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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 1学期

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1-21. 6月……今さら?(1/4)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

乃美(のみ) 梓真(あずま):美海の友だち。あーちゃん。

 期末テストの初日。


「うわあ……マジか……疲れた……これがほぼ1週間か……」


 期末テストは中間テストにもあった現代国語(げんこく)歴史総合(れきそう)、英語という文系科目が3つ、数学Ⅰ(すういち)数学A(すうえー)理科化学(りばけ)という理系科目が3つの基本6科目はもちろんある。


 さらに、技術家庭(ぎか)、美術、音楽、保健体育(ほたい)の実技4教科のテストがあるため、ほぼ1週間が埋め尽くされる長いイベントだ。


 合計10教科。基本的には採点に時間がかかる基本6教科を先にすべて消化してから実技4教科のテストになるので、負荷は前半に集中している。


「帰るか……」


 とりあえず、テスト週間は午前しかなく、明日のテストに備えて、昼食時間もなしに早々と放課後となる。教科担任(きょうたん)は採点業務が入ることもあり、自習スペースは3年生の分のみで、1~2年は図書室、もしくは、ゴーホーム(とっとと家に帰れ)を命じられる。


 で、結局、3年生の自習スペースもスペース削減していることもあり、図書室にも3年生がいるため、実質、1~2年は家で大人しく勉強しろ、という雰囲気になる。


 美海に会いたいなあ。美海と話したいなあ。美海の笑顔に癒されたいなあ。


 美海はまだお怒りのようで、テスト明けくらいまでには怒りをなんとか鎮めるという言質(げんち)ももらったので、自分の欲望を我慢しなければならない。


 そう、見限られてはいない。テスト勝負を今回もしているし、テスト明けには話せる状態になると思うので我慢である。


「我慢だ……我慢」


 テスト明け、告白だ。


 津旗といることで美海を不安にさせている。


 多分だけど、美海と俺の関係が「友だちからのスタート」のまま、友だち以上恋人未満的な感じだからだと思っている。


 そこに津旗がほどよく勘違いさせるような雰囲気にするからなのだが、本人の自覚もないし、怒られているのは津旗ではなく俺なので何とも言いようがない。


 だからこそ、きちんと恋人関係にして、美海を安心させたい。


 で、いいよな? 津旗と縁切りまでしなくていいよな? なんか話せる男子が俺だけってことなので、俺が突き放すと津旗が不憫に思えるし……心が痛い。


 でもまあ、そこもきちんと美海に確認を取るか……。


 俺が勝手にそう思っているだけだしな。


 そんな風に思っていたら、教室の扉がガンと大きな音を立てて開けられた。


「金澤!」


乃美(のみ)?」


 俺もクラスメートもびっくりして扉の方を見ると、そこにいたのは美海と同じクラスであり、美海の親友の1人である乃美だった。


 その乃美が血相を変えて、俺のところに飛んできたようだ。


 何事だ?


 美海に関係あるんだろうが。


「ちょっと来い!」


 乃美は俺のところまで勢いよく歩いてくると、そのまま俺の胸ぐらを(つか)んでから急いで教室の外へ出ようとする。


 その慌てて俺を連れて行こうとして余裕のなさそうな様子を察するに、何かあったのか?


 もしかして、美海のところに連れて行かれそうなのか?


 乃美がわざわざ俺を呼び出すなんて訳が分からない。


 美海なら、自分で真っ直ぐ俺のところへ来るはずだ。


「え、なんなんだよ……ちょ、ちょっと、美海は怒ってないのか?」


「それどころじゃねえよ! 金澤の目で見てみろ!」


 俺は連れて行かれた先、美海のいるであろう隣の教室にぞんざい放り込まれてコケて四つん這いの状態になる。


「あっ」

「これは……」

「今度はこっちか」

「またこいつらかあ」


 乃美に恨み節の1つでも言いたかったが、俺の登場で周りのざわめきが明らかに大きくなった雰囲気に呑まれて一言も発せなかった。


「能々市さん、僕と付き合ってくれますか?」


 俺が教室に放り込まれた直後、俺の耳に飛び込んできた言葉に俺は言葉を失い、声の主を確かめようと頭を上げる。


 ……誰だ?


 俺の知らない男子生徒だった。もちろん、全校生徒を知っているわけじゃないが、今まで見たことのなかった。


 でも、声は……なんか聞き覚えがある気もするぞ。


 美海の方を向くと、俺と美海の目が合った。


 数秒の間、見つめ合う感じになったが、美海が気まずい顔をし始めて、やがて、美海が告白している男子生徒の方へと向いた。


「……いまさらですか? 先輩」


 あ。


 ああ!


 あああああっ!


 ああああああああああああああああああああああああああああああっ!


