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【完結】今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 夏休み

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2-Ex4. 3週目……留守番よろしくな!

オマケ回です!

主人公、金澤(かなざわ) 仁志(ひとし)と、父親との小話です。

テンポよく読めると思いますので、楽しんでもらえますと幸いです!

 3人デートを最終的に何とか無事に終わらせた俺は、お疲れ気味の身体を動かして風呂に入ったり飯を食ったりしてすべてを終わらせた後に自分の部屋でくつろいでいた。


 今、後は寝るだけなのだが、美海も聖納も今日のデートを楽しんでくれたようで、寝る間での間に美海と聖納のグループリンクでメッセージを送り合っている。


『みなみ:今日はいろいろあったけど、2人と遊んで楽しかった!』


『津旗 聖納:私も楽しかったです!』


『仁志:俺も』


 俺は表示名にそれぞれのデフォルトネームを使っている。それぞれ特徴があって面白い。


 美海は漢字がどうも硬いと思っているようでひらがなにしていて、女の子らしいかわいさや美海の小動物感も際立つ感じだ。その一方で、聖納はきっちり漢字でフルネームにしていて、真面目さというべきか聖納らしさが出ている感じもする。


 なお、俺なんかは分かればいいだろうってことで漢字の名前だけ。


『みなみ:前から言ってるけど、今週はもう無理で、来週はお盆で部活も休みで、ウチは火曜から金曜だとお父さんやお母さんの帰省もないんやけど、どうする? またみんなで遊べる?』


 美海から提案が来た。来週か。俺は例年ほとんど親の実家で過ごしているから、美海や聖納と遊べない可能性が高いんだよな。


 でもまあ、確認せずに無理って予定閉じるのも違う気がするから、とりあえず、確認してからってことで返しておくか。


『仁志:ちょっと親に聞いてからでもいいか?』


『みなみ:ええよー』


 美海からメッセージのあとにOKのスタンプが来た。デフォルメされた黒猫のスタンプがいかにも美海らしい。


『津旗 聖納:私は水曜から金曜ならこちらにいますね。それ以外は出かけてしまいます。3人デートもいいですけど、仁志くんとの2人きり甘々デートもしたいです!』


『みなみ:甘々っ!? せーちゃん、ひーくんのこと、めっちゃ誘惑する気でしょ!?』


『津旗 聖納:……バレちゃいましたか?』


『みなみ:バレバレだよ! もーーーーー! 今日のキスのこと、まだちょっと怒ってるんやからね!』


『津旗 聖納:それはごめんなさい。あのとき、ついしたくなって』


『みなみ:つい、やなーーーーーい!』


 そんな感じの2人のやり取りを微笑まし気に眺めていると、コンコンコンと俺の部屋の扉を叩くノックの音がした。


「仁志、ちょっといいか?」


 父さんだ。


「父さん? いいけど」


 珍しい、というか、ほぼ初めてじゃないか。父さんが俺の部屋に入ったことは俺が知る限りない。俺が部屋に引っ込むと父さんは不干渉を決め込んでいたようで、彩を使って呼びつけてくることはあっても、わざわざ俺の部屋に訪ねてくることなどなかった。


 なんかあるのか?


 父さんは入ってくるなり、初めて見た光景に顔を動かし、視線をぐるっとさせて周りを見渡していた。


 それから、部屋の状況を確認し終えた父さんがようやく口を開く。


「来週の盆だが、1人で留守番頼んでいいか?」


 タイムリーだ。ちょうど美海や聖納とその話をしていたので、思わず俺は監視でもされているのかと疑ったが、父さんも母さんもそういうタイプじゃないなと思い直して、本当の偶然ということで再び驚いた。


 1人で留守番? つうことは、俺しかこの家にいない?


 普段は専業主婦の母さんがほぼいるし、外へ遊びに行かなければ彩も家でのんびりしている。そんな家で俺が一人になることは稀だった。


 しかも丸一日というか、盆だと1週間くらいあるんじゃないか。


「え? いいけど? なんかあるのか?」


 ばあちゃんや親せきに会うのは割と好きだ。


 ばあちゃんはお小遣いくれるから……今後のデートの足しになるとか打算的な部分ももちろんある。


 それだけじゃないけど。


「いやな。帰省するにはするんだが、俺のところも母さんのところも親戚と被って、実家が手狭なようでな。ま、仁志ももう高校生だし、1人暮らしの予行演習くらいに家事を一通り自分でやってみる訓練だよ。あと、家族と帰省とか、高校生にもなってそういうノリに付き合わせなくてもいいかなって」


 父さんは入り口近くにあった勉強机の椅子に勝手に座り始めていた。留守番のことをただ一方的に告げるだけじゃなくて、俺の反応や話を聞くという感じなのだろう。もしくは、まだ言い足りていないことがあるか、だが。


