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【完結】今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 2学期

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3-Ex4. 10月……悩むくらいなら打ち明けてみたらどうだ?(2/2)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

松藤(まっとう):仁志の友だち。バスケ部。美海のことが昔から好きで告白する。

司書:図書室の受付お姉さん。仁志を「少年」呼びする。

 最終下校時刻が近付いてきている放課後。勉強していた3年生たちも徐々に帰り支度をして図書室から消えていく中、俺は司書と図書室のカウンターの内側で話し込んでいる。


 普通なら訝しがるところだが、俺もすっかり図書室の常連であり、ほかの常連の方々からはいつもの1年生くらいに思われているようだ。


 さて、そんな情景描写をしたのは理由がある。俺がまだ司書の「打ち明けたらどうだ?」という言葉をまだその真意を理解できていないというか、雑な結論すぎて納得がいっていなかったからだ。


「打ち明けたらって……美海にですか?」


「それ以外にいるか? まさか聖納ちゃんに打ち明けるのか?」


 まあ、聖納にはもう打ち明けていますが……。そんなことを言っても横道に逸れるだけなので胸の中に押し留めておいて、静かに口元を隠すかのように手を当てていく。


「いや、そうじゃないですけど。そんなこと言ったって、俺が知らないはずのことを急に言うんですか?」


「なるほど、そうだよな、美海ちゃんは知らないか。しかし、少年も知っていて悩んでいるし、何があったにせよ美海ちゃんの悩みに到達しているんだから、それを言った上で打ち明けるでもいいじゃないか」


 それって俺がどうやって美海が告白されたことを知ったのかを教えなきゃいけないってことだよな。


 あの時聞いていたって言うと、俺が隠れていたことになるし、松藤も嘘を吐いたことになるよな。かと言って、それ以外に知る方法って、松藤から堂々と宣言を受けたって話になるけど、それは松藤に確認せずに言うのもなんだか正々堂々感がないな。


 なんというか、卑怯な真似をしているようでちょっと居心地が悪くなるな、それ。


「えっと、それは別の約束というか義理立てがあって……」


「義理立て? は? まさか、横恋慕の相手にか?」


 隠しても仕方ない。それにこの時点で司書も共犯みたいなものだ。いっそのこと巻き込んでしまうか。


「ええ……まあ、そういうことです」


「少年も美海ちゃんも……若い子は何と言うべきか複雑だね……お姉さんにはますます状況が分からないよ。でも、まあいいや、じゃあ、その義理立てしている相手に聞いてみればいいじゃないか」


 まあ、そうなるよな。だけど、松藤に確認しなきゃならないのか。


 当然ながら顔を合わせづらいんだよなあ。


「そうかもしれないですけど……」


「少年……男どうしの何かがあるのかもしれないが、今一番に苦しんでいるはずの美海ちゃんの悩みに寄り添ってあげてくれよ」


「っ……」


 ぐうの音も出ないほどの正論だ。


 俺が不甲斐ないばかりに美海に俺を選ぶ自信がないのだから、それは俺が美海をなんとか少しでも寄り添ってあげなきゃいけないんじゃないか。そんな当たり前のことに、俺は正々堂々とか義理立てとかって言葉で逃げようとしていた。こんなんじゃ、美海に選んでもらえても胸を張れる気がしない。


「道は1つじゃない。仮に義理立てがあって、義理立て相手がそれを拒むなら、頭を切り替えて、美海ちゃんが何に悩んでいるのかだけでも聞いてあげてもいいじゃないか。美海ちゃんだって、少年からそう言われれば、悩んでいることを打ち明けてくれるかもしれないじゃないか」


「そうですかね」


 美海は打ち明けてくれるだろうか。


 俺を頼りにしてくれるだろうか。


 実はもう見切られているんじゃないだろうか。だって、告白されてから1か月近く経っている。未だに悩んでいるってことは、まだ返事をしていないってことで、つまり、美海が未だに決めかねているってことだろう。