 おぼろげながら、記憶を辿った。


 あの声、4月に、あの昼休みに、美海をフッたサッカー部所属のそんなに顔はかっこよくないって言われていた先輩じゃないか!


 初めて見た!


 俺と美海のきっかけを作ってくれた先輩じゃん!


 いや、ちょっと中性的で頼りなさげな真面目っぽくて、でも部活ではレギュラーよりはベンチって感じだけど、普通にちょっとかっこいい部類じゃね?


 俺、割と、フッた先輩が俺と同じくらいの顔面レベルなのかな、って思っていたんだけど、こまっちゃんや松藤(まっとう)たちくらいと同じか、まあ、たしかにちょい下くらいのかっこいい部類じゃないか?


 俺より上だぞ!


 待て待て、待て、俺! 顔面偏差値は今、どうでもいい!


 問題はなんで、先輩が美海に告白しているかだ。


「君から告白を受けた後、あの時はフッちゃったけど、その後も君のことを考えていたら、君のことを気になり始めちゃってさ。君のことを考えていたら、いつの間にか、好きになっていたんだよ」


 いや、これ、先輩もフラれたな。あのとき、ほかに好きな人がいるって言ってたし。


 しかも、自分で告白したんじゃなくて、多分、好きな子が誰かと一緒にいたのを見たか聞いたかをしたんだろうな。


 で、自分に自信がないままに、手近で可能性の高そうで、かつ、かわいい女の子に絞って、付き合って、自分の自尊心を持ち直そうと必死なんだろうな。


 いや、あくまで俺の憶測だけど、ね。


 ただ、わざわざ相手のクラスにまで乗り込んで告白する勇気があるってことは、きちんと玉砕したのかもしれないな。


 それでメッタメタに叩きのめされてしまって、自尊心を以下略、かもしれない。


 まあ、どっちでもいい。


 そんなことはどっちでもいい!


 俺が今一番に腹立つことは、美海が先輩に告白して玉砕したことを周りにクラスメートもいる中で平然とバラしたことだ!


 美海が傷つくだろうが!


 大勢の後輩の前で、自分は告白されてフッた男って言いたいがためにその言葉使っているんじゃないかって思うくらいに強調しやがって。


 おそらく、俺の顔は誰が見ても怒っているようにしか見えなかっただろう。


 先輩の方を見て、俺は睨みつけている。


「あの、でも、私……」


「知っているよ? そこの彼と付き合っていたんだって? でも、彼の女遊びがひどくて、喧嘩して別れたって聞いたからさ。だったら、もうフリーかな、って思って」


 なんか勝手に別れたことになってるうううううっ!


 俺、こんな顔で女遊びが激しいカス野郎扱いになってるうううううっ!?


 まあ、俺がバカやったせいで、そもそも、付き合っていませんけどねえええええっ!


 ……あれ? 俺、何も言う権利なくね?


 美海がまだ先輩のこと好きなら、俺、これ、身を引くしかないじゃん。そもそも、身を引くって言葉自体、今の状況に合っているか?


 嫌だけど……告白するつもりだったけど、美海はそもそも先輩に告白したわけじゃん。その後に俺に告白してくれたけど……元は、先輩への告白だったんじゃん。


 そんなことに気付いてしまい、俺が何も言えず、ただ美海を見つめていることしかできずにいると美海が胸に両手を当てて、俯き加減になって口を開いた。


「考えさせてください」


 断らなかった。


 いや、すぐには返事をしなかった、の方が正しいのか?


 今、ここに、俺がいたからか? それとも、周りに人がいるからか? 断りたいけど先輩を傷付けないためか、なんてのは俺の都合良すぎる妄想か?


 そもそも、先輩の行動がまったく信じられない。


 人の目があっても堂々としていると言えば聞こえはいいが、こんな公開処刑みたいな告白するなよ。


 男と別れてすぐに別の男と付き合う女、みたいなレッテルを美海に貼ろうとするなよ。


 男をとっかえひっかえできるようなモテモテな女の子?


 実際それくらいにかわいいけど、美海はそんなレッテル欲しくないんじゃないか。


 いや、分からない。美海が本当はどう思っているかなんて、俺には分からないけど。


「もちろん。だけど、そうだな。期末テストの最終日の放課後、あの場所で待っているから、そのときに返事を聞かせてほしい。午前中は待っているよ。まさか、すっぽかすなんてことしないよね?」


「…………はい」


 美海がそう返事をして、俺を見ようともせずに避けるようにして、一言も交わすことなく帰っていく。


 そんな美海の態度を見たからか、先輩は俺の方を見て、勝ったと言わんばかりに颯爽と立ち去って行く。


 その2人とは対照的に、俺は……情けないことに、先輩への怒りの表情を残したまま、乃美に再び立たせられるまで動くことさえできなかった。

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