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【完結】今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 夏休み

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2-22. 6週目……楽しもうね!(2/2)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

司書:図書室の受付お姉さん。仁志を「少年」呼びする。

 午前中ももう終盤。


 1年のブースで美海のクラス、聖納のクラス、俺のクラスの順に楽しんでから、2年のブースを楽しむ感じで上から順番に楽しんだ俺と美海はようやく3年の出店コーナーに辿り着いて、美海の楽しみにしていた屋台で食べ物を買った。


 ……だが、美海はさっきからしょんぼりしたりムスッとしたりしていて、どっちにしても頬をそこそこに膨らませている。


 ちなみに、俺のせいじゃない。強いて言うなら、俺たちの持っている食べ物のせいだ。


「これがクレープ? おかずクレープでもないもん……なんでこんなに分厚いん? これじゃ……ただの折りたたんだお好み焼きやん……どうして……」


 美海がうな垂れるように顔を俯かせて、ぼそぼそと呪詛のような言葉を呟いている。


「まあ、おこのみクレープって書いてあったしな」


 そう、食べ物の正体は美海が楽しみにしていたクレープとだいぶ違うおこのみクレープと呼ばれるもので、簡単に言えば、お好み焼きを半分に折りたたんでその間におかずクレープで使われそうなトッピングが挟まれている代物だった。


 何が一番問題って、美海の言うように、生地が分厚すぎるんだよな。なんで普通にキャベツとか入れてお好み焼きにしているんだろうか。まだそれがなければ、クレープとまで言わずともトルティーヤくらいには薄くできただろうに。


 というわけで、美海はズーンと沈んだりプンスカしてむくれたりと表情をコロコロと変えている。それを見る分には俺も楽しいんだが、いつ俺に怒りの矛先が来るか分からないので早めに美海の機嫌を直しておきたい。


「いろいろトッピングできる意味でおこのみやと思ったもん……メニューに甘いトッピングないし、そもそもなんで生地にキャベツとか長芋とか入れてるん?」


 うん、俺もそれはそう思う。


 それだけでお好み焼きのイメージが強くなりすぎる。というか、甘いものと合わなくなって、おかずクレープしか選択肢なくなっている感がある。


「まあ、そうとも取れるよな。衛生面で生クリームが使えなかったって言っていたからしょうがないんじゃないか?」


「うーっ……ひーくんとトッピング違いであーんってしたかった! ひーくんはしたくないの?」


 うん、まずい。怒りの矛先が俺の方へ向きそうになっている。


 しかし、怒っている理由がかわいいな。


「えっと、俺のハムチーズ食べる? 美海のツナマヨもらってもいい?」


 不幸中の幸いにして、俺と美海の選んだトッピングは違うので、あーんのしあいっこはできるし、なんならおかずクレープのド鉄板のハムチーズとツナマヨなら楽しめること請け合いだ。


「……いいけど! いいんやけど! なんか違うん!」


 うーん、美海の口がすっかり甘いものになっているようだ。


 これは根本的に味で勝負は難しいな。


「まあ、俺も美海と同じようにちょっと違うって思っているんだけど、でも、俺は美海とこうやって並んで食べられて嬉しいけどな。今度、デートでちゃんとしたクレープを食べに行こうよ」


 美海と同じ気持ちだと言いつつ、美海と一緒にいることが大事で嬉しいと説きつつ、最後に代替案を提案する。


 俺のこの提案が功を奏したようで、美海の顔が太陽をいっぱいに受けたヒマワリのようにパっと華やかな感じに変わっていく。


「デート……うん! あーんしあいっこしよ?」


 割と近くに人がいるから正直恥ずかしいけど、男に二言はない。


 俺がまず美海の前に自分のおこのみクレープを差し出してみると、美海は長い髪を手で押さえながらパクっと俺のおこのみクレープを小さな一口で食べる。


 普段は中々見ることのない美海の耳の辺りというか、横から見られる首筋というか、長い髪に隠されているところが露わになって、俺だけが見られるこの光景がたまらなくドキドキさせてくれた。


 あんなに膨らむ頬だけど、美海の一口が本当に小さくて、もぐもぐと動かす口がかわいくてかわいくてしかたがない。


 ふと、美海が俺の視線に気付いて、そっぽを向いて俯く。


「嬉しいんやけど、じーっと見られるのはさすがに恥ずかしい……」


「ご、ごめん」


「はい、ひーくん」


 交代とばかりに美海がこちらを向いて、自分の手にあるツナマヨおこのみクレープを俺に差し出してきた。俺は先ほどの美海の一口を確認してから、美海の持つおこのみクレープへと顔を近付ける。


