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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 1学期

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1-Ex5. 6月……なんで?(1/2)

オマケ回です!

美海の怒り増強キャンペーン回です!

主人公、金澤仁志の葛藤多めの回です!

 俺は図らずもというか、まあ、男の悲しき性によって美海(みなみ)を怒らせてしまい、美海と一緒に勉強ができないテスト週間になっていた。


 怒られた翌日、図書室に行ったところ、美海と出会ってしまうも気付かれてすぐにそっぽを向かれてしまう。もちろん、俺から声を掛ける勇気もなくて図書室内の少し離れた場所で勉強をしていたら、美海のいる方からちらちらと視線を感じた。


「…………」

「…………」


 しかしながら、俺がそちらの方を向けるわけもないわけで、だからといって図書室から去るとなんだか当てつけのような感じもするので居心地の悪いままに勉強していた。


 そのうちにしばらくして司書がやってきて、「聞いた、聞いた。まあ、ほら、ね? しばらく美海ちゃんの面倒は私が見るからさ、少しそっとしておいてあげなよ、というわけで今日はもう帰りな?」と司書なりの助け舟を出されてそう言われてしまう始末である。


 つまり、ほとぼりが冷めるまで図書室も満足に使えない状況となり、とはいえ、美海のことが気になるので家で真剣に勉強する気にもなれず、それからの日々は渋々1人で放課後の自習スペースを利用している。


 1年生の中では「金澤と能々市がもう破局か」なんて話も出始めているが、そもそも友だちから始めているこの状況で破局なんてしようがない。


 ただ、乃美(のみ)からは「噂が流れてから、露骨に男子どもがみーちゃんに話しかけている」と聞いて、内心、気が気じゃなかった。


 さらに、乃美からは「みーちゃんが後悔しているようだから、みーちゃんの心の整理がついたら、金澤がちゃんとしてやってくれ」とも言われる。


 ちゃんとしてやってくれと言われたとき、そのときが告白して自分の想いをきちんと伝えるときだと思った。


 だから、今はテストに全力を出すしかない。


「数学どっちも意外と範囲が広いな」


 というわけで、俺は1人で勉強している。今回、どの教科も範囲が広い。そりゃそうだ。期末ってのは、中間と違って、中間の範囲も含む学期の全範囲になるからだ。


 さらに言うと、これは悪友のこまっちゃんこと湖松(こまつ)から聞いた情報になるが、例年、中間では応用問題や発展問題が1問、あっても2問と少なめに設定されるが、期末だと2~3問、下手すると4問程度あって、しかも配点が高めに設定されることもあるらしい。


 これは教師側というか、学校側が通知表の評点をばらけさせるための苦肉の策とも感じられるし、偏差値の高い大学へ進みたい生徒への力試しの側面もあると俺は思っている。


 で、そうなると、授業で出てきたものを綺麗になぞらっても及第点の60点ギリギリという話もあるし、なんなら35点という赤点を大きく下回るという目も当てられない結果もあり得るのだ。


 美海とのテストの点数勝負もあるが、そもそも、真面目に勉強しないとテストが悲惨になって、その余波で小遣いが減らされる可能性もある。


「あの、金澤くん」


「ん? お!」


 そんなこんなで問題集と格闘していたら、聞き覚えのある声で名前を呼ばれる。


 視線を問題集から声のした方へと向けると、想像していたとおりと言うべきか、強調されすぎな気もする胸部が視界を奪い、その上の方から目隠れながらも眼鏡越しの視線を感じた。


 今ふと思ったんだが、目隠れ眼鏡ってだいぶ……属性が強いな。


 漫画だと、お淑やかキャラか、大人しい感じのキャラ、引っ込み思案なキャラなんだけど。


「お?」


「お、おぉ、津旗か。あれ? 自習スペースにいるなんて珍しいな?」


 そう、津旗である。


 どう間違っても「おっぱい」と呼んではいけない。単純にセクハラである。


 津旗は俺が美海に怒られたあの日を境に、俺のことを見かけると声を掛けてくれるようになった。


 とはいえ、自習スペースで見かけたのは珍しい。この前そのことを何となしにちょっと聞いてみたら、「家に帰って勉強するようにしています。自習スペースとかですと、その、男の子たちに声を掛けられてしまうので……」と言っていた。


 ナンパに余念のない男子生徒によって、津旗の居心地が悪くなるのは良くないよな、と思う。


 ただ、それ以上に、特に女子の方で「津旗擁護派」と「津旗糾弾派」がいるという話もちらりとこまっちゃんから聞いて、何とも言えない気持ちになる。


 いや、普通に怖いよね。自分の(あずか)り知らぬところで擁護やら糾弾やらをされるのは、さ。


「えっと、金澤くんを見かけて気になっちゃって、今日は美海ちゃんとは一緒じゃないのですか?」


「あー、まあ、美海とはまあ、ちょっと今喧嘩中? みたいな?」


 俺はお茶を濁すように答える。


 俺の悲しき男の(さが)で津旗のことをちょっとやらしい目で見てしまったことが原因で美海に怒られているわけだが、あくまで俺が悪いのであって津旗が悪いわけじゃない。


 ただ、ちょっと無自覚なのは困ったなあ、という感じである。何となく察してほしいところもあるが、津旗からすれば、唯一とまでは言わなくとも話せる男子に話しかけているだけなのだから、仕方ないと俺も思う部分はある。


 俺だって、話しかけれるやつがいたら話しかけちゃうもんなあ。


 あと、俺もなんだかんだで津旗と話すの楽しんでるしなあ。


 だって、中学の時、非モテよ?


