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1-Ex1. 4月……どうしたの?(1/2)

オマケ回です!

テンポよく読めると思いますので、楽しんでもらえますと幸いです!

 連絡先を交換した翌日の金曜日、つまり、ゴールデンウィーク前の最終日。


 と言っても、ニュースではゴールデンウィークと嬉しそうな感じで伝えているが、学校は暦どおりだから、5月の1日や2日は平日なら平日である。休みになるわけじゃない。


 それはともかく、俺が昼休みにボーっとしていると、意外なことが起こった。


金澤(かなざわ)、ちょっと来い」


乃美(のみ)さん? どうした?」


 俺、金澤(かなざわ) 仁志(ひとし)は、能々市(ののいち) 美海(みなみ)の親友である乃美(のみ)にそう声を掛けられた。


 乃美はきれいな顔立ちをしている女の子だ。


「さん付けしなくていい。それとつべこべ言わずに、いいからちょっと面貸せ」


 ただし、少しガラ悪めのぶっきらぼうな物言いをしている上に、身長が170台と男性の平均身長くらいで女子としては大柄なことに加えて、真っ黒なショートカットで短く切り揃えているため、どこか男性的な部分や中性的な部分もある感じだ。


 それにたしか、中学の時に空手かなんだか格闘技をしていて、大会にも出ていた覚えがあるので腕っぷしも強そうだ。


 まあ、その点があっても、顔とスタイルはきっちり女性なので、男子からの人気も高めらしい、と我が友湖松(こまつ)ことこまっちゃんに聞かされていた。


「分かったから、そんな目で俺を見ないでくれ。乃美は割と怖いから」


 美人のキリっとした目で、キッとした感じで睨まれるのって怖くない?


「割と怖いって……ほぼ話したことないやつで、この私に真正面からそんなこと言ったのは金澤くらいだよ。私だって女の子だぞ?」


 乃美は俺の言葉に少し困ったような表情を浮かべてから、失言だぞと言わんばかりに次はジト目で俺を睨んでくる。


 うん、正直、ジト目でも怖いからね? もう口にはしないけど。


「すまん、女子に怖いは悪かった。本当にすまん」


「……まあいい、いいからついて来い」


 俺は失言もあって、大人しく乃美についていくことにした。


 美海が乃美を使って、俺を呼び出すような真似はしない。美海はいつだって自分から一生懸命に俺の方へ来てくれるからな。


 つまり、俺に用事があるのは目の前にいる乃美ってことになる。


 だけど、俺と乃美との接点は美海くらいしかない。美海同様に、俺と乃美には中学校時代に接点がなかったからな。


 とか思っていると、やがて、連れて来られたのはすぐそこというか、教室からほんの少し離れた廊下だった。階段と教室の動線から少し外れた踊り場のような所で、教室から見て死角になるっちゃなるかもってな所でもある。


 さらに俺は行き止まりの方へと追いやられ、唯一の出口を乃美に塞がれている状態であり、答えるまで通さないからなという乃美の強い信念を感じた。


 これは若干、穏やかじゃないな。


「金澤、単刀直入に聞くぞ」


「あ、あぁ」


 乃美の腹の底にまで響くような声に思わず唾を飲み込んでしまう。


「なんで、みーちゃんの告白を断ったんだよ!」


「え? みーちゃん?」


「美海ちゃんのことだよ」


「あ、美海だから、みーちゃんなのか」


 みーちゃん……猫か? と思って、思わず素でそのままオウム返しをしてしまったが、告白という言葉もついてきたことに気付いた後は、みーちゃんが美海のことだと理解した。


 みーちゃん、って、かわいいな。


 しかし、あれだけオラオラしている感じの口調なのに、友だち呼ぶときは恥ずかしげもなくちゃん付けで呼んでいる乃美もいいと思う。


 いいと思うって、別に、そういう意味じゃないからな? うん、誰に弁明しているんだ、俺。


「話を逸らすな。なんで断ったんだよ。しかも、結局、友だちからってなんだよ!」


「ま、待ってくれ。まず落ち着いてくれ」


 呑気なことを考えている場合じゃなかった。なんでか美海の告白を断ったことについて、乃美に叱られそうになっている。


 いや、なっているというか、もう叱られている気がする。


 なんでだよ、と最初は思ったけれど、そうか、友だちのことだからか。そうだよな、気になるよな。


 友情っていいよね。


「待てるか! 時間がないから、早く答えろ!」


「落ち着いてくれよ。あのな、俺も美海もお互いのことを知らないと思ったから、いきなり付き合うんじゃなくて、まずはお互いを知るためにだよ」


 模範解答だと思った。これで切り抜けられると思った。


 しかし、乃美の顔がそうではないと言っているように見えた。


「そうかもしれないけど、そんなこと、付き合ってから知ってもいいだろうが!」


 同意されたけど同意されてないな、これ。


「そ、そりゃそうだけど、まだ好きかどうか分からないんだから、そんな状態で付き合うのは不誠実だろ?」


 これも模範解答だと思った。俺としても慎重になる。


 つうか、お友だちから始めましょう、って女子の方がよく使うと思ったんだけど、俺の勘違いか? 女子なら分かってくれると思ったんだけどな。


 俺はもちろん自分も傷付きたくはないけど、俺と関わってくれる人も傷付いてほしくない。だから、美海に傷付いてほしくないし、なんだったら、今こうやって話している乃美だって、傷付いてほしくない。


 多分、無理なんだろうけど、欲張りなんだろうけど、それでも俺はそう思うから。


「友だちって言って、微妙な関係にしとくのは不誠実じゃないって言いたいのか!?」


 いや、それは、ごもっとも。


「いや、それは、ごもっとも」


「いや、ごもっとも、じゃねえ! ふざけてんのか!?」


 すみません。思ったことがそのまま口に出てしまいました。


 指摘される前から、俺もそこは気掛かりなんだよ……自分が不誠実じゃないか、って、ずっと悩んでいる。


「あ、いや、そうじゃなくて……って、乃美は俺がきちんと振った方がいいと思っているってことか?」


 俺がうっかりとそんなことを言ってしまったものだから、乃美の表情がどう見ても怒っているようにしか見えないくらいに怒っていそうだった。


「おい! 冗談でもそんなこと言うなよ! あのなあ! お前は気付いてないかもだけど、みーちゃんはな、お――」


「お? って、ど、どうした? お、おい、急に……俺に寄りかかるな……って、乃美? え? は? ええ? き、気絶している?」


 怒っていたはずの乃美が喋らなくなったと思ったら、急に俺の方へ力なく寄りかかってきたので抱き留めた。


 身長は高いけど、乃美もやっぱ女の子というか、待て、これ、倒れないように乃美の両肩を手で支えつつ若干抱き留め気味に押さえたはいいけど、これじゃ動けない。それと、変に動かしたら、バランス崩れて、それを支えるために、む……げふん、男子がみだりに触ってはいけないところ触ってしまう気がする。


 結論……助けて。


 誰か、助けて。


 こまっちゃんには絶対にネタにされそうだから知られたくない。


 つまり、この状況を誤解しないような善人希望で。ただし、善人でも美海には見られたくない。


「あれ? 仁志くん? あーちゃん? どうしたの?」


 最悪だ。


 よりにもよって、美海に見られた。

ご覧くださりありがとうございました!

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