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【完結】今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 夏休み

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2-20. 5週目……文化祭準備!(3/3)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

松藤(まっとう):仁志の友だち。バスケ部。美海と小学校からの知り合い。

 聖納のクラスは渡り廊下を超えた別棟もしくは別校舎と呼ぶ方にある。


 美海のクラスはカメラマン付き映えスポットという分類的に静物展示で、聖納のクラスはたしか縁日系だったな。


 それを思い出して聖納のクラスの前まで辿り着くと、廊下側の窓や扉に水風船釣りやスーパーボールすくい、輪投げの絵が描かれた厚紙が貼られていて、見るからに縁日系だって分かる雰囲気になっていた。


「こんちわ、おじゃましまーす」


 先ほどの美海のときみたいに教室の前にただただ突っ立っていても仕方ないので、ここは元気よく挨拶しながら入っていく。


 聖納のクラスは机がほとんど取っ払われていて、休憩用の椅子が少し、それ以外は子ども用のビニールプール、大量のスーパーボールや膨らませていない風船、輪投げの台とプラスチックの輪っか、それと射的代わりなのか新聞紙を丸めたボールや数字の書いてある立札みたいなものがあった。


 黒板には大きな文字が貼られたうちわがいくつも引っ付いていて、「おいでよ えんにちの森」って書いてある。とびださないのか、と一瞬、何かを想像しかけたがやめておいた。


「仁志くん!」


 俺に気付いた聖納が嬉しそうな声を上げてこちらに近付いてくる。


 いや、近付いてくるというか抱きついてきた。


 もちろん、周りは驚いて……ないな。みんな文化祭の準備で忙しいのかな? それとも、俺と聖納が抱きあうことなんて日常茶飯事だと思われているのか?


 別に俺は、この柔らかくも弾力のある感触を日常茶飯事だと思ってないけどな? ポロシャツ越しのこの感触、俺の理性をガリガリ削っているからな? ムラっとしてきているからな?


 中高生にこの刺激は強すぎるって。


「聖納、準備中に来てごめんな」


 さすがに平静を装うしかないので、俺は聖納を軽く抱き留めて聖納の顔を見つめる。


 この聖納の前髪の奥に、周りには見せられない傷跡がある。


 そう思うだけで、ちょっとだけ胸がキュッと縛られるような感覚になった。


「いえ、仁志くんが来てくれるなんてとても嬉しいです!」


「そう言ってもらえると安心するよ。ところで、聖納は輪投げの準備か?」


 聖納が俺に抱きつく前に見えた聖納の持っていたプラスチックの輪っかを思い出して、俺は少し顔を動かして聖納の持っている輪っかの話をし始めた。


 ちなみに、輪っかの近くには俺と聖納に潰されて若干変形している聖納の胸が強調されている。


 こういう場でだと、もはや目に毒なんだよなあ。


「はい、試しに輪投げをしてみながら距離を決めているところです」


 聖納がようやく俺から少し離れて輪っかを手に持っていた理由を話してくれる。


 黄色の輪っかは新品のように見えるので、どこかで新品の道具を仕入れたと気付く。


 ふと輪投げコーナーの方を見ると、距離が異なる長めのテープが3本くらい貼られていた。子ども用、普通用、チャレンジ用といったところだろうか。


「へえ……結構しっかりと決めているんだな」


 景品は駄菓子のようでこの縁日のメインターゲットは確実に小学生以下もしくははしゃいでいる在校生だなと思う。小学生以下だと保護者同伴が大半だろうから実際そんなに来ないんじゃないかと思うし、在校生もいろいろと回るところがあるだろうから、おそらく忙しくならない程度に設定したんじゃないかと思う。


