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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 夏休み

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2-5. 2週目……行こ!(1/3)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

 美海が家に来る日の朝。


 もう10時も前くらいだとすっかり日差しが強くて暑くなってくる。俺はいつもより念入りに身だしなみを整えさせられ……いや、整えて、約束の10分前にいつもの場所近くの日陰に入り込んで自転車に乗ったまま待機していた。


 初彼女と初デートでお家デート、しかも、俺の部屋。ドキドキしないわけがない。


 まあ、夏休みの課題を一緒にすることにしているし、さすがに今日は母さんも妹も家にいるから大それたことはできないが、ちょっとくらいコソコソしながらイチャイチャしても構わんよな。


 というか、それくらい許してくれ! 俺も男なんだよ!


「ひーくん、おはよう!」


「おわあああああっ!」


 後ろから急に声を掛けられて、俺は驚いて思わず声を上げてしまった。


「えええええっ!?」


 後ろを振り返ると、そこには自転車に乗ったまま止まっている美海がいた。


 俺の大声にびっくりしてしまったようで、美海も続けて驚きの声を上げていた。


「っはあ……あ、美海、おはよう。ごめん、考え事していて全然気付かなかったからびっくりした……」


 パッとスマホを見ると9時55分、つまり、5分前だ。


 漫画の知識で、女の子って少しくらい遅れてくるものだと思っていたから、すっかり油断していたな。


「そ、そうなんや……ちょっとびっくりしちゃった……えっと、待たせちゃったかな?」


 俺は息を少し呑んで美海の方を見つめてしまう。


 美海は黒いキャップ帽、かなり大きめで袖口も広めになっている薄い青色のロングTシャツ、そこから見え隠れする黒のショートパンツ、細い足を太ももくらいまで見せて、黒色のショートブーツでボーイッシュに決めている。


「いや、全然? さっき来たばっかり……そんなことよりも……美海、かわいいな」


 かわいい。かわいいのド直球、変化球で勝負しない王道のかわいい。


 美海はもっとスカートとか、キャミソールとカーディガンとか、ガーリーっぽい格好をしてくるかと思ったけど、これはこれでかなりかわいいな。


 大きめのロンTもぶかぶか感があって、彼シャツ感も出ていて、ちょっとドキッとする。多分、俺がシャツ貸すと今と同じくらいになるからな。まあ、俺のシャツだと首元はもっと露出するかもだけど。


「はわっ!? ふぇっ!? あ、ありがと!?」


 美海が顔を夏の暑さだけではならないほどに真っ赤にして俺にお礼の言葉を向けてくる。それから顔がやはり暑いのか、両手でパタパタと団扇のようにしていた。


「え、ごめん、変なこと言った?」


 褒めて喜んでくれているならいいが、もしかして、「かわいい」の言い方が悪かったか? もう少し、爽やかな感じで……いや、俺にイケメンの爽やか感は出せないな。


「ううん、嬉しいんやけど、えっと、そんな会っていきなり褒められるなんて思わなくて」


 母さんと妹の彩に昨日から「会ったら最初にまず服装を褒めるべし」と耳にタコができるほど聞かされていたので、そんなものか、と若干訝しんでいたが、やはり、女性のことは女性がよく分かるようだ。


 助かる。美海の好感度が少し上がっている気がする。


 そう、恋人関係になったものの、幻滅されたら意味がない。


 俺のこの恋物語は始まったばかりだ。


「ほら、思った時に言わないと言いそびれてしまうしさ。ほら、お互いに、ほら、なんだ、その、私服で会うのは初めてじゃないか?」


「……そ、そうやね」


「どうした?」


 あれ? 「初めて」に引っ掛かった?


