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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 2学期

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3-12. 10月……ほら、言ったでしょう?(2/2)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

松藤(まっとう):仁志の友だち。バスケ部。美海のことが昔から好きで告白する。

 もう下手に隠しても仕方ないか。むしろ、予知能力者じみている聖納が知っていることを聞きだした方が何か突破口になるかもしれない。


「聖納は何か知っているのか?」


「ふふっ、仁志くん、ごまかす気がなくなりましたね?」


 俺が意を決して聖納にそう訊ねてみると、いつもと同じ落ち着いた笑い声が聞こえてくる。


「まあ、もうごまかす段階じゃないからな。むしろ、聖納に聞きたいことがあるから隠さない方がいいと思ってな」


「そうですか。こそこそ話をするのに、ちょっと寄りかからせてください」


 聖納はそう言うと俺の返答を待たずに、腕組みをした状態で頭を俺の肩に沿わせるように身体を俺の方へと寄せてきた。若干、胸を押しつけられている気もするし、歩いている時には気付かなかった聖納から漂ってくる匂いが俺の鼓動を速くさせる。


 落ち着け、俺。聖納のペースに惑わされるな。


「……もう一度聞くけど、何か知っているのか?」


「うーん……正確には分かりませんけど、強いて言うなら女の勘というものでしょうか」


「女の勘?」


 聖納が至って真面目な声色で、ドラマや漫画でしか聞いたことのない「女の勘」とやらだと言う。


 聖納が嘘を吐くとは思えないけど、勘というには精度が高すぎる気もするな。


「という言葉だけで片付けては仁志くんも困ってしまいますよね。そうですね、私の見立てでは、クラスメイトの松藤くんが美海ちゃんに告白した、といったところでしょうか」


「…………」


 正直、言葉が出なかった。ピンポイントで松藤の告白が聖納の口から飛び出してくると思いもよらなかったからだ。名探偵ばりの推理でもこれから披露してくれると言われてももう驚かないな。


「安心してください。美海ちゃんに言わないですし、松藤くんとは話すことすらできませんから」


「……よく分かるな」


「中学での一件で人の視線に敏感になってしまって、おかげでなんとなく分かるんです」


「視線……松藤の? あの目で?」


 俺は別のことで驚いてしまった。


 え、あの糸目みたいな目のどこに視線を感じられるの? 聖納は名探偵というよりもやっぱり超能力者に近いんじゃないだろうか。


「……なんとなく言いたいことも分かりますけど、松藤くんも別に目を完全に閉じているわけじゃないですから……」


「まあ、そうか……いや、そうか?」


 聖納は俺の驚きに少し呆れた様子で説明をしてくれた。


 たしかに、松藤が美海のことを好きっていうのは中学生の時にバレていたわけだし、視線なのか、顔の動きなのかは分からないけど、それらしいことは分かるってことだよな。


 しかし……松藤の視線……いまだに衝撃的な言葉だ。


「話を進めちゃいますよ? それで、仁志くんがまだ悩んでいるということは、美海ちゃんが答えを返していないという感じなのでしょうね。1学期の先輩からの告白の時もすぐには答えていなかったですから、仁志くんの無意識に放つ悩んだ表情も鑑みるとおそらくそうなのだと推測できます」


「概ね当たりだな。聖納はすごいな」


 概ねというか、ズバリそのもの大正解なんだけど。


 聖納に見透かされている感じがするのって、こういう勘の良さや少ない情報から推察ができるところからくるんだろうな。


 で、聖納は俺の「すごいな」という言葉を聞いて、口の端が上がってきてニマニマニマと嬉しそうに笑みを浮かべた。聖納のこういうところは分かりやすくて本当にかわいいところだよな。


