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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 夏休み

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2-Ex3. 2週目……すごかった!

オマケ回です!

主人公、金澤(かなざわ) 仁志(ひとし)と、妹の彩との小話です。

テンポよく読めると思いますので、楽しんでもらえますと幸いです!

 父さんと母さんとの家族会議の後。俺は自分の部屋に戻っていく。


 遠くから、そう、遠くから聞き覚えのある声が説教なのか非難なのかをしている気もするけど、俺のことじゃないからいいかなって放っておくことにした。


 で、部屋の前に着くと、自分の部屋が明るいことに気付く。


「なんで、彩がいるんだよ」


「んー?」


 部屋のドアを開けて、まず目に飛び込んできたのは俺のベッドの上で横たわって漫画を読んでいる彩の脚だった。彩は俺と似たような半袖半ズボンといった服装で、パタパタと足を意味もないのにバタ足で泳ぐように動かしている。


 それにしても、相当日に焼けてるよなあ。それに、水泳を始めたからか、脚もスラっとしている気がするし……って、あれ? なんで、俺、彩の身体をまじまじと見ているんだろうか。


 うん、妹の描写を事細かにし始めて、気持ち悪いな、俺。


「もう一度聞くけど、なんで彩が俺の部屋にいるんだよ」


 俺が自分への嫌悪感を振り払いながら彩に再び訊ねると、彩がようやくこちらに顔を向けて何とも思っていないような顔で見てくる。


「久々に『毀滅の八重歯』が読みたくなって」


 彩がすっと手に持っている漫画の単行本を上げてきた。彩はこの話がお気に入りのようでもう3周はしているんじゃないかと思うほどに読み込んでいる。


 しかし、普段は素っ気なく無言で借りていくだけだ。わざわざ俺を待ち伏せて了解を得るようなことなんてしない。


「だったら、いつもみたく、勝手に持っていって読めばいいだろ?」


「妹のサービスショット付きだよ?」


 彩はこれ見よがしにパタパタさせていた脚を止めて、次に腰を左右に振るように動かす。


 それが扇情的なポーズだと理解しているようだが、小学生の妹ごときで変な感情が芽生えるわけもないだろう。


「サービスショットって……小学生が何を言っているんだか……」


 そう、せめて、高校生くらいになってから……って、そうじゃなくて、そもそも妹だからな。いくらかわいくなろうと、いくら綺麗になろうと、俺にとっては対象外オブ対象外だ。


「美海ちゃんだって見た目は私と似たようなもんじゃない?」


 おおおおおいっ! 普通に失礼だろうがっ!?


「美海は高校生! 失礼すぎるだろ!」


 俺が押し殺した声で叫ぶと、彩は不思議そうに首をかしげる。


 ちなみに彩は美海がちゃん付けを許した結果、まるで同い年の子を呼ぶように美海ちゃんと呼ぶようになった。


「実年齢より若いってことはいいことじゃないの?」


 いや、絶対に違うだろ、それ。


 俺は溜め息を吐いた。


「はあ……たしかに高校生よりも小学生よりも若いっちゃ若いが、それは実年齢より若いというか……若いと幼いって違うと思うぞ……って話の論点をズラすなよ」


「バレたか。美海ちゃんのことは冗談だよ?」


 冗談で済ませていいものか悩みつつ、これ以上その話をしても時間の浪費になるので捨て置くことにした。


「冗談がきついな……で、本当は何の用だよ?」


「それもバレてたか」


 彩は今度こそ観念した様子で舌をチロッと出してうつ伏せ状態から起き上がってこちらの方に向き直った。これから柔軟運動でも始めるのかと思ったくらい、足の裏どうしを合わせるようにしてベッドに鎮座している。


 彩の顔が少しイタズラっぽい笑みでニマっと口の端を上げていた。


「普段、用事がなきゃ近寄りもしないくせに何を言っているんだか」


「えー? お兄ちゃんを取られまいとする健気な妹のアプローチをぞんざいに扱っていいのかなー?」


 彩がウィンクをしながら身体をくねらせつつ足どうしを絡ませるセクシーポーズのようなポーズを取っているものの、小学生がする形だけのポーズに色気などあるわけもなく、少しばかり滑稽なようにも見えてくる。


「用事がないなら自分の部屋に戻れ?」


 俺は相手にしないという雰囲気をありありと出してベッドの上、彩の近くに普通に座る。すると、彩はクーラーが効いているとはいえ、この暑苦しい夏場にぺったりと俺に密着してきた。


 暑い……。


「ちぇ、ノリが悪い」


「ノリが良くても困るだろ、それ」


 俺がそう呟くと彩が先ほどよりも嬉しそうな笑顔を見せた。


「そうだったら、今度からお兄ちゃんのこと、ロリコンって呼ぶ」


 それの何が嬉しいんだよ!? 勝手にロリコン扱いするんじゃねえよ!?


