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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 1学期

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1-Ex4. 5月……だーれだ?(2/2)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

司書:図書室の受付お姉さん。仁志を「少年」呼びする。

 俺の目の前には満足そうにしている司書の姿があった。


 一方の俺の方は喉が痛い。疲れた。


 鏡があったら自分の顔を見てみたい。げっそりとしていそう。


「……ということで残りの2つも紹介したぞ。勉強になったろ?」


「結局、書庫も奥の本棚スペースもそっち方面での説明しか受けてないですけど!?」


 書庫は関係者しか入ってはいけない場所とされている上に、少し階段を昇る必要があって死角が多いから声さえ出さなきゃいいらしい。


 ……いいわけねぇだろ!


 奥の本棚スペースは図書準備室や書庫に比べて、人の出入りがある分、スリルが味わえるらしい。


 ……どんなスリルだよ!


「知識っていうのは何事も無駄にならんさ。叡智(えいち)っていうのは、さまざまな知識があってこそだからな」


 いや、こんな知識要らんのよ!?


 それに、今、叡智って違う意味で使わなかった!?


 ……うん、まあ、知識は無駄にならないから、いざとなったら、要るかもだが……待て、待て、俺。今、一瞬、血迷ったじゃないか……。


 俺はガツガツしない、健全、ガツガツしない、健全、ガツガツしない、健全……。


「頭が固い奴だな。もしかして、アレもか?」


 さっきの俺の勘違いで新しいパターンできちゃったよ!


「さっきの俺の勘違いで新しいパターンできちゃったよ!」


 うっかり敬語というか丁寧語を忘れてしまうほどに俺は疲れている気がする。


「人は叡智によって進歩するものだ。あぁ、進歩を聞き違えるなよ?」


「誰が進歩をち……って、危ねえ! 誘導されかけた!」


「ちっ」


 なんで舌打ちされなきゃなんないんだよ。


「ちっ、じゃないですよ!」


「さすがに舌打ちは礼儀がなかったな。すまない。しかしまあ、ガードも固いな。まあ、それくらいじゃないと、昨日のあれは真面目にやりすごせないか」


 終始ニヘラヘラと笑っている司書に俺は大きな溜め息を吐いてしまった。


「まったく……俺で遊ぶのやめてもらえますかね」


「あのなあ、少年よ」


「えっ? は、はい」


 司書が先ほどのへらへらした顔から嘘のように真剣な眼差しと表情に変わったため、俺もなんだかビシッとしなきゃいけないと肌で感じてスッと背筋を伸ばした。


「高校生になったんだから、もう少し、そういう妄想も楽しんだ方がいいぞ? それに合意なら、現実にしたっていいわけだし。羽目を外すくらいいいじゃないか。ん? ハメを外しちゃダメか?」


 俺はコケる感じでカウンターに身を乗り出していた。


「真面目にご高説でもするかと思えば、やっぱりそっち方面ですか!?」


 司書はカウンター内の丸椅子に座ってからニコリとして表情を崩した。


「……真面目なんてな、大人の都合でつくられて押し付けられるただの幻想だよ。勉強しかしてこなかった、勉強しかできなかった、そんな奴は意外と潰しが利かないんだ」


 え? ええっ?


「え? ええっ?」


「あぁ、そんなに驚くな。もちろん、学力は大事だ。学生の本分だし、それは私も否定しない。学力があれば、仕事だけならいろいろと選べるのかもしれんから、そういう意味での潰しは利く。それは間違いない。だがな、人生は仕事だけじゃないんだ。勉強も遊びも恋愛もほどほどに楽しんで、バランス良く生きることが大事だぞ。これは私と私の知り合いの中での共通見解というやつさ」


 いや、驚いているのは学力の話じゃないんですが? 切り替え早くない? 真面目過ぎない?


 俺の方が切り替えできていない状態で、急に司書が人生語り始めたんですけど。


 むしろ、先ほどまでの下ネタはどこいったよ。


「……いや、急に本当に真面目な話で頭に入ってこないんですけど」


 俺の率直な意見に、司書は一瞬驚いた様子で口を閉じたかと思えば、目を丸くしていた。しかし、それもほんの一瞬のできごとで、次の瞬間にはいつものニヘラヘラとした司書の顔が現れる。


「はっはっはっ。今言ったばかりだろ? 真面目なだけじゃダメだってな。メリハリも切り替えも大事なんだぞ? ところで、だ」


「ところで? まだ何かあるんですか?」


 俺は意外と人の人生論を聞くのが好きなのかもと気付いた。それと、司書が出す言葉は軽くて重いというか、後から、そう、数年後、数十年後になって、その重みに気付くのだろうなと思う言葉だと感じた。


 だから、俺はしっかりと聞く体勢を整えた。


「する時は教えてな。一旦席外してから、頃合い見て、それこっそり見るから」


 うおおおおおいっ! 俺のなんかこの尊ぶ気持ちを返せいっ!


