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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 夏休み

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2-Ex5. 4週目……どんだけ盛ってんのよ!

オマケ回です!

主人公、金澤(かなざわ) 仁志(ひとし)と、帰ってきた家族たちとの小話です。

テンポよく読めると思いますので、楽しんでもらえますと幸いです!

 土曜日の昼過ぎ。夕方には父さんや母さん、彩が帰ってくるだろう。


 俺は聖納を家まで送った後からほとんど何も手がつかなかった。昨日は朝からちょっとした掃除や洗濯をしただけで、飯も適当に済ませてしまう。今日は美海や聖納とのグループリンクを何度か交わしたくらいで、それ以外ゴロゴロとベッドの中で寝転がってああでもないこうでもないと悩んでいた。


 俺はどうしたいんだろうか。


 美海と聖納の間で揺れる心はありもしない正解を求めている。


 今までは二股をどううまく解消できるかを主に考えていたのに、誰も深く傷つけたくない優柔不断な気持ちが鎌首をもたげて俺をがんじがらめにする。


「『せっかく二人と真剣に交際をしているんだ。最初から決めつけて動くなって言っているんだよ』か」


 父さんの言葉が鮮明に思い起こされる。


 聞いた最初は俺の予想と違っていたために憤慨さえしたが、今この状況においては決めきれないことへの後押しや理由付けになるようでありがたかった。


「今思うと、父さん、俺の二股に『真剣』って言葉を使ってくれたんだな」


 いい加減にしか聞こえない二股という言葉や状況に流されず、俺のことを考えて真剣という表現を使ってくれたことにもありがたみを感じる。


 意外と親の言う言葉もバカにはならないな。


「父さんの言っていた意味とは違うが、たしかに決めつけられなくなったな……」


 さて、とはいえ、いつまでもこの状況が許されるとも思わない。


 だいたい、美海が自分から提案したのに二股で辛そうにしている。何やってんだかと思ったけれど、美海には美海なりの理由があるかもしれないと思うと怒るに怒れない。


 聖納は本当に2番目で終わる気かといえば、きっとそれはないだろう。一昨日のやり取りを考えたら、どう考えても最終的には勝ち取るみたいな雰囲気が出ている。そのためならばと聖納は俺に全力を尽くしてくれていた。


 いずれは聖納と美海が俺を巡って? 漫画のヒロインみたいに「私を巡って争いはやめて」なんて言えるわけもなく、最後は俺が自ら選ぶしかない。


 でも、なあ、決められん……あぁ……なんか……眠く……。


「仁志! 仁志! 仁志! さっさと起きなさい!」


 すっかり寝ていた俺は耳元で母さんの小さな怒声が聞こえてきて、叩き起こされるように起きた。


「うわっ!? えっ? 母さん?」


 そこには怒りを隠さない母さんが仁王立ちとばかりに俺を見下ろして立っている。


「そうよ、それ以外の誰に見えるって言うの!? まだ寝ぼけているの!?」


 最初の名前を呼んてきたときから少し声を抑えめに話しかけてくる。きっと、車の運転で疲れている父さんや移動疲れを起こしている彩がいるからだろう。もしくは、俺が怒られていることをあまり知らせたくないか、自分が怒っていることを知られたくないか。


「いや、そうじゃないけど、お帰り」


 いずれにしても、小さい声でも怒らなければならないことが起きているということか。俺は高校生になっても親から叱られることに緊張してしまう。


「お帰りじゃないわよ!」


 どうやら挨拶が不十分だから怒っているわけではないようだ。


 当たり前だろうけど。叩き起こされてまで挨拶を強要されたことないし。


 じゃあ、何よ。


「何を怒っているんだよ?」


「あんた! ゴミ捨てしなかったでしょ!」


 ……あ、やべ。聖納が来た後、外出もせずにゴミ捨てすらしていない。


「あ、うん、ごめん。忘れてた」


 とはいえ、ゴミ箱がいっぱいになってはいなかった気もするけど……。


 そんなに怒ることか? 月曜にパンパンになるからか?


「捨てるのを忘れてたのはいいのよ!」


「え?」


 いいんかい。じゃあ、何で怒っているんだ。


「自分が何をしたのか、まだ分かんないの!? そのゴミの中に大量のコンドームがそのままにしてあるのが問題なのよ! 少しは隠しなさいよ!」


「……あ」


 そう言えば、部屋のゴミ箱がゴムでいっぱいになったから、そのまま共通のゴミ箱に放り込んだんだった。


 ついでに言うと、美海とした後の水曜にゴミ捨てするときに袋が半透明だからゴムが露骨に見えて、これはマズいよなって寄せたり隠したりして見えないようにしたことを思い出す。


 つうか、母さん、普通に恥ずかしげもなくゴムをコンドームって言うのか。隠語とか使わずに直接言うんだな。大人ってすごいな。


「あ、じゃないわよ! 2人ともとそういうことをしたにしても、どんだけしてんのよ! どんだけ盛ってんのよ! 私やお父さんはいいけど、彩が見たらどうするのよ!」


 ごめん、それ、聖納とだけなんだ。


 そんな訂正が言える状況でもないので、その言葉を喉奥までで押さえておいた。


「マジでゴメン」


 ただただ謝罪。だって、100%俺が悪いし。たしかに彩に見られたら困るし。


「まったく……お父さんが決めたことだから、そういうことを家でするのはいいけど……それに避妊もしているようだからそれはいいけど……後始末くらいちゃんとしなさいよ!」