「そんな不名誉なことされてたまるか!」


「でも、お兄ちゃん、聖納さんも彼女さんだからロリコンじゃないか」


 たしかに聖納は全然ロリっ気がないというか、むしろ、別属性盛り盛りの女の子なので、聖納が彼女の時点でロリコンの線が消えるだろう。


 しかし、それで疑惑が晴れてもちっとも嬉しくないのだが。


「それもそれで納得しづらいっていうか、そもそも兄をそういう評価するなよ」


「あ、コンはなくて、ロリもいけるおっぱい星人?」


 不名誉が倍増した。


「悪化しとる! っていうか、そういう明け透けな言葉を使うなよ!」


 俺の反応で満足げな彩から少しだけ笑みが消えた。


「で、さ、どっちなの?」


 彩の真剣な眼差し。まあ、聞いてくる内容は下世話極まりないものだが、色恋沙汰が気になる思春期の女の子だからと思えば、聞かれること自体はそういうものだと割り切る。


「……それが聞きたかったのか」


「まあね。美海ちゃんも聖納さんも素敵だなって思う。お兄ちゃんにはもったいないくらい」


 彩の言葉は棘のある言い方だが、あながち間違っていない。


 美海も聖納も俺じゃ釣り合わないくらいに、かわいかったり色っぽかったり、男子からの人気もあったりと引く手あまたの女の子たちだ。


「俺にはもったいないってのは完全に同意だな」


「あー、でも、お兄ちゃんはすごく優しいから。2人ともそういう優しさをきちんと知ってくれる人なんだと思うよ」


 彩は、俺がそう言うと思わなかったのだろう。急に進路変更する船のように、言葉と言い方の方針を変えて、俺に妙に優しい素振りを見せてくる。


 何を今さらという感じだが、妹とはいえ女の子から見て長所を示してもらえるのは思わず嬉しくなってしまった。


 だけど、優しいか……。


 本当に俺は彩の言うように優しいのだろうか。


 先ほど母さんに言われた優柔不断という言葉が俺の脳内を再び駆け回っている。


「褒めても何も出ないぞ?」


「信用ないなあ」


「日頃の行いだな」


「ひどいなあ。で、教えてよ」


 彩は引く気がない。


 こうなってしまうと何かしら教えるまで引こうとしないし、もし俺が黙秘権を行使し続けていたら、寝ている俺の横に潜り込んでくるかもしれず、何かと面倒なことになりそうだ。


 はあ……話してやるか、さっきの家族会議でハブられてつまらなかったのもあるのだろうし。


「ったく……聖納も言っていただろ? 美海が1番、聖納が2番だよ」


 俺が答えると、彩は聞き出せて嬉しいと言わんばかりに割と最大級の笑顔で顔をほころばせていた。


「そっか。じゃあ、そんなお兄ちゃんの良い情報。聖納さん、すごかった!」


「ん? すごかったって?」


「ほほう。まだ見てないってことだね? あのプロポーション、大きいのはおっぱいだけじゃなくて、お尻もすごかった。あれが安産型って言うんだろうなってくらいに安定感のある感じだったよ!」


 俺は思わず吹きそうになる。


 安産型って俺でもそう使わない単語なんだが? ってか、小学生で尻を見て安産型って分かるのか? などと思うに至る。


 ……いや、至るなよ、俺。


「……お前、本当に小学生か?」


 彩が笑い、だけどすぐに神妙な面持ちになっていた。


「ねえ、お兄ちゃん。2番目かもしれないけど、ちゃんと聖納さんの話を聞いてあげてね?」


「……急にどうした?」


「多分、お兄ちゃんだからこそ、もしかしたら、聖納さんを選ぶかも」


 何の冗談かと思ったが、彩の顔はそう言っていなかった。彩はすぐに顔に出るから、冗談を言っているとすぐに顔が笑いで崩れる。だけど今は至って真面目な表情で俺を見ていた。


「それって、どういうことだよ」


 俺の率直な問いは彩が首を横に振ることでキャンセルされてしまう。


「ごめん。それは私の口から言うことじゃないと思う。聖納さんが秘密にしていることかもしれないから」


 聖納の秘密。


 それは前髪に隠れている何かなのか、それとも、彩が見てしまった聖納の身体に何かあるのか。


 気になりはするも、彩経由で聞く話じゃないと彩自ら断言されてしまう。ただの冗談やイジワルの焦らしならともかく、彩の本気の目を見たら何も言えなくなる。


「……気になる言い方で終わらせるなよな。でも、そう言われちゃ聞けなくなるだろうが」


「お兄ちゃんのそういうところ好きだよ」


「妹に好かれて兄冥利に尽きるってもんだ」


 彩はベッドから立ち上がって言い残すように俺への好意を臆面もなく言ってのける。


 それならと俺もそこそこの言い回しで対応する。


 どっちかと言えば、これが俺と彩の普通のやり取りだ。


 まあ、そもそも、そんなにやり取りするわけじゃないが……。


「おやすみ、お兄ちゃん」


「あぁ、おやすみ」


「あ、漫画は借りてくね」


「結局借りるのかよ!」


「えへへ」


 俺は単行本を5冊ほど持っていく彩を目で追って、彩が俺の視界に消えてなくなった後に照明をつけたままの部屋でベッドに寝転がる。


 美海も聖納も寝転んだベッドだ。2人は俺のベッドに寝転んで何を思ったのだろうか。


「……聖納の秘密……か……」


 彩が言う聖納の逆転劇の布石、聖納の秘密とやらが気になりつつも、徐々に疲れからそのまま眠りに落ちた。

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