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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 1学期

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18/139

1-14. 5月……勝負しよ?(2/4)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

 俺がぽかんとしてしまっている間に、周りで男女問わずで同級生のひそひそ声が聞こえてくる。


「なんでも? なんでもって、なんでも?」

「え? なんでもって、本気なのかな?」

「やばくない? やばくない? やばくない!?」

「もしかして狙って言っているの? え、能々市さんってけっこう?」

「いや、大胆過ぎるだろ、これ、金澤の方はどう出るんだろうな」

「ちょ、お前、そこ代われ。マジで、金澤、そこ俺に代われ」

「くそっ、うらやまけしからんな!」

「どうして……能々市さん、そこまで金澤のことを……?」

「これは金澤の方は一択だろうな」


 やかましい。羨ましいだろう? 代わらんわ!


 だけどな、俺は一択にしないように今頭をフル回転させているんだ。


 おい、そこ、俺の方を見て、藁人形の首をへし折るんじゃあないっ! やめろいっ!


 でも、まあ、当たり前だ。美海の「負けた人は勝った人に何でもしてあげる」はそれほどに思春期のやつらにはインパクトが強すぎる。


 小学生だったら問題ないだろう。


 健全な感じで終わる。本当に健全な感じで。次の土日に一緒に遊ぼうとか、キラカードやキラシールをあげるとか、給食のデザートを1週間あげるとか、手を繋いで帰るとか、あの漫画を貸してよとか、そういう感じで決着ができる。


 一言で言えば、「微笑ましい」のである。


 しかし、「健全な」が高校生に修飾語として掛かった場合はまったく異なる。男子高校生がな、同級生の女の子から勝ったご褒美に「何でも」と言われたら、脳内がどうなるか。


 簡単である。


 18禁である。


 それ以外にあるだろうか、いや、ない。どう考えたって、それ以外にあるはずがない。


 2人とも18になってない? 知るか! 建前なんか知るか!


 美海はガツガツしてないのが好き? 知ってるさ! でもな、かわいい女の子に「何でも」って言われたら、誰だってがっつくわ!