 ってか、デバガメじゃねえええええかあああああっ!


「何、高らかに覗き宣言してるんですか!?」


「え? 参加した方がいい? あんまりプロポーションに自信ないけど」


 んなわけあるかあああああっ!


「んなわけ、ありませんけどおおおおおっ!?」


 ……あれ? ありませんって、どっちに言ったことになった? 参加した方がいいに言ったことになったよな? プロポーションの否定はしてないよな?


 ちらっと司書の顔から視線を落とす。


 うん、プロポーション、どうなんだろう。


「おっと、下姉たん(シモネータん)の身体にも興味を持ったのかな?」


「下姉たんって……」


 下ネタと掛けたのであろう下姉たんという聞き慣れない言葉に、俺は絶対に司書さんとしか呼ばないことを誓った。


「あ……静かに」


「あ、はい……って、騒がせているのは――」


 俺が司書の言葉に少しばかり呆れながらも言葉を返そうとすると、不意に視界が真っ暗になった。


 思わず声が出なくなり、息を呑んでいたが、すぐに目を手で覆われたのだと分かった。


「だーれだ?」


 明らかに女子の声だ。というか、美海(みなみ)の声だ。


 ちょっと高めでニコニコと機嫌が良さそうな明るい声が俺の耳をくすぐるように通っていき、下ネタ封じに疲れ果てていた俺の気持ちが癒されていくのが分かる。


 美海の小さな手は温かくて柔らかくて気持ち良くて、親が使っているホットな使い捨てアイマスクってこんな感じなのかなって想像すらしてしまう。


 さて、ちょっとだけ意地悪してみようかな。


「この声は……み……な……?」


 俺の回答に美海が反応して、ちょっと手に力が込められて、いや、ちょっと痛いぞ。


 うーん、やはり、意外とパワーあるな。


「ミナって……だーれだ?」


 腹の底から震えあがってしまうような声だった。


 あれ? 冗談のつもりだったが、予想以上に怒ってらっしゃる。


「少年よ、その顔で何人も彼女がいるなんて、やるじゃないか」


 司書が間髪入れずにそう言ったので、美海がさらに手に力を込める。


 痛たたたたっ! 痛あああああいっ!


「そんなわけないですよ! み、み! 美海! まだ、美海のみを言ってないだけ! ちょっと迷っただけ!」


 うん、痛い。痛いと言う言葉は我慢しているけど、普通に痛い。


「え、そうなんだ? 私かどうか迷ってただけなんだ? えっと……ごめんね?」


 ごめん。意地悪しようと思ってました。


「いや、こっちこそ、即答できなくてごめんな」


「でも、私って分かってくれて嬉しいな」


「そりゃ、俺には美海くらいしかいないからな」


 ん? これ、聞きようによってはなんかすごい解釈されそうだな。


「えへへ……ウチだけかあ……えへへ……」


 あ。一人称が司書がいる前でも「ウチ」になってるな。


 そんな俺と美海のやり取りを見た司書が、急に自分の身体を抱き締めるように縮こまる。


「すまないが、あまり見せつけないでくれんか。私には強すぎる」


 微妙なラインのパロディが来たな。


「ところで、何の話をしていたの?」


 美海が俺の横に立って、俺と司書を交互に見ている。


「あ、あぁ、昨日のお礼。遅くまでいたから」


「それなら私も言わないと。昨日はありがとうございました」


 美海が深々とお辞儀をする。


 礼儀正しくて、満点かわいい。


「いえいえ、最終下校時刻の前なら何の問題もないからね。ところで、美海ちゃん? ちょっといいかい?」


「んえ? はい」


「え、急に内緒話ですか?」


 急に内緒話をされることになって、しかも、天使と下姉たんなのでちょっと気になっている。


「ふふっ、女どうしの秘密だよ……ごにょごにょ……」


 しばらく、俺がごにょごにょとしか聞こえない程度の感じで司書が美海に語り掛けている。


 次第に美海の顔が真っ赤になっていくことに気付き、よもや先ほどの図書室紹介を美海にもしているのではないかと勘繰った。


「……ふえええええっ! そ、そんな! ええっ!?」


 いや、確定だろ、これ。


 俺はともかく、美海まで下ネタで穢すなんて許すまじ!


「司書さん? 同性でもセクハラってあるんですよ?」


「心外だな。そんなことはしてないさ。ね? 美海ちゃん?」


「う、うん! そんなことないよ!」


 怪しい。


「じゃあ、何の話だったんですか?」


「だ、か、ら、女どうしの秘密、さ」


「聞かないで。お願いっ!」


 何故か美海に懇願されてしまっては、俺がそれ以上追及することなどできなかった。


 それと、俺は自分がニヤケてないか気になるくらいに、両手を合わせて顔よりちょっと前に出して、必死に目を瞑って、顔を真っ赤にしてちょっと恥ずかしそうにお願いをしている美海がかわいく見えたのだった。

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