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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 1学期

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1-17. 6月……ふーん?(1/4)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

湖松(こまつ):仁志の友だち。こまっちゃん。

松藤(まっとう):仁志の友だち。バスケ部。美海と小学校からの知り合い。

鶴城(つるぎ):仁志の友だち。バスケ部。美海と小学校からの知り合い。

美河(みかわ):仁志の友だち。バスケ部。美海と小学校からの知り合い。

 告白しよう。


 美海に好きだと、付き合ってほしいと告白しよう。


 俺は先日、美海を抱きしめたときからそう決意していた。そう、先日からそう決意している。


 で、結果は、うん、まだ告白できていない。結局、告白を言い出せずに5月が終わり、6月に入って夏服の校章付きのポロシャツと灰色ベースの長ズボンにも変わり、さらに6月も半ばになって、今度は6月末にある期末試験が迫っているのである。


 ……連絡先交換のときからまるで成長していない。


 あぁ、今の距離感がちょうど良く感じて、そこから近付くのが少し怖い。逆に、美海は俺が美海を抱きしめたあの日から少しだけ俺の方へ距離感を詰めてくれている気がする。


 これって……俺……。


「俺、これ、ガツガツしていないって言うより、単純にヘタレなんじゃないか……?」


 昼休み、俺は通学途中で買っておいたパンを口に放り込みながら、食べている合間にそんな自虐も放り込む。


 人に言われたら傷つくけど、自分で言っている分にはそれほどでもない。


 でも、それでも、チクリどころかグサッとくる。


 言い返せない事実ほど、突きつけられて冷たく感じるものはない。


 ちなみに、さっき挙げた期末テストも美海とテストの点数勝負をしている。ただし、今回は前回の失敗もふまえてテストが終わってから、こっそりと2人きりのときに教えることになっている。


「金澤、ガツガツだのヘタレだのぼそぼそと呟いているが、オレに聞こえない程度にもう少し音量を下げた方がいいぞ」


 俺の親友である湖松(こまつ)ことこまっちゃんがいつの間にか隣で似たような感じにパンを口に放り込んでいた。


「あ、すまん、ってか、いたのか」


 うん、こまっちゃんって、忍者なんじゃないかってくらいに神出鬼没なんだよな。


「……相変わらずだな。まあ、考えごとをすると独り言が増えて周りが見えなくなるのは分かるがな」


 さすがにボーっと考えごとしていても、他のクラスメート相手だったら気付くぞ? 周りが見えなくなるって言っても限度があるだろう。


 まあ、でも、実際に気付けなかったしな。


 ひとまず、昼食を済ませた俺は次の授業の準備をしようと机の中を探る。


「あぁ……ん?」


 次は現代国語(げんこく)だけど……あれ?


「どうした?」


 俺はこまっちゃんの言葉を無視して、机横に引っ提げていたカバンを手元に手繰り寄せて中を開けてみる。


 あぁ……ないな。


 現代国語の教科書がない。


 ノートはあるけど教科書がないな。


「やべ、次の現代国語の教科書、家に置いてきたみたいだ」


「ん? 机、カバンときたら、下駄箱ロッカーに置き勉の可能性は? まあ、現代国語を置き勉するかは分からないが」


 こまっちゃんの言うとおり、通常、あまり使わない教科書は下駄箱のロッカーに放り込んであることもある。


 ちなみに、机に全部置き勉だと掃除のときに「重い」と文句を言われるので、下駄箱ロッカーへの置き勉が暗黙のルール化されているのだ。


 しかし、今回はその可能性がない。


「いや、昨夜、勉強したんだよ。つまり、カバンにも机にもなけりゃ家だ」


 そう、昨夜、美海とスマホアプリ Link-Ring(リンク・リング)、通称リンクで音声通話しながら勉強していたんだよな。


 もう何度もしているリンク通話だけど、お互いに家族の目もあるから、いつも30分くらいだった。


 それでも楽しかった。


 美海の部屋に飼い犬のノティがしょっちゅう現れて勉強が中断していたのも面白かった。あれじゃ、家じゃ勉強できそうにないな、なんて毎回笑ってしまう。


「なるほど。なら、4組に行くといい」


「4組?」


 こまっちゃんの助言に俺は首を傾げる。


「そうだ。4組は午前に現代国語をしていて、同じ中学の松藤(まっとう)がいるから借りられると思うぞ」


 あ、そういうことね。


 持つべきは貸し借りのできる別クラスの知り合いだな。


「お、サンキュ。松藤か。そういや、高校に入ってからまともに会話してなかったな。ついでに話してくるか。じゃあ、行ってくるわ」


 昼休みが終わるまでに借りに行かないといけないので、早速俺は立ち上がって教室を出ようとする。


 こまっちゃんは自分の席の方へ戻りながら、俺にあまり力の入っていない手を振っていた。


 ちなみにこの高校は、1組から4組まで、5組から8組まで棟が違う。その棟を繋げるように渡り廊下と特別教室がある。特別教室が渡り廊下部分にあることで全ての組がある程度同じ時間内で移動できるようになっている。