 なんだったら、今俺の頭の中で天使(みなみ)悪魔(おれ)が2人でマイムマイムを踊りながら、「抱けえっ!!」と何度も叫んでいるんだ。


 というように、「何でも」という言葉は使いどころにもよるが、この場合においては、もうほぼ一択である。


「仁志くん? どうしたの?」


 ただし、俺は理性で全力を賭してその欲望を押し殺さなければならない。


 俺が本当に欲しいのは、一度限りになるかもしれない欲望の捌け口じゃなくて、やっぱり、美海に好かれて長く一緒にいられる時間なんだから。


 俺はもうなんだかんだ言おうとも、美海のことが好きなんだと思う。


 じゃないと、こうはならんだろ。


 だから、脳内の天使(みなみ)悪魔(おれ)の声に俺は惑わされないようにしなきゃいけない。


 だから、俺はご褒美に惑わされてはいけない。ついでに言うと、ご褒美で付き合うのもダメだ。


 なんか罰ゲーム感を出したくないからだ。


 考えすぎた。


 まずは冷静に返事をしよう。


「あ……あぁ……いや、そのさっき美海に言われたことが分からなくて」


「あれ? さっき何でもって聞き返してなかった?」


 ですよね。はい、思わず聞き返したことを忘れていました。


 全然冷静じゃないですね、俺。


 いや、待て、まだ終わってないぞ。


「あ、いや、そういう意味じゃなくて、何でもって言ったって、俺ら高校生だから、限度があるだろ?」


 そう、制限だ。さすがに「何でも」という言葉どおりではないはずだ。というか、言葉どおりにしないように、言い出した美海に制限を設けてもらうしかない。


 いや、俺がお願いを自制すればいいだけなんだけど、まあ、ほら、やっぱもったいないって思うじゃん。


 俺、やらなくて後悔するよりやって後悔するタイプなんだ。でも、正直、やって後悔もしたくないから制限してほしいんだ。


 うん、この言い訳、おぞましいほどに最悪だな。


 美海はピンときてないようだが、周りの同級生は俺の言葉にピンときたようで、固唾を飲んでこのやり取りを見ている。


 いや、待て。こっちを見るな。そんな目でこっちを見るな。


 もちろん、ここでやり取りを始めた俺と美海がよくないんだけどな……。


 でも、こう、空気読んで、ささっと帰ってくれないかなあ……。


「たしかに! 限度はあるよね! ウチもできないことたくさんあるもん」


「だろう?」


 美海は察してくれたようだ。


「すごくお金が掛かるとか、すごく時間が掛かるとかはダメだけど、負けた人ができそうなことならOK」


 うんうん。まあ、最初はそうなるよな。


 でも、それだけの制限だと、俺、えっちぃことをお願いできちゃうんだよなあ。


 というか、今さら思うけど、美海に「えっちぃことはダメだよ?」って、このまだ教室で俺らを見届けているやつらがたくさんいる中で言わせるの難しくない?


 え、俺が言わなきゃダメ? いや、それも何か違うよな? 「ぐへへ……それじゃあ、えっちぃことをお願いしちゃうぞ?」って言う?


 そんな軽い感じでできるわけねえから、俺は悩んでいるんだよ!


 まだ慌てるような時間じゃない。粘れ、俺。


「なるほど。たしかにそういうのは俺も無理だろうな。でも、それ以外なら何でもか? まだ、こう、あるんじゃないか? ダメなことって。されたら嫌なこともあるだろう?」


「殴るとか? 蹴るとか?」


 そんなことせんわ!


「そんなことせんわ! 俺をなんだと思っているんだ!」


 そりゃ嫌だけど! 嫌だろうけど! 俺が女の子に暴力を振るうような奴みたいに言われて思わず声を荒げてしまった。


 って、そうじゃなくて、もっとひねり出してくれ!


「だよね? じゃあ、危険なことしないってことでしょ? それに、勝負なんだよ? 乙女にも二言はないよ! 受けて立ったら、男に二言はないよね?」


「そりゃ……まあ」


 え、なんで俺が日和(ヒヨ)って、美海が強気なの? 気付いてないの?


「あ、わかった!」


 美海が何かを閃いたようで、恥ずかしそうな顔でもじもじし始めた。


 ようやく、お気付きになられましたか。


 しかし、恥ずかしがっているのかわいいな。って、恥ずかしがっているのを喜んでいる場合じゃないな。ここは紳士的に、場所を変えて言いやすいようにしてあげないとな。


「分かってくれたか。まあ、ここじゃ恥ずかしいよな? ちょっと場所を変えて話そうか」


「ううん、ありがとう、大丈夫」


 え? 大丈夫なの? 豪胆だな。


「ウチが何をお願いするか分からないから、ちょっと怖くて乗り気じゃないんだよね?」


 はい?


「はい?」


「ウチ、今回、勝つ自信あるから、もうご褒美のお願いごともバッチリ決めちゃってるしね」


「いや、俺も負ける気はないけど……」


 ちょっと俺の想像しているものと違うのが出たな。あ、でも、これ、今から宣言されるってことだよな。


「それでも、知りたいよね? あのね、ウチは――」


 いいこと思いついたぞ。


「ちょっと待ってくれ」


「え? なに?」


「俺は先に言っておくと、美海がしてほしいことを俺にもしてほしいってことにするつもりだ」


「え?」


 そう、先手カウンターだ。これなら変なお願いごともされないし、俺だけが変なお願いごとをすることもない。


 周りからめっちゃブーイングが出ている気がする。実際に声で出ているわけじゃないが、視線がそう物語っている気がする。


 まあ、普通に考えてズルいもんな。


 でもな、俺はガツガツしていると思われずに告白できそうなその時まで、ガツガツしない男として、美海に好意的に思ってもらい続けないといけないんだ。


「その方が一緒な感じがしていいからな」


「ちょっとズルい気もするんだけど……でも、一緒の方がたしかにいいかもね。でも、今回だけだよ? 毎回だとちょっとズルいかも」


「そうだな。今回だけ、な。ちなみに、何をお願いするつもりなんだ? というか、ここじゃ他のやつもいるし――」


 俺が周りを見渡しながらそんな言葉を口にしていたら、美海が真剣な眼差しでこちらを見つめていることに気付いた。


 美海が意を決したかのように口を開く。


「ウチは仁志くんに抱いてほしい」


 今度こそ、クラスの時が止まった。

ご覧くださりありがとうございました!

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