 ……考えたくもないのに、ネガティブなことしか思い浮かばない。


「少年、そんな顔をするな。もちろん、少年に話せないこともあるかもしれないが、少なくとも、寄り添うことは何も悪いことじゃないだろう?」


 どうやらまた顔に出ていたらしい。


 つくづく素直な表情筋をしているようだ。


「……そうですね」


「話せば分かることも変わることもある。怯えていたら何も解決しないぞ?」


 解決しない。美海も悩んで苦しんでいる。


 俺は、自分よりも美海が苦しんでいることの方が辛い。たとえ、俺がフラれることになっても、美海が幸せになるならそれでいいのかもしれない。


 ははは……なんだか俺まで聖納じみてきている気がするな。


「分かりました。ありがとうございます。少なくとも美海が苦しんでいるのは嫌ですから、なんとかして寄り添ってみます」


 俺の言葉に、司書がようやく満足げな表情を浮かべてうんうんと首を縦に小さく振っていた。


 それから、司書は何か思いついたように手を軽くポンと叩く。


「まあ、それでもダメなら美海ちゃんを連れて図書室に来なさい」


「え、もしかして、司書さんが援護してくれるんですか?」


 ちょっと厳しいことも言ってくるけど、なんだかんだで俺と美海のことを心配して何かしようと考えてくれているんだな。


 これは司書の期待に応える意味でもがんばらないとな。


「あぁ、書庫を開けておいてあげよう」


 ……ちょっと待て。


 書庫? 普段人が出入りしないという関係者以外立ち入り禁止区域の場所だよな?


「……はい?」


「美海ちゃんに分からせればいいんだ。男友だちより少年の方がいいと」


 ……ちょっと待て、待て。


 分かってもらうじゃなくて、分からせる? 何を言っているんだ、お前は。


「……ちなみに、どうやって?」


「それはもちろん、身体に快——」


 待てえええええいっ! やっぱり最後は下ネタかあああああいっ!


「やっぱり下ネタですか! 話の落差で風邪引きそうなんですが! さっきまでのいい感じのジーンとくるシリアスで終わらせてくださいよ!」


「……風邪を引きそう? もう10月だからな、それはまずい。だが、お姉さんが少年を温めるのは倫理的に——」


「そんな話、全然していないのですけど!? そもそも人肌で温めるって、ここは雪山か何かですかね!?」


「ひーくん?」

「仁志くん?」


「……あれ? 美海と聖納? って、もうこんな時間か」


 勢いよくツッコミを入れていると、後ろから部活も終わった美海と聖納の2人がまるで不思議なものを見ているかのように俺と司書のやり取りを見つめていた。


 どうやら、美海の話も聞いていないし、今の下ネタも聞こえていないようだ。


 よかった。


「司書さんと何の話をしてたん?」

「司書さんと何の話をしていたのでしょう?」


 2人が首を軽く傾げていた。


 うん、かわいいね。美海のきょとんとした感じの表情がいいし、聖納の口元もいい。


 さあ、何もなかったことにして帰ろう。


「少年が風邪引きそうだから、誰も来ない書庫でお姉さんに温めてほしいと——」


「言ってないですよね?」


「へえ……」

「へえ……」


 本当に風邪を引きそうな温度の低い返答が2人の方から聞こえてくる。


 2人の視線も冷た……いや、若干、熱い? ちょっと違和感あるぞ、これ。


「……なんで司書さんの言葉を信じるかな?」


「ううん、ひーくんのこと信じてるんよ? 司書さんとじゃないよね?」

「いえ、仁志くんのこと信じていますよ? 司書さんじゃないですよね?」


「それはよかった。じゃあ、帰ろうか……ん? 司書さんとじゃない? じゃあ、誰と?」


「ウチやよ」

「私ですね」


 2人が綺麗にシンクロしている。


 仲が良いのはいいことだけど、なんで俺をがっちり掴んでいるのかな? なんで俺を書庫の方へと連れて、行こうと、するのかなっ!? 


 2人とも、力、強っ!


「待て、待ってくれ、割と変な方向に誤解したままじゃないか! あと、学校でそういうのはダメ絶対!」


「おぉ、抱きしめるくらいだと思ったが、少年はそれ以上のことを想像しているようだな」


 しまった、さっきの司書とのやり取りですっかり想像がそっちの方になっていた。


「っ!? ええ、想像しましたよ! しょうがないでしょ、こんな状況じゃ!」


「すまん」

「ごめん」

「すみません」


 多少キレ気味に司書に言ったからか、司書はもちろん、美海も聖納も怒られていると思ったようでしゅんとし始める。


「あ、いや、2人には怒ってないから。怖がらせて、ごめん」


 俺は慌てて2人には怒っていないことを伝えるも、中々2人とも元に戻ってくれない。聖納は表情が読みにくくて分からないけれど肩を落としてしょんぼりとしているし、美海は目をうるうるとさせて不安そうに上目づかいで見つめてくる。


 や、やめてくれ、俺をそんな目で見ないでくれ。


「2人には頭をなでなでしてあげたらいいかもね」


「なんで司書さんが言うんですかね……」


 結局、司書の言う通りにその場で美海と聖納の頭をポンポンと撫でて、2人に安心かつ満足してもらってから、俺たちは図書室を後にして帰ったのだった。

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