「ノリって……別にばあちゃんに会うのは嫌じゃないんだけど」


 まあ、中学生のときに、ちょっとだけ面倒だなって思ったこともあるけど、中学生になって、お小遣いも増えたしな。高校生になったら、もう少し増えるんじゃないだろうか。


 いや、それだけじゃないけど。うん、それだけじゃない。


 俺の考えを知ってか知らずか、父さんは少し表情を崩しつつ話を続けるようで再び口を開く。


「ってのは建前でな。彼女いるんだし、家に呼んだくらいだ。どうせいつかヤるだろ?」


 俺は父さんのことを堅物だと思っていたが、どうも父さんは男女関係の話が好きなようだ。そういう話になると、普段と違った一面を見せてくる。


「ちょっ!? なんてこと」


「青臭い奴だな、恥ずかしがるなよ」


「親とそういう話をしたくないだけだが」


 父さんは一瞬だけ目を丸くして、それから、うんうんと一人だけ何かを理解したように首を縦に振っていた。


「ははっ! それは分かるな。で、話を戻すぞ。もしあちらさんもその気なら留守番のときにヤればいいんじゃないか」


 父さんが「あちらさん」と呼んでいるのは、おそらく美海と聖納だろう。


 しかし、親のくせになんて提案をしてくるんだ。


「本当に親か? 中高生のソレなんて親なら止めるんじゃないか?」


 俺の言葉に、父さんは大きな溜め息とともに眉根を寄せて信じられないものを見たと言わんばかりの表情を俺に向けてきた。


「お前はバカか。俺が若い時分だってヤリたかったに決まっているだろ。つうか、親や先公ごときに言われてヤらないわけないしな。てか、ヤッたに決まっているだろうが」


 バカは父さんだろうが! 高校生の息子に言う話じゃねえよ!


 ヤったに決まっているとか言うなよ!


 親が子どもに向かって、親や先公ごときとか言うなよ!


「バカは父さんだろ。そういうことバラすなよ」


 父さんは笑った。


 俺はそれを見て若干脱力した。


「そう言うな。でもな、高校生じゃ使える金もないし、ラブホなんてそんなに気軽に行けないし、ましてやこんなちょっと整っている田舎程度じゃラブホの数も少ないし入ったの見られただけで噂になるしな。じゃあ、外か、ってなるが、まあ、性癖次第だろうけど緊張で上手くヤれねえし、そもそも周りに人が来るかもしれないからヤるのもリスキーだしな。やっぱ家になるだろ?」


 なんかいろいろと説明してきたぞ。


 若かりし頃の父さんの苦労もちょっと垣間見えて、今の俺と同じような悩みがあったのだろうかとちょっとだけ興味を持てた。


「長々と語ってくれるなよ。あと、外でやらねえよ」


「……案外良かったぞ?」


 なにしれっと実績解除してんだよおおおおおっ!


 そもそも、親のそれ系の話なんか聞きたくねえって言ってんだろうがあああああっ!


「目覚めてんじゃねえよ! 良かった、じゃないんだが!?」


「ははは! だから、家を空けてやるからヤるならヤれ。ただし、避妊はしろよ? 学生時代に同級生を孕ませて学生結婚して保育園の送り迎えをしていた同級生がいたけど、まあ、学業と育児の両立で大変そうだったぞ!」


 学生結婚。大学に通いながら子供を育てるって……それ、実家が太くないと無理だろ。ってか、父さんの通っていた大学って……工学系の私立……だったよな? いや、なおのこと無理だろ。


 だけど、もし、避妊に失敗したら、美海や聖納との子どもが?


 普通に大学生をして、理系なら大学院生もして、その後になんとなく就職もして、とぼんやりと思っていた将来が崩れる音を聞く。


 特に聖納とは気を付けよう。なんか聖納は暴走しそうだし、俺も理性が死んだらその暴走に順応してしまう可能性がある。


 と、俺は考え込んでいたようで黙っていたが、父さんはそんな俺をじっと待っていた。おそらく、俺が何かを話そうと考え込んでいたと思ったに違いない。


「さっきから明け透け過ぎんか?」


 ようやく出てきた俺の言葉に、父さんは再びうんうんと首を縦に振っていた。


「だろうな。だが、知れるならなんでも知っておけ。無駄な知識はたしかに世の中多いが、知識はあくまで知識で、結果的に無駄にならん。というか、無駄にするかどうかはお前次第だ」


 説教臭い。が、嫌いじゃない。押し付けるような一方的な説教じゃない感じがする。だから、過去に取っ組み合いの喧嘩をしても、今こうやって普通に話すことができている気がする。


 ……俺はこんな親になれるだろうか。


「……そうか。分かったよ」


 父さんは伝えきったという表情で立ち上がった。


「ということで、留守番よろしくな! ちゃんと家事も覚えられるように生活するんだぞ? 掃除と洗濯を怠ったら、母さんにめちゃくちゃ怒られるぞ?」


「はいはい。重々承知だよ」


 俺は頷きながら肩を竦ませた。


「ところで、避妊のゴムだが——」


「ころころ話題を変えるな! それ以上の情報提供はいらん!」


「はっはっは!」


 前言撤回。


 こんな親にならん!


 もっと良い親になる!


「ったく、なんで彼女の話となると、普段と雰囲気変わるんだよ……理屈と説教の堅物が……」


 俺は手放していたスマホを片手に持って、再びリンクの画面を開く。


 そこには美海と聖納の会話がしばらく続いていて、カフェで話し足りなかった今日の映画の話にも入り込んでいた。ただ俺の既読がついていないことに気付き始めたようで、美海と聖納の最新のメッセージは俺宛てだった。


『みなみ:あれ? ひーくん、寝ちゃった?』


『津旗 聖納:そうかもしれませんね あ、でも今、既読がつきましたね。仁志くん、お疲れですか?』


 俺が留守番のことを言えば、確実に俺の家でお家デート再びになるだろう。


 さらには、前回できなかった……ゴムも使うような叡智なこともするんだろうな。


 避妊、子ども、学生結婚、今後の生活。


 バカ話だと最初は思ったけれど、思ったよりもヘヴィな話を父さんにされたものだ。どこか「安易にするなよ」という回りくどい注意だったのかもしれない。


 ……覚悟を決めよう。


『仁志:なあ。2人とも、よーく聞いて考えてほしいんだが……』


 俺はこうして一週間限定ではあるが、訓練という名の1人暮らし生活と、彼女を連れ込んでも問題のない場所を手に入れて、その話を美海と聖納に告げたのであった。

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