 女の子に話しかけられたら、そりゃ、気のない女の子だとしても嬉しいに決まっているだろ!


「喧嘩? 大丈夫ですか? 美海ちゃんと部活のお友だちですし、金澤くんとも、その、すごく大切な……お友だちだと思っているので、お2人が喧嘩しているのはちょっと寂しく思います」


 おぉ……類は友を呼ぶ、と言うことなのか、美海が天使なら、津旗も天使のような清い心を持っているのだと感心した。


 っていうことも考えると、乃美もちょっと粗暴なところがあるけど、天使なのかもしれない。たしかに、注意というか、なんかしら美海に対しての助言くれるしな。


 そうなると、美海は天使を引き寄せる天使の中の天使、大天使なのかもしれない。


「そうだよな。友だちどうしの喧嘩は気まずいよな。うん、大丈夫。ありがとう。それと、うん、俺も津旗のこと友だちだと思っているから、改めてよろしくな」


 俺がそう返すと、津旗は口元が嬉しそうな感じになっている。


 男が苦手ってことは、男友だちいないってことだもんな。


 俺が友だちになることで、津旗に免疫みたいなものがつくかもしれないからな。


 ……決して、やましい気持ちはございません。友だちは友だちでも、美海と津旗じゃ、意味合い違うからね。美海はこう恋人になる前提的な友だちで、津旗は男友だちと変わらない感じの友だちだから。


 って、俺は誰に言うわけでもないが、心の中で言い訳をする。


「んふっ、よかった。金澤くんは本当に優しくて素敵ですね」


「いや、そこまで言われると、照れくさいな」


 思わず照れてしまう。


 つうか、男が女の子に「優しくて素敵」と言われて喜ばないはずがない。


 あー、もしかして、これ、あれか。


 もしかして、小学生か中学生か、どっかのタイミングで男子全員にそんな感じで接したら男どもに勘違いされて面倒なことに巻き込まれた系か? それで男子に苦手意識がある感じ?


 つまり、津旗は無自覚系の極み、ある意味無敵、なのかもしれない。


 となると、あれだな。


 津旗も津旗で俺を完全に安全牌で友だちとして見てくれている感じだな、きっと。


 やはり、多少、(しゃく)に触るところもないわけではないが、まあ、それは仕方ないか。


「あの、もしよかったら、一緒に勉強しませんか? あのときみたいに」


 いろいろと考えていたら、津旗は俺の隣の机が空いているからか、すっと隣の席を指差して俺に訊ねてくる。


 うん。無自覚だな、これ、本当に。


 さて、どうしたものか。


 確実に、俺は、胸を見る! 間違いない! つまり、美海に怒られる!


 でもまあ、美海は図書室で勉強中だろうし、津旗もせっかく俺を見かけて誘ってくれているのだから、一緒に勉強くらいは普通だよなあ。


 しかし、なんだろう。中3の夏期講習のときだけでそんなに俺、津旗に好印象与えたっけか?


 それどころか、声を聞いて姿を見てもしばらく忘れていて、ようやく思い出したような薄情な奴だと思わないのだろうか?


 ふと、カバンにくっついているストラップに目がいく。これって、たしか、夏期講習のときに話題にしたやつだよなあ。相当、好きなんだな。


「俺はいいけど、津旗はいいのか?」


「はい。金澤くんと一緒なら大丈夫です」


 そうかあ、俺と一緒なら大丈夫かあ。


 まあ、そこまで頼ってくれているのだから無下にもできないなあ。


「なら、どうぞ」


 俺がそう言うと、津旗はすぐに隣の机を動かして、ぴたりと俺が座っている机に横づけしてから、椅子にすっと座った。


 肩と肩が触れ合うくらいに、津旗が、特盛の胸が、こっちに寄ってくる。


 近い。近いぞ、津旗。ちょっと離れ……いや、でも、離れてほしいなんて、傷付けそうで言えないな。


 もちろん、当たり前のように、周りで自習している生徒のどよめきが聞こえてきた。


「おいおい、勉強はいいが、あんまりイチャイチャすんなよ?」


 自習スペースの見張り番になっている先生にそうからかわれる。


「そういうのじゃないですよ」

「そういうのじゃないですよ」


 俺と津旗が一字一句違わずにしかも同時に先生に言う。


 周りの生徒が再びどよめく。


「はっはっは。仲が良いな。まあ、勉強に励んでくれればいい」


「そのつもりです」

「そのつもりです」


 再び、俺と津旗が一字一句違わずにしかも同時に先生に言う。


「はっはっは……ん? そこの生徒、何やってんだ?」


 先生が再び俺と津旗を見て笑ってから、教室の外に誰かいることに気付いて声を掛けていた。


「……なんで?」


 そこにいて、そう愕然としたような言葉を呟いたのは、じっと俺と津旗を見つめている美海だった。

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