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【完結】今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 1学期

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1-20. 6月……ふーん?(4/4)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

 美海が怒っている?


 5限目の後にちらっと教室移動していた美海を見かけたとき、笑顔で手を振ってくれていたあの天使が今、目の前では堕天使か悪魔にでも転身したのかと思うほどにとても不機嫌そうに睨みつけてきている。


 うん、でも、怒っている顔もかわいい、なんて言ったら機嫌を直してくれるだろうか。むしろ、なんで怒っているかを解明しないと、謝っても許されない感じかもしれない。


「むー」


 美海はまるで津旗を横から見るためかのように俺の方へ最短距離ではなく、ちょっと迂回気味に近付いてくる。


 ……あ、これ、もしかして、津旗と俺が話していたから?


 え、これ、もしかして、ヤキモチ的な?


 え、かわいい。ちょっとしたことで妬いちゃうのって、いつもの自信ありげな美海がいつもと違って、なんか不安があるってことだよね?


 ちょっとむすっとしているのかわいいなあ。俺の語彙力なくなるくらいに破壊力あるわ。


 って、美海の不安で喜んでちゃダメだろ、俺。


「美海、どうしたんだ?」


 美海は俺の言葉が届いていないのか完全に無視して、津旗の方を警戒している。


 そして、美海が津旗の顔……といっても、津旗の顔だと目隠れでほとんど見えないだろうけど、とにかく顔というか上半身を確認して、驚いた表情に変わっていく。


 分かるよ。迫力あるもんな。大きい胸だし。


 ん? 待てよ? 俺、もしかして、身体目当てで津旗と話しているって思われてないか?


 待て待て待て待て! それはマズい。


 俺は美海に告白するために、美海のことが好きだってはっきり示さないといけないが、この状況で言ってもなんだか言い訳がましく聞こえるんじゃないか? 俺の告白が遠のくじゃないか。


 俺がそんなことで頭の中をいっぱいにしていると、美海はようやく俺の方を見て口を開く。


「やっぱり、せーちゃんだ! 仁志くん! せーちゃんに何の用なん? せーちゃんは、男の子が苦手なんやから話しかけちゃダメだよ!」


 ……ん? せーちゃん? あれ? 知り合い?


 叱られ方から察するに……ヤキモチ的な感じではない? 別方向からの叱られ方な気がするぞ。


「美海ちゃん、その、違います。私が金澤くんに現代国語の教科書を貸して、その教科書を返してもらいに来ました。だって、今日の放課後に、美海ちゃんに画集を返す予定だったでしょう?」


「うん、そうだよね」


 あ、津旗も美海をご存知。やっぱり、どうもお知り合い。


 ……画集? 俺が画集で思いつくのって、イラストレーターさんがたまに出してくれるありがたいものだけど。たまに叡智なものがあって、とても精神衛生に良いやつ。


 でも、きっと違う。


「えっと? 画集?」


 いや、俺、なんで画集って言ったのよ? そっちよりも聞きたいことあっただろ。


「あ、金澤くんには言っていなかったですね。私と美海ちゃんは美術部で同じなんです」


 あ。同じ部活なのか。納得。で、画集は美術部だからか。


 そんなことを思っていると、津旗がカバンに入るギリギリなんじゃないかくらいの大きさのとてもとても重そうな画集を取り出した。俺には分からない中世の絵画を表紙にバーンっと載せているので、やはり俺の知っている類の画集ではないようだ。まあ、中世の宗教画って裸だったりするけど、叡智な感じはしない。


 っていうか、美海もそうだけど、津旗も顔に似合わず……いや、顔はよく見えないけど、パワーがあるんだな。いや、もしかして、俺の感覚がおかしいだけで、女の子はこれくらいのパワーを持ち合わせているものなのだろうか。


 よくよく考えると、男子が後ろの荷台に座って、女子が自転車を漕いでる姿見るよな。野球やバスケやサッカーの男子が後ろに乗ってるの面白いよな。お前、運動部なんだからお前が漕げと思うこともある。


 いや、二人乗りは違法? 違反? なんだけど、まあ、今はそんなことどうでもよくて、女子はパワーがあるって話で、決して2人乗りを推奨しているわけではありません。


 ちゃんと1人ずつ自転車に乗って、横並びにならずに、列を作って道の横幅を占有せずに帰りましょう。


 ……なんで、俺、こんなこと今考えてるの? 暇なの? 余裕なの?


「って言うか、せーちゃん、男の子と話せるの!?」


 そんなに驚くことなの!? 松藤も言っていたけど、そんなに津旗って男が苦手なの?


 そう考えると、ちょっとだけ嬉しくなるな。なんか特別って感じで。


「えっと、金澤くんとなら……話せるかな」


 津旗がそう言うと場が凍りついた。


 俺だけって意味深だよねえ。


 うん、深い意味はないはずだよ? でも、俺でも深い意味って思っちゃうよ?


 あれ? 俺、津旗とそんなに仲良いか? 自覚ないよ?


「ふーん……仁志くんなら?」


 なんで美海だけじゃなくて、クラスの連中も俺の方を見るかな。


 もちろん、一番冷たい視線を送ってくるのは美海である。


 さっきの怒りの比ではない。


 でも、待ってほしい。俺、何も悪いことしてないよな?


