2-7. 2週目……行こ!(3/3)
簡単な人物紹介
金澤 仁志:本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。
能々市 美海:ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。
津旗 聖納:ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。
「!?」
「!?」
俺も美海も心臓どころか身体ごと全身がビクンと跳ねる。下手なお化け屋敷よりもびっくりしている全身を何とか落ち着かせようと止まっていた呼吸を再開する。
「あれ? お兄ちゃん? 入ってもいい? え? もしかして?」
俺も美海も返事ができずに固まっていたら、しびれを切らしたのか、入室許可を取る彩の声が聞こえてくる。
タイミングが悪すぎる。
というか、もしかして、ってなんだよ!? きっと、それ、小学生が思いついていいことじゃないだろ!?
「ど、どどど、どうした!? 何か用か!?」
俺の返事を入室許可と判断した彩がガチャリという音を立ててドアを開けてくる。
その彩の身体の前にはお盆に載った紅茶のカップとポット、紅茶に合うお菓子があって、ドアを開ける瞬間だけ少し危なっかしかったが、なんとか持ち直してローテーブルの上にそっと置いた。
「よっと。え、お兄ちゃん、何ビビってるの? せっかくお兄ちゃんが買ったお菓子とお茶を忘れているから持ってきたんだけど?」
「……あぁ! ありがとう!」
彩はジロジロと俺と美海の顔を交互に見始める。
L字型に座っているし、宿題も広げているから、小学生に見せられないようなやらしい雰囲気はないはずだ。
美海の顔は真っ赤っかで何かあった感じがありありとあるけど……。
「ふーん」
だからとは思いたくないけど、彩の顔がちょっと残念そうにも見えるのはなぜだろうね。
絶対に嫌だぞ、小学生の妹に情事を見られるなんて! 教育上も良くない!
「ふーん、ってなんだよ……」
「べつにぃ? ……あぁ、そっか……2人でイチャイチャしているところにごめんね? もしかして、邪魔しちゃった?」
やはり、彩の勘は鋭い。おマセさんは勘が鋭い。だが、しているというよりこれからだったのだから若干違う。
でも、ニアピンを言い当てられてしまった俺と美海がまともに反応できるわけもなかった。
「おまっ!?」
「ふえっ!?」
特に言い訳をするわけでもなく、驚きの声を2人してあげただけで終わる。
彩はそれを見てニヤニヤニヤとするばかりだ。
分かってからかっているな、こいつめ……。
「まあまあ、それじゃ! ちなみに、お母さんと私はリビングにいるから! 私もお母さんも近付かないから、ゆっくりしていってね!」
彩は俺に向かってバッチリのウィンクを決めてからそう言い残して、そのままバタンとドアを閉めた後に盗み聞きをするわけもなく、先ほどの言葉通りリビングの方へと向かったようだ。
しかしだな。改めてそう言われて、ゆっくりできるわけがなかろう。
本人はどうやら気を利かせたつもりだろうが、意識させた時点で逆効果なんだよなあ。ってか、彩って、どこまで分かっているんだろうか。
「……なんかごめんな」
「ううん……うちも小6の頃はあんな感じだったから」
「あれ? 美海って上がいるんだっけ?」
「ううん、そうじゃなくて、ちょっとマセているっていうか、そういうことに興味があったっていうか……」
さすが美海。
小学生時代にのほほんと遊んでいた俺とは違うな。
「そうだったんだ」
「うん……」
「…………」
「…………」
再び無言になる。
もう邪魔はないはず。
今度は俺から言わないと!