「そして、先輩の時と違って、松藤くんは美海ちゃんと旧知の仲、幼馴染といった感じでしょうし、すぐに答えない理由も変わってくるでしょう」


「もう聖納に分からないことはないだろうな」


「いえいえ、分かることしか分からないですよ? もっと言うと、仁志くんの表情がポーカーフェイスだったら辿り着かない答えですよ」


 聖納がクスクスと笑いながらそう言ってきた。


 やっぱり顔に出るらしい。


 おかしいな。俺、ポーカーフェイスと言われていた時期もあったはずなんだけどなあ。


「昔はポーカーフェイスと言われていたこともあったんだけどな。俺、ババ抜きとか意外と強かったんだけど」


「……そうだとすれば、それだけ美海ちゃんのことが、仁志くんにとって心揺さぶることなのでしょうね。やっぱり、妬けちゃいます」


 美海に心を揺さぶられている……か。


 最近、それを考えている。


 どうして、俺は美海に固執しているのだろうか。美海はたしかにかわいいし、元気いっぱいだからこっちまで元気になれて、俺みたいなやつにはもったいないくらいの彼女だ。だけど、こう言ったら怒られるだろうけど、聖納だってかわいいし、落ち着いているから一緒にいて落ち着いていられるし、依存的な部分もあるけどこんなにも俺を好きでいてくれている。


「それを言われると、聖納のことを考えていてもなるから同じだよ。美海や司書さんにバレバレだからな」


 それでも俺は聖納よりも美海に気持ちが寄っている気がしている。


 この歯がゆいというかもどかしい感じを解決すれば、この状況をも変えられるだろうか。


 逆に……これを解決できなければ……?


「……そうなら本当に嬉しいです」


 聖納は頬を赤らめて本当に嬉しそうにしてくれる。


「なあ、聖納」


「何でしょう?」


「美海は……どうすると思う?」


 自分でも聖納にこの質問をするのは驚くばかりだが、もはやこの際と思いきって聞いてみることにした。俺がうだうだと美海の気持ちを推し量るよりも確実に、女の子どうしの方が気持ちを分かっているだろうからな。


 もちろん、聖納は口を「へ」の字にして、少し困った表情をし始めて、やがて、意を決したように口を開く。


「……松藤くんの方に行ってほしい、というのは言葉のまま私の願望が入り過ぎですね。残念ですけど、まだ仁志くん寄りだと思います。美海ちゃんの中でも仁志くんを選んでいる何かしらの理由があるようです。だから、仁志くん次第なのだと思いますよ」


「何か行動した方がいいのかな」


 その問いにはさすがの聖納もぷくっと頬を膨らませて口を尖らせる。


「……その相談相手として私は不適ですよ。だって、私は1番になりたいのですから。放っておけば、時間が解決してくれるんじゃないですか、って言っちゃいますよ?」


「そうかもしれないけど……」


「もう、しょうがない人ですね。きっと美海ちゃんも揺れていますから、タイミングと行動の内容によりますよ、とだけ言っておきます」


「そうか、ありがとう」


 俺が礼を言うと、聖納は口の端が上に上がったり下に下がったりと口元を忙しく動かしている。


「もう……仁志くん、イジワルですよね。まるで恋敵の応援をしているみたいじゃないですか! ぷんぷんですよ!」


 恋敵という言葉をあえて使ったのだろう。聖納は静かにぷんすか怒っている感じだ。


「それでも答えてくれたじゃないか」


「それは……美海ちゃんはお友だちですし、前にも言ったように、私は仁志くんに誠実でありたいですし、仁志くんの力になってあげたいですから」


 聖納の矛盾する行動に、俺は聖納からの愛情を感じざるを得なかった。


 聖納にここまで好かれているのに、俺が無意識に美海を選ぼうとしている理由は本当に何なのだろうか。


 気付けないということは、おそらく、実際大したことないことなのかもしれない。でも、それが俺のことも美海のことも掴んで離さないように思える。


「ありがとう」


「ところで、話変えちゃいますけど、その四字熟語いいですよね」


「あぁ、雲外蒼天か」


 言葉の意味……なんだっけな。


「はい。雲外蒼天。困難を乗り越えれば、素晴らしい世界が待っている、ですからね。受験生のときもそうでしょうけど、今の私たちにぴったりだと思います」


「そうだな」


 その後も美術館を見たり街中で少しショッピングをしたりして夕方まで聖納と楽しくゆっくりとした時間を過ごした。


 困難を乗り越えれば……か……。

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