 これはこれで賢い選択だよな。


「はい、仁志くん」


 聖納そっちのけで聖納のクラスの出し物を考えていると、聖納からすっと黄色い輪っかを手渡される。


 俺は何も考えずにひとまず受け取ってしまう。


「ん? 俺も試すのか?」


 俺が改めて黄色い輪っかを見回して聖納に問いかけると、聖納はふるふると首を小さく横に振った。


「いえ、これをこうっと」


 聖納は俺の手ごと輪っかを自分の頭の上にポンと置いた。


 まるで聖納が天使になったようにも見えるが、天使にしては輪っかが頭に密着している。


「聖納?」


「ふふふ……仁志くんにあげる景品は特別で、なんと……私なんです! パチパチパチ」


 うーん、バカップルのそれ。


 聖納を輪投げでゲットしたって意味か。


 聖納が嬉しそうにしているからいいけど、なんかさっきまで気にしていなかった周りが急に俺たちの方を見てくるから恥ずかしさが加速度的に増してきた。


「そ、そうか」


「……嬉しくないですか?」


 どうやら俺の反応を見て、聖納が少し不安になったようで恐る恐るといった感じで話しかけてくる。


 聖納をこれ以上不安にさせたくない一心で、俺は首を横に振った。


「いや、すごい嬉しいんだけど、こうなんというか周りに見られてだと、こういうのが恥ずかしくて」


 素直に、正直に、今の俺の気持ちを伝えてみた。


 すると、聖納がホッと安心した様子でわずかに口の端を上げて口元に手を当てる。


「よかった……でも、恥ずかしがる仁志くんってかわいいですね」


「からかわないでくれ」


 俺が言いきったあとに聖納が再び抱きついてきて、聖納の顔が俺の耳元まで近付いてくる。


「今度、もっと恥ずかしいことをいっぱいしましょうね」


 小声だけど、いや、小声だからこそ、俺は耳元で囁かれた言葉にドキドキしてしまった。


 もっと恥ずかしいことって、つまり、まあ、そういうことだよな。


 母さんを数時間ほど家から追い出す日が増えそうだ。


 週2は欲しい。母さん、何か習い事でも始めないかな。


「……あぁ」


 俺は心臓がうるさくて、無難な返しをするので精一杯だった。


「仁志くん、来てくれてありがとうございます。準備があるので戻りますね!」


「がんばってな」


 聖納が輪投げ準備のグループに戻る。グループは仲の良い女の子だけのようだ。


 ……仲の良い女の子か。


 聖納の話を聞いてから、周りと仲良さそうにしている聖納もどこか一線引いているんじゃないかと勘繰ってしまう。でももしそうだとしても、聖納が引き気味になるのは仕方ないだろう。だって、あの隠したくなる傷跡の原因が仲良くしていたはずの友だちなのだから。


 心の傷も相当深いと言っていたが、それも当然だろうな。


「なあ」


「おわっ! 松藤か」


 考え事をしていた俺の真横から急に声を掛けられて、俺は思わず数歩跳び退いてしまう。気付けば、聖納と同じクラスで、俺と同じ中学出身の松藤が俺の隣にいつの間にか立っていて声を掛けてきていた。


「そんな驚かんでもええやろ」


 松藤は開いているのか開いていないのか今一つ分からない細目というか糸目というかをしていて、いつもだいたいへらへらと本心を隠すような笑顔でいる。ただし、言葉は割と直球で投げかけてくれるので助かっていた。


「急に真横から声を掛けるからだろ……」


 俺は先ほどの聖納とのやり取りとは別の種類のドキドキを感じつつ松藤と会話をしている。松藤は丸めた新聞紙ボールを1つ手に持って、パシパシと軽く上に投げてはキャッチする動作を繰り返していた。


「それよりも、なあ、津旗さんとかなーり仲良い感じやけど、ののちゃんとはどうなんや」


 松藤は美海と小学校も同じで、美海のことを昔からの呼び名だろう「ののちゃん」と呼んでいた。


 松藤は俺よりも顔が整っているし、バスケ部で運動神経も抜群だし、勉強だって同じ高校に入れている以上、決して学力で俺と大きな差があるわけじゃない。それに、美海のこともおそらく友だち以上の気持ちを持っているだろう。


 正直、俺は、松藤が俺をどう思っているのだろうかって気になっていた。


「もちろん、美海とも仲が良いぞ」


「さよか。で、二股はどうにかなりそうなんか?」


 松藤は俺の二股状態を良く思っていないし、俺にそれをド直球で伝えてくる上に、それが美海によるものだと知って、美海に個人的に注意ができるくらいに美海との仲も良い。それに松藤は美海が傷付いた過去も知っている。


 俺は具体的に知らないのに。


 ……俺、もしかして、今気付いたけど、松藤に嫉妬しているのか。


「ずけずけ聞いてくるな……まあ、松藤には助けてもらったから言うけど。今、正直、困った状況なんだよ」


 松藤が美海に注意してくれたから、俺は美海の過去を知るきっかけを得て、美海が二股を容認した流れも知ることができた。だから、松藤には多少恩返しをしないといけない。


「……ふぅん。困ってんの? まあ、なんでもええけど、ののちゃんを泣かすような真似だけはすんなや?」


 そのセリフは前に胸ぐらを掴まれながら言われた。


 いつも飄々としているくせに、本当に美海のことになると熱くなるよな。


 ……本当、友だちなのか?


「分かっているさ」


「そんならええけど。ののちゃんと遊びに来てな。俺、見ての通り、球当ての係やから」


「……おう、じゃあ、またな」


 考えても仕方ない。それに美海は俺のことを好きだと言ってくれているんだ。俺は松藤じゃなくて、美海と全力で向き合っていればいいんだ。


 それは聖納に対してもそうだ。今は全力で悩んで考えて答えを出していかないと。


 俺はそう思い直せる機会が得られてよかったと思いながら自分のクラスへと戻った。

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