「あのさ」
「あのさ」
被った。
「え? 何?」
「え? 何?」
さらに被った。
仲良しだな。
「あ、じゃあ、美海からどうぞ」
「ううん、ひーくんからお願い」
譲って、譲られた。
ってか、俺からって思ったんだから、俺から言わせてもらう方が良かったよな。
なんで、譲ったよ、俺。
「えと、じゃあ、もうちょっとくっつきたいかなって、そっちに行っていいかな?」
「うん……いいよ」
L字型に座っていた俺たちは、少し狭くなるけど俺が美海の横に座って、真横に座るような形で座り直す。
少しでも動くとお互いの肩がちょっとぶつかる。
その度にちょっと肩に温かさを感じる。
絶対に勉強する距離じゃない。いや、勉強ができるような距離じゃない。
美海はもじもじとしっ放しで居心地が悪そうにも見えるが、きっと違うと信じたい。
「なんか……いつもの体育館裏だとこれくらいな時もあるのに、家だと変にドキドキするな」
「うん……変だよね……怖いくらいドキドキする……」
2人きり。でも、体育館裏と違うのは、ほかの人の目がまったく気にならないこと。つまり、いつもよりも恥ずかしいこともできると気付いているから、よけいに恥ずかしくなっている。
もたない。会話が続かないと、俺はこのまま美海を押し倒してしまいそうだ。
理性が120%フル稼働だ。
それでも、話をしないと本能が勝つ。
「だ、だよな。それでさ、美海は?」
「ふえっ?」
急に俺が話を振ったため、美海が驚いた様子で俺のことを見てくる。
近い。
少しでも身を乗り出して顔を突き出せば、唇どうしが触れてしまえるくらいに近い。
美海の真ん丸で大きな瞳の中に、俺の情けなさそうな姿が見えそうなくらいだ。
「いや、何か言いかけたじゃん」
ドキドキする。何を言われるのか。私も隣にいてほしかった、だろうか。それとも、お菓子を食べようとか、宿題をしようか、とか至って健全な感じだろうか。
「うん……あ、うちは言いたかったわけじゃなくて……」
「ん?」
美海は何を、と思った瞬間、美海の大きな瞳が瞼の奥に消えていた。
「んっ……」
それから、美海は少し顎を突き出すように唇を俺に近付けてくる。
「あ……」
俺の口から言葉にならない変な声が漏れる。
見るからに、美海からキスをせがまれている。
それだけで俺の心臓が痛いくらいに動いていた。聞こえないはずの心音が俺の両耳に届いているかのようにドクンドクンと鳴っているのが分かる。
俺は無言で美海の唇に自分の唇を合わせにいき、触れる瞬間に目をゆっくりと閉じた。
「んぅっ……んっ……ふっ……んんっ……んぅ……」
美海の声が漏れる。
俺は声が特に出ないけど、女の子って声が出るものなのか? それとも美海だけ? キスをしながらそんなことまで考え始めてしまう。
いかん、いかん、キスに集中しないと。
ただ、そんな甘い声を出されると困る。甘い声が漏れて俺の耳に入る度に、俺の理性が今度こそ本能に倒されるのではないかと不安になってしまう。
そうなれば、美海の華奢な身体をポーンとベッドに放って押し倒してもおかしくはない。
その後にぶかぶかなシャツなら手を滑り込ませるのも簡単そうだと思ってしまう。
待て、慌てるな。まだ慌てるような時間じゃない。いや、時間というかタイミングじゃない。
美海と叡智なことをすることは決まっているとしても、変にがっついて幻滅されるのだけは嫌だ。
俺は美海の肩に優しく手を触れて、ゆっくりと身体を離すと同時に唇も離していく。
「…………」
「…………」
俺が唇を離して目を開くと、しばらくしてから美海もゆっくりと大きな瞳を俺にまた見せるように瞼を開いていく。
ただし、美海はポーっとしていて、どこか虚ろというか、心ここにあらずというか、すっかりと放心状態だった。
俺のキスで感じてくれている?
「えっと、大丈夫か?」
「ふえっ?」
美海の瞳に生気が戻ってきた。
「顔が真っ赤だぞ?」
俺は話でもしないともたないと思って、からかうように美海に言うと、からかわれていることに気付いた美海はぷくっと頬を膨らませる。
「むぅ……ひーくんもね! お顔真っ赤っかだからね!?」
だろうな。俺も顔が真っ赤だろう。
顔が熱い。
あと、あまり目立たないから、ジーンズで本当に良かった。
でも、痛い。
「なあ、美海、よかったらだけど、今日は勉強しながら……でも、ちょっとがんばって……服の上からくらいで……こう……えっと……分かるだろ?」
上手い言葉が見つからず、雰囲気だけで美海に同意を求めた。
美海も分かってくれていて、こくこくと頷いている。
「う、うん……分かる……えっと……優しくして……ね?」
「……本能に負けて美海を押し倒さないようにがんばるわ」
「ふええっ!?」
その後、俺と美海はちょこちょこくっつきながら、たまに服越しにお互いの身体を触り合うこともしたり、夏休みの課題を2人で解いたり、お菓子を2人で仲良く食べたりした。時折、美海の甘い声が大きめに漏れると2人でハッとしてしまって気付かれていないかとヒヤヒヤする。
秘密を共有するような蜜のように甘い時間はこうしてすぐに過ぎ去っていき、夕方まで無事に過ごす。帰りに送ろうとして美海に断られそうになるも、母さんの強い勧めもあって、美海の家まできちんと送ることができた。こういう時は母さんの力が偉大だと思う。
しかし、俺、親や妹がいたとはいえ、よく我慢できたな。
次は無理かもしれない。
そう思って、ふと机の引き出しの中を見てみると、買っておいたゴムの箱が出番をなくしてしょんぼりと佇んでいるように見えた。
ご覧くださりありがとうございました!