 まあ、そうは言っても、渡り廊下に近い4組や8組と、渡り廊下から遠い1組や5組とでは教室3つぶんの距離があるので完全に一緒にはならないけどな。


 で、俺やこまっちゃんは8組で、正直、1~4組側にはあまり行くことがない。


 とか考えているうちに4組の前まで来た。


「ごめん、松藤いる?」


 パッと見で見当たらなかったので、近くにいた知らない男子たちに聞いてみる。


「あ。金澤くん?」


 なんで名前バレてるんだ?


「松藤なら、たぶん、晴れてるからベランダ側だと思う。昼飯は他のクラスの奴といつも一緒だから」


 その後、別の男子がベランダ側を指差している。


「ありがと。じゃ、ちょっと入らせてもらうわ」


 俺は軽く礼を言った後、教室に入ってからささっとベランダ側へと移動する。


 いた。松藤だ。それに、同じ中学だった鶴城(つるぎ)美河(みかわ)もいた。この3人は中学時代もよくつるんでいたな。


「よ、松藤、鶴城、美河、久しぶり」


 松藤は俺やこまっちゃんとも仲良くするいろんなグループの繋ぎ役といった感じだ。鶴城や美河とも話すことはあるから仲が悪いとかじゃないけど、松藤がいないと会話しない感はお互いにある。


 これだけいるなら借りられそうだな。


 俺の声に反応して、松藤、鶴城、美河が顔だけ俺の方に向けてから、俺が来たことにだいぶ驚いた様子で身体ごと俺の方へと向き直した。


「おぉっ!? 金澤じゃん。相変わらず背が高いやんな」


 相変わらずって、背は小さくならんだろ。


「金澤は元気そうやんなあ。会ったら言おうと思ってたんやけど、俺らの小中時代のアイドル、ののちゃんとよろしくしているんかあ?」


「よろしくって、鶴ちゃん、おっさんくさいなあ!」


 次に鶴城が語尾の伸びた少し抜けている感のある話し方で話しかけてきて、そのあとすぐに美河が勢いよく鶴城の発言を拾い上げていく。


 たしか、3人は小学校のバスケ、ミニバス時代からの仲だったはず。さらに、中学校でもバスケ部、多分、高校でもバスケ部だと思う。


 俺は背が高かったからバスケ部に勧誘されていたが、そこまで運動神経が良くなかったので頑なに断っていた。


「小中時代? ののちゃん? あぁ、そういや、3人は美海と同じ小学校だっけか?」


 ののちゃんって、呼び方がかわいいな。


「そうそう。小学校の頃からののちゃんは人気やったけどな」


「ちなみに、ののちゃんって言ってるのはミニバスやってた連中くらいかな」


 へえ。美海とミニバスってあんまり接点なさそうだけど。


「せやんなあ。だから、金澤でもそう呼ばんようになあ?」


 ちょっといいなって思ったけど、許可が下りなかったようだから美海を「ののちゃん」呼びできそうにない。


「美っちゃん、金澤はののちゃんのこと、美海って言ってるんやよ」


「下の名前を呼び捨てって、彼氏かいな!」


「彼氏やろ」

「彼氏やろ」


「あはは……」


 俺が中途半端なせいで、美海とは一応友だちです。


「で、俺に何の用? ただ話し相手になりに来たわけじゃないやろ?」


「鋭いな。5限に現代国語があって、教科書を貸してほしいんだ」


「あぁ……悪い。俺も忘れたんよ」


「おっと、そうなのか……鶴城や美河は?」


「俺んとこは今日ないから持ってきてない」


「俺も5限に使うんや」


 松藤は俺と同じく忘れ、鶴城は授業ナシで持ってきてなくて、美河は別の先生が教科担任(きょうたん)なようで、俺と時間が被っている。


 つまり、詰んだ。


 どうしようかな。


 こまっちゃんが4組をわざわざ指定したってことは、7組の美海や乃美が持っていない可能性が高いってことだもんな。


「あの……金澤くん」


 不意に聞き覚えがあるようなないような微妙なラインの女の子の声が背中の方から聞こえる。


 思わず振り返る。


「ん? でっ!」


 失礼を承知で言おう。


 顔よりも先にデカ盛りメガ盛りのお……胸部に目がいってしまい、思わずデカいと言いかけた。


「……でっ? あの……お久しぶりです」


 さらに視線を上にあげると、目隠れの眼鏡女子が俺の前におずおずといった様子で立っていた。

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