 あ、また藁人形が出てきたぞ? もう見慣れたぞ、藁人形。見慣れるもんじゃないんだけどな。


「それじゃ、私はこれで。またね、美海ちゃん。金澤くん、またぜひお話をしましょうね」


 なんで、俺の方を強調した?


「またね! また部活で会おうね!」


「あぁ、教科書ありがとうな」


「いえいえ、金澤くん、また困ったら声を掛けてくださいね。私、金澤くんといると安心できて、お話ができるととても楽しいですから」


 あ。さらに凍りついた。人のせいにするわけじゃないけど、津旗、もうちょっと空気を読んで、俺に温かくしてくれるともっと嬉しいぞ。


 で、さらに、津旗がこっちを見て、小さく手を振ってくれる。


 で、さらに、美海がこっちを見て、射殺さんばかりの視線を向けてくれる。


 うん、津旗のその仕草、すっごく、うん、すっごくかわいいと思うけど、さらにさらに凍りついたよ?


 わざと? わざとなの?


 その凍りついた場などお構いなしといった感じで津旗はすることを終えてさっと帰っていく。その途中で不意に男子とぶつかりそうになって、慌てふためいて逃げ去っていく。


 あぁ、本当に、男子が苦手なんだなあ。


「ねえ、仁志くん?」


 うん、この場はまだ全然収まってないんだよなあ。


 俺にとっては地球でも最も寒いと言われる南寒極点より寒気を感じるといっても過言ではない。


 いや、南寒極点なんて甘かった。空気が液体窒素と液体酸素とドライアイスになりそうなほどの死地をも思わせる場所、それが今のここだ。


 誰か助けて。


 いや、耐え凌げ、俺。


 今の俺を救えるのは俺しかいない。


 こまっちゃん。いないし。


「美海、どうしたんだ?」


 テイク2である。


 さも、何も問題がないように振る舞うしかあるまい。というか、本当に問題ないのだから、俺にはどうしようもない気がする。


「せーちゃんとはどういう関係なんかな?」


 美海はとても笑顔だが、いつもの笑顔じゃないし、声もいつものかわいらしい明るい感じではない。


 つまり、怖い。


「いや、関係も何も、中3の頃に塾の夏期講習で一緒になったくらいだけど」


「へえ……それだけなん?」


 視線が冷たく、痛い。


 俺、本当に何もないよ?


 多分、思われていることを先んじて言うなら、俺、浮気なんてしてないよ?


「それだけだよ。津旗が同じ高校だって今日知ったくらいだし」


「へえ……仁志くんがせーちゃんのことを呼び捨てにするやなんて、せーちゃんとずいぶん仲が良いんじゃない?」


 めっちゃビシバシ指摘されている。


 たしかに、美海との会話で呼び捨てにしているのは美海の親友の乃美(のみ)くらいである。それも乃美から呼び捨てでいいと言われてしているだけに過ぎない。


 自分からわざわざ女の子を呼び捨てで呼ぶなんて愚かな真似はしない。もちろん、ちゃん付けもしない。あくまで、さん付けである。


「いや、ちょっと待ってくれよ。そりゃ、呼び捨てなのは、津旗から『津旗でいい』って言われたからであって、仲が良いかは正直分からないけど、俺が教科書なくて困っていて助けてくれたんだから……まあ、悪くはないと思う」


「むー、じゃあ、せーちゃんのこと、好きとか嫌いとかはないん?」


 お、ヤキモチだ! これこそ、ヤキモチだろ? ふっ、やはり、間違いなかったな。


 かわいい……でも、美海が怖すぎて、かわいいとか、のほほんとバカみたいにずっと考えていられん。


 真面目に正直に答えよう。


「ないよ。ないない。前は夏期講習のときだけだし、今日、ほんとうにたまたま久々に会ったばかりだし、美海と同じ美術部ってのも今日知ったし、正直、津旗を好きだの嫌いだの思う前に、津旗のこと知っているって言えるほど話してないしな」


 出しきった。俺が知る津旗のすべてをここで出しきった。


 それ以上は何も分からん。


 これでダメなら、美海を持ち上げる方向で、ガツガツしていない感じもきちんと出しながら話そう。


「……分かった。仁志くんのこと信じるよ」


 勝った。いや、何に勝ったってのは分からないけど、そんな感じを覚えた。


 美海の表情が先ほどの恐ろしい形相から、いつもの朗らかな笑顔に戻る。


 うん、やっぱ、美海には笑っていてほしい。


「よかった。やっぱ、美海はいつもの笑顔の方がかわいいよ」


 ここですかさず素直な意見を率直に伝える。


「えへへ……かわいいって仁志くんに言われるの、すっごく嬉しいなあ」


「それはよかった」


「ところで、せーちゃん、胸大きいよね」


「あぁ、たしかに、あれはすご……っ!」


 しまった!


 これは誘導尋問!


 美海の罠だ!


 美海の笑顔が一瞬で般若のように変わった。


「ほらあああああっ! やっぱり、やらしい目でせーちゃん見てるじゃん! 仁志くんのバカあああああっ!」


 衝撃。


「ぶへばっ!」


 画集入りカバン!


 重さは凶器!


 しかも、正確にみぞおち!


「ふんだっ! しばらく話しかけてこないで! リンクもしないからっ! 反省してよね!」


「……美海……男にその質問はズルいって……うぐっ……」


 結局、俺は告白なんて夢のまた夢で、それどころか美海と話すこともできずに、ほとぼりが冷めるまで待つしかなかったのだった。

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