 これくらいか。


 美海と同じくらいの量を口の中に入れておこのみクレープを噛みちぎった。もぐもぐとツナマヨのお好みクレープを食べていると、今度は美海が俺のことをじっと見つめてくる。


 ……たしかに恥ずかしいし、すごく食べづらいな。


「美海の気持ち、分かったわ。見すぎてごめんな」


「ううん、ウチもひーくんがじっと見ていた理由が分かったから。ずっとひーくんのこと見てたくなるもん」


 俺たちは夏の暑さ以外の何かを感じて、お互いに顔が真っ赤になってパタパタと空いている方の手で扇ぎ始めた。


 顔でも特に頬が熱さを感じている。


 やがて、食べ終わって、いよいよ美海との時間も終わりに近づいてくる。


「最後に図書館のクイズラリーしよ!」


 美海が立ち上がって、図書室の方を指差している。


 クイズラリー。今のおこのみクレープの一件ですっかり忘れかけていたけど、これが美海との文化祭デートの目玉イベントだ。


「そうだな! 時間までに終わるといいけど」


「終わらせるの! 一緒に名前を載せよう? ひーくんのひらめきが見たいな」


「任せてくれ」


 そこまで言われて俺は奮起するほかない。


 あんまりかっこいいところ見せられていないから、ここはぜひとも、残り少ない時間でサクッとクイズを解いて頭の回転力をアピールしたいところだ。


 俺と美海は腕組みをしながら、手のひらは恋人繋ぎ気味に歩いていく。


「おっと、御両人、ようやく来たね。じゃ、クイズラリーを楽しんでね」


 司書が受付カウンターでクイズラリーの用紙と鉛筆を用意してくれる。


 それを受け取って、図書室内を探索開始だ。


 いくつも並べられた本やその紹介、ランキング表などが机の上や椅子の背、本棚び側面などに置いてあったり貼ってあったりして、そこそこの準備をしていたことが窺える。


 俺と美海は特に普段置いていないものに注目しながら歩いていく。


「あ、これ……5文字あるけど、3文字目は『か』かな?」


「そうやね。ウチもそう思う」


 最初に見つけたクイズの答えを考えたら、真っ先に文字が一つ浮かび上がった。ほかもこの程度の問題ならおそらく何の問題もなくクリアまでできそうだ。


「次は……これだと……最後の文字は……」


「『い』じゃない?」


 しばらくすると、別の文字が浮かんでくる。


 3文字目が「か」、5文字目が「い」なのか……ん? これってもしかして……?


「だな。ってことは、『ぶんかさい』だろうな」


 俺の突然のネタバレに美海がハッとする。


「あ、そうか! 気付くと結構、単純やね。でも、ひーくん、すぐに思いついてすごい!」


 美海は手放しで俺のことを称賛してくれた。


 眩しいくらいの笑顔は俺を優しく照らしてくれている気がした。


 美海と一緒にいるとポカポカと温かい気持ちになる。自己肯定感のあまり高くない俺が美海のおかげで少しは自分を良く思えるようになる。


 もちろん、振り回されることもあるけれど、それもなんか嫌じゃない。


 なんだか、美海と一緒にいると安心できる気がする。


 そんなことに俺はようやく気付いた感がある。


「まあ、最後まで気を抜かずにやっていこう」


「うん!」


 とはいえ、今はクイズに集中しよう。


 その後もクイズの内容を見つけて、答えを2人で導き出すことを繰り返した。


 文字が分かる度に嬉しくなって2人で笑った。


「結局、『ぶんかさい』だったな……さて……ん? 美海?」


 俺と美海が埋めた5文字の言葉は先ほど思った通り、やはり、「ぶんかさい」のようだ。さて、これで司書の所で答えれば完了だな。


 そう思って、動こうとすると美海が俺の手を取ってビクともしない。


 そんな美海の視線の先には普段見ない模造紙がデカデカと貼られていた。


「……これ、なんやろ?」


「えっと、なんだこれ、なんかの記録表?」


「これ、レースか何かの記録表? 1が1分5秒、2が1分35秒、3が2分15秒、4が35秒で、5が55秒?」


 目の前にあった模造紙には手足の生えたひらがなが動いている絵があって、1位から5位がハテナマークになっていた。


 しばらく見て、記録のタイムに意味はなさそうだと判断できた。とすると、もしやこれ。


「……もしかして」


 俺はレースの記録表と今までに集めた5文字を照らし合わせて、5文字の順番を変えていく。


 美海が不思議そうにして俺の持つクイズラリーの紙を凝視していた。


「なに? 『さいぶんか』? 細分化?」


「あぁ、最初の数字は読む順番じゃなくて、文字のレースのゼッケン番号ってことなんじゃないか?」


 そう。俺たちが「ぶんかさい」で読めると安心して最後の模造紙を蔑ろにしてしまう。だけど、これもまたクイズラリーの一つのギミックに違いないはずだ。


「どっちやろ」


 美海が首をかしげる。


「まあ、この普段ないレース表もクイズラリーの1つだと思うし。俺は最後に見つけた方にしたい」


「うん! じゃあ、これでいこ」


 美海が了承してくれたので答えは決まった。


 俺たちは司書の前まで歩いていく。


「おっと、御両人、答えは分かったかい? 周りに人がいないからそのまま言ってくれてもいいよ」


 俺と美海は目を合わせてお互いにゆっくりと頷き始めた。


「さいぶんか!」

「さいぶんか!」


「……ファイナル……いや、今の子は分からないか」


「?」

「?」


 司書が何かを言いかけてやめた。


 ファイナルなんだったんだろうか。


「……………………正解だ!」


 随分と溜めた後、ようやく正解という言葉が聞けた。


 俺と美海は笑顔で見合わせた。


「やったな!」

「やったあ!」


「いやあ、最後の表に気付いてくれたか。そのままだと面白くないと思って別表を作ったけど、難易度がそこそこに上がってよかった。じゃあ、2人の名前は後日掲示板に載せるけどいいかな?」


 俺と美海は頷いた。


「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 こうして俺と美海の初めての文化祭デートは楽しく過ごせた。


 それに、俺はやっぱり美海のことが好きだって分かったし、こうやって一緒に楽しんで笑い合える美海が大切な存在だって気付けた。

ご覧くださりありがとうございました!

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