞こえる。本当に聞こえてるのか? 幻聴じゃないことを祈るばかりだ。


「はぁ……はぁっ……ひーくん! いた! 本当にいた! 本当に……本当に思い出したん?」


 俺の視線の先、ブランコの方の穴から覗き込む人影。


 もう暗くて見えるわけもないはずなのに、それはたしかに息を切らした美海だと確信できた。

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