 ただ、次の瞬間、美海はハッとしたような顔をして、手と顔をぶんぶんと横に振っていた。


「ううん、なんも? そう言えば、ひーくんもオシャレに決めてきたね! スラっとした感じで素敵やよ」


「あ、ありがと……ちょっと悩んだけど、シンプルが一番かなって」


 俺は白Tシャツの上にアウターで青と白のストライプ模様の薄手の襟付きシャツを羽織っていて、青のジーンズに黒スニーカーと無難ながらも清潔感をメインにまとめてきた。


 やはり、無難が一番よ。


 ……良かった、白は白でも「完全無欠」って漢字が前面に入ったシャツにしなくて。


「やっぱり、背が高いと服もなんでも似合うし、スラっとしていてカッコいいよね」


 美海って、身長の高い男が好きなのかな。


 小学校の時のだって、ミニバスってことは、バスケだし、当時なら身長高い同級生が多かっただろうし。


 まあ、身長ならバスケやってる奴らと変わらないくらい高いしな。


 顔で選ばれたわけじゃないって分かっているけど、身長かと思うと、ちょっとだけ、凹む。


「そうか。まあ、俺は身長とか関係なく、美海ならなんでも似合うと思うけどな」


 ……やべ、言葉はともかく、言い方がちょっと皮肉っぽくなったか?


 だけど、美海は気にした様子もなく嬉しそうだ。


「ありがと!」


 ……なんか俺、嫌な奴だな。


 反省。


「じゃ、じゃあ、行くか」


「そうやね! 行こ!」


 その後、俺は最短の小道ルートではなく、大きめの道を使って少し迂回するルートを選びながらエスコートする。


 ほどよい風に気分が良くなって俺が美海に話しかけようとしたら、美海の顔がそれどころじゃない感じでいつになく強張っていることに気付いた。


 緊張しているのか、そうだよな。俺も美海の家に行くことになったら、緊張しっ放しだろうし、やっぱり、友だちと彼氏彼女じゃ違うよな。そんなことを頭に過ぎらせながら、俺は家に辿り着く。


 美海の緊張がピークに達しているのか、笑顔がどうもぎこちない。無理やり口の端を上げていて、いつもの20%増しくらい上がっている気がする。


 俺が堂々とするしかないか。


「ただいま。彼女連れてきた」


「お、おじゃ、お邪魔しましゅ! あ、えっと……お邪魔しましゅ!」


 噛んだ。思いきり噛んだ。なんなら、帽子を外し忘れていたことに気付いて、外してから改めて言い直しても噛んでいる。


 俺は笑えるわけも吹き出せるわけもなく、心を無にして、来るだろう母さんたちを迎え撃とうとする。


 やってきたのは妹の彩だ。


 しかし、なんで彩まで外着でめかしこんでいるんだ? 普段は家だとだらっとしたキャミに短パンだろ。


「あ、はじめまして! 私、お兄ちゃんの妹の彩で……す……」


 なんか彩が固まった。


「は、はじめまして! わた、わたし——」


「…………」


 彩がじっと美海を見ている。


 どうした? 何かあるのか?


「ふえっ……?」


 美海が若干挙動不審になりながら、俺と彩を交互に見ていたが、やがて、助けてと言わんばかりに俺の方を見つめ始めた。


「彩、どうした?」


 しかし、彩は俺の言葉を完全に無視して、奥へと駆けこんでいく。


 美海は顔が真っ青になっている。先ほどまでの赤らんだかわいい顔が嘘のようだ。


「……お母さん、どうしよ、お兄ちゃん、小さい子連れてきた!」


 ぶふっ!? 小さい子!?


「ええっ!? 小さい子!?」


 奥で母さんの驚く声が聞こえてくる。


 せめて、俺や美海に聞こえないくらいの小さな声で会話してくれないだろうか。


「うん、私くらい」


「ええっ!? 小学生!?」


 待て、待て、待ていっ! 美海に失礼すぎるだろ!


 彩につられて母さんまで声が大きくなっているし、扉も開きっぱなしで丸聞こえだよ!