 久々にここまで怒っている母さんを見た。よほどのことなんだともう少し落ち込む。


 落ち込むと寝る前まで考えていた美海と聖納の問題も連鎖的に頭で立ち上がり始めた。


「面目ない……」


「まったく……しっかりしなさいよ」


 俺が反論もせずに謝っている状況を見て、母さんの留飲も下がってきたようで声のトーンが普通の注意モードくらいまで落ちてきた。


「ごめん……あのさ……」


 俺は止めきれなくなって、今の悩みを口に出そうとし始めた。


「聞いてはあげられるけど、答えは出せないわよ?」


「え? 何か分かるの?」


 しかし、俺の悩みは聞かれる前に出ることを封じられる。


「あのねえ……あんたが何に悩んでいるのかは分からないけれど、何かに悩んでいることくらいすぐに分かるわよ」


 口から出す前に分かるほど、そんなに分かりやすいのだろうか。


「そ、そうなんだ?」


「何年あんたの母親をやってると思っているの? さっきも言ったけど、聞くことは私でもできるわ。でもね、答えを出すのはあくまで仁志、あなたなのよ? これはお父さんに相談しても同じでしょうし、お父さんも私と同じことを言うと思うわ」


 安易に答えらしき何かを言わない。


 俺が出さなきゃいけない答えを俺が他の誰かに求めてはいけない。


 突きつけられた厳しさは優しさの一面でもあるのか。


「そうか……」


「でも、仁志なら大丈夫よ」


 母さんは小さな笑みを浮かべて、座って若干うな垂れている俺の肩をポンポンと叩いてきた。


「なんで、そう思うんだよ」


「お父さんが言ってたのよ。『仁志は至らぬことが本当に多いが、それでも大きく間違うことは少ない』ってね」


 父さんがそんなことを……まあ、一言多いけど……至らないことは確かに多いだろうけど、「本当に」って言葉いらないよね。


「一言余計な気がするが……」


「お父さんのダメ出しが一言で済んでいるならいい方よね」


「……たしかに」


 俺と母さんは笑った。


 父さんは説教が長いし、何度でも同じこと言うし、余計なことなんて一言どころか二言三言と次々に出てくるのが普通だったから。


「だから、悩み抜きなさい。あんたが悩んだ末の答えならきっと間違いはないわ」


「ありがとう」


「感謝ならお父さんに言いなさい。私はお父さんが言うからいろいろ許しているんだからね」


 母さんの父さんに対する絶大な信頼に夫婦の愛みたいなものを感じた。


「信頼がすごいな」


「当たり前でしょ。父さんは至らぬことが多いけど、大きく間違えたことを見たことないわ」


 父さんも至らないんかい! しっかり父さんの遺伝子が受け継がれているじゃないか!


 そんな話をしていると父さんが血相を変えて、今にも俺の胸ぐらを掴みにかかりそうな勢いで俺の目の前までやってくる。


「仁志! 後始末ができてねえじゃあないか! とっさにゴミで隠したんだからな!」


「あ、ごめん」


 母さんもハッとした顔で俺を見る。どうやら母さんも急いで俺に注意しに来たようで後始末を忘れていたようだ。まあ、母さんに押し付けるわけにもいかないので、俺が100%悪いわけだが。


「俺のかわいい彩があんな汚いの見たらどうすんだ!」


 汚いとか言うなよ! 汚いだろうけど! そこはオブラートに包めよ!


「それは言い過ぎだろ!」


「これでも抑えているくらいだ! 本当に至らない男だな、お前は!」


「なんだと!? 父さんだってそうだろうが!」


 言われ過ぎて腹が立ってきた俺は立ち上がって、父さんの前に立ちはだかる。


 身長は俺の方が既に上だ。しかし、体重は明らかに父さんの方が上だ。


「なんだと、やるか!? まだお前ごときに負けるつもりはないぞ!」


 父さんがファイティングポーズを取ってきた。


 殴り合いにはならないだろうが、取っ組み合いにはなるかもしれない。


「やめなさい、2人とも!」


 一触即発の雰囲気。


 母さんの一言で父さんがポーズを解く気配もない。


 その時、雰囲気を一蹴する言葉が飛んできた。


「お父さーん、アイスなーい。一緒に買いに行こうよー?」


 彩だ。俺の部屋に来る気配はなく、どちらかと言えば、玄関の方から声が聞こえてくる。出かける気満々なことが窺えるな。


 で、その一言で、父さんは身を翻して俺の部屋から脱兎のごとく消え去る。


「彩! それは大変だ! 父さんと買い物デートに行こう! 好きなアイスを買ってやるぞ!」


 そう、父さんは彩には親バカでバカ親になる。よほど高額なものや母さんから止められている洋服や小物の購入、そのほか無理なお願い以外なら大抵言うことを聞く。彩もそれは分かっていて、結構な頻度で父さんを自分本位に連れ回すことが多い。


「なんだかなあ……」


「お父さんは彩にベタ甘だから良かったわね」


「いいのか、これ」


 俺と母さんはお互いに顔を見合わせて呆れた様子で溜め息混じりに肩を竦めた。


 こうして俺の悩みは悩み抜くというアドバイスの下、すぐの解決はないことだけ決まった。

ご覧くださりありがとうございました!

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