 2人のフォローをしないとな……。


「……なんか、母さんと妹がごめんな? 美海? あれ? 美海? おーい?」


 俺が美海に話しかけると、美海はまるで石膏像にでもなったかのように完全に硬直していた。石化魔法を唱えた覚えも唱えていたところを見た覚えもないが。


 母さんと彩が来る前に、美海の石化が解けた。


「……ふえっ!? ご、ごめん、聞いてなかった! な、なに!? 妹さんがかわいくて、うち、じいーっと見られちゃって、もしかして、かわいくないとか思われたらどうしようって、頭の中ぐるぐるしちゃって」


 不幸中の幸い。先ほどの超絶失礼な2人の発言は聞こえていなかったようだ。


 だけど、それほどまでに緊張していたのか。


 フォローしないと。


「いや、大丈夫! 美海はかわいい! 俺が保証する」


「えへへ……嬉しい……けど、恥ずかしい……」


 美海の笑顔がいつもの感じに戻っていて、嬉しそうで何よりだ。


「仁志……うちの玄関で口説くって、どういう状況? はじめまして、こんにちは、仁志の母です」


 いつの間にか母さんが彩を引き連れて玄関まで来ていた。


 うん、母さんも軽めに化粧しているな。家から出なきゃ普段化粧なんてしないくせに。さすがに外着ではないようだが、真新しい部屋着だな。


「は、はじめましゅて……ふぅ……あの、うち、じゃなかった……私、ひーくんの同級生の能々市 美海です!」


 また噛んだが、深呼吸の後は持ち直した。一人称は言い直していたが。


 彼女と言わずに、同級生って言ったところもポイント高い。


 今は彼女かどうかより同級生かどうかの方が大事だと思う。


「……そうよね。美海ちゃん、同級生よね。うふふ……こんなかわいい子が来ちゃったから、私、とてもびっくりしちゃったわ。そんなに緊張しなくてもいいし、喋りやすいようにお話をしてくれる方が嬉しいわ」


 母さんの若干後ろ気味に隠れている彩が申し訳ないとばかりに、舌をチロッと出している。


 許さんけどな。さすがにさっきの発言は見過ごせないくらいに失礼すぎるからな。


「あはは……お兄ちゃんもすっごいかわいい子を彼女にしたね!」


「あぁ、だろう?」


 俺は俺が認められた感もあって、鼻高々という感じで若干自慢げにふんぞり返る。


「騙されてない?」


「えっ!?」


 彩が不躾にそんなことを言い始めるので、美海がまた固まってしまう。


 いやいや、いくら俺が非モテだからって、いくら美海がかわいいからって、その言い草はないだろう。


「彩! 美海に失礼すぎるだろ!」


 俺がちょっと怒気もこもった言葉を投げかけるも、彩は気にした様子もなく、やれやれ分かっていないなと言わんばかりに首を横に振っていた。


「いや、そうじゃなくて、能々市さんの方、お兄ちゃんに。能々市さんならもっとカッコいい人を彼氏にできそうじゃん」


 騙しているってのは俺かーい!


「ふえっ!? うちが!?」


「それはそれで、俺に失礼すぎるだろ!?」


「ふふふ……うち、騙されてないよ? ひーくん、素敵な人やもん。うち、ひーくんが彼氏で嬉しいもん」


 まさか、美海が母さんと彩にそんなことを言うと思っていなかったため、俺は顔が熱くなった。


 彩が悪戯っぽい笑みを浮かべて俺を見ている。


「だって、さ。よかったね、お兄ちゃん」


「いつものように、その人を試すような言い方を美海にしたのは釈然(しゃくぜん)としないが……まあ、そうだな……」


 仕方ない。さっきのは美海も聞いてなかったし、許すとするか。


 それから、美海に上がってもらって、午前中はリビングで母さんや彩とも一緒に4人で仲良く話して、美海のお手製弁当も仲良くみんなで食べたよ。


 うん、なんでだろうね。

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