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【完結】今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 3学期

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4-24. 3月……今日もふたりだけで話そ?

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。彼女。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。特別な友だち。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

 終業式当日。


 いよいよ1年が終わった。これから春休みに突入ということで、急いで帰る男子たちもいれば、また一緒のクラスになれるといいねと話し合う女子たちもいる。もちろん、これから弁当を食って部活をしようって奴らもいる。


「ここ、久々やね」


 そんな開放感のある放課後に、俺と美海は体育館裏にやってきていた。


 聖納は用事があるということで親の迎えがあって、「春休みに遊びましょうね」と俺に笑顔を振りまいて帰って行ったので2人きりだ。


「冬はやっぱり外が寒いからな」


「でも、今日はまさかの20度越えやもんね」


「今週、5月くらいの陽気だってさ」


 今日は珍しく最高気温が5月並みの陽気ということで若干汗ばむくらいに暑かった。


「やっぱり? ブレザーやとちょっと暑いもんね」


「暑いならやめるか?」


 俺たちは体育館裏で話そうとしていて、美海の甘えん坊な要求により、俺の膝上に美海が乗る予定だった。


 暑いって言うなら隣どうしでもいいかなと善意で提案したつもりだったが、どうやら美海はお気に召さなかったようで、ハムスターもびっくりなくらいに頬を膨らませている。


「イジワル……乗るもん。ほら、ひーくん、早く座って」


「ようこそ」


 美海に急かされて俺が胡坐をかいて座ると、すぐさまちょこんと同じ方向を向くように美海がすっぽりと俺の胡坐の中に収まっていく。


 俺が頭を軽く撫でながら歓迎の言葉を呟くと、同じ方を向いているから美海の顔が俺に見えないものの、嬉しそうな笑い声を押し殺しているようだった。


 嬉しさが爆発しているのを必死に隠している美海はかわいいなあ。


「ふ、ふふ……うむ、苦しゅうない……あー、ついに1年生が終わったね」


「あぁ、あっという間に終わったな。はい、いちごなオ・レ」


 そう話そうと思ったのはこの1年の振り返りだ。


 聖納もいてもいいかと俺も美海も思ったんだが、先ほども言ったように用事があったために聖納が悔しそうに「また今度じっくりと! 絶対に一緒に振り返りましょうね! 2人で!」と強く念押しされた。


 ちなみに、聖納の「2人で」に美海が苦笑いだったので、多分、難しい気がしている。


「ありがとう。この1年、いろいろあったよね」


 俺と美海がそれぞれ「いちごなオ・レ」をストローでチューチューと飲み始める。


「そうだな。4月に……出会いが泣き顔からスタートだもんな」


「むー……あのときは先輩にフラれて、悲しかったんやもん」


「そう言っていたな」


 4月のあのとき、美海が体育館横で先輩に告白してフラれたことから、俺たちのこの関係は徐々に始まった。


 まさか、泣きながら俺のいる体育館裏側に来るとは思っていなかったし、そこからいきなり付き合ってほしいなんて言われるなんて1ミリも思わなかった。


 それは俺が忘れていた昔の約束を美海が覚えていたから起きたことだけれど。


「でも、先輩にフラれてよかった。ひーくんに会えたし」


「そう言えば、美海ってあのとき、標準語っぽかったよな」


 最初訛りも抑え気味だったような。


「だって、訛ってると地方っぽいもん。高校生になったら、標準語も使えんとって思ったけど、なんか普段はみんなも訛ってるしいいかなって」


 あ、理由が意外と単純だな。


「ぎこちない標準語よりもいつもの美海の方がかわいくて好きだけどな」


 別に標準語とか方言とか気にしなくていいと思うけど、まあ、関東に出たらそうなるのかもな。関西に出たら、むしろ標準語よりも関西弁をマスターしなきゃいけない気もするが。


 地元で過ごすなら方言のままでもいいしな。


「えへへ……」


「そう言えば、あのときはなんか会話がポンコツぽかったけど、その後、全然そんな感じないよな? ポンコツは演技?」


 ふと、あの時の謎の一問一答を思い出す。


 実はあれ以来、美海から訳の分からない一問一答なやり取りはほぼない。いや、夏休みに1回あったな。


 ツッコミが続くようなラリーもなくて、それはそれでちょっと寂しい気もする。


 「ぽ、ポンコツ!? 演技じゃなくて、緊張してたんよ! まさかひーくんと会えると思ってなかったし、なんかすごく運命な感じがして、はわわって感じやったの!」


 なるほど、緊張で会話を短く切るしかなかった、と。


 理由がかわいいな。


「なにそれ、かわいい」


「えへへぇ……でも、そんなこと言ったら、ひーくんもポンコツやったやん。リンクのID聞くのに躊躇い過ぎ」


 思わぬポンコツ返しに俺は返す言葉がなかった。


 あの頃の俺は本当に傷付くのが嫌で臆病だったしなあ。


「うぐっ……俺はモテないからさ……女の子とそういうことしたことなかったんだよ」


 ……いや、今も傷付くのは嫌だし、臆病も変わらないな。だけど、ここぞというときは頑張れるようになってきている気がする。


 それもこれも美海や聖納のおかげだな。2人のおかげで俺はなんだか成長した気分になれている。


「ひーくんもかわいいところあるやん」


 あれをかわいいと言えるのはなんなんだろうか。俺からすると恥ずかしい以外の何物でもないのだけれども。


「かわいいって……あれくらいの初々しい方がいいか?」


「ううん。今のひーくんの方が自然な感じで好きやよ」


 俺に「好き」と言った瞬間に、美海の顔が真っ赤になっているんじゃないかって思う。


 少なくとも長い髪を掻き上げてちらっと見える耳が真っ赤になっているからだ。


「そうか。それから聖納に会ったもんな」


「そうやよ! まさかせーちゃんの好きな人がひーくんやと思わんかったもん!」


 そこから6月くらいに聖納とばったり会う。


「いや、俺だって、塾の夏期講習で一緒だったくらいで、まさか高校でばったり会ったからって告白されるとは思わなかったしな」


「それはしょうがないかも。だって、ウチでもそれは運命って感じするもん」


 前に聖納に聞いたように、タイミングを見計らっていたみたいで、もっと早くてもおかしくなかったし、場合によっては美海よりも先に聖納に告白されて、聖納とだけ付き合うことになっていたかもしれない。


 美海が先ほどから「運命」という言葉を使っているけど、本当に運命ってものはよく分からないな。


「んで、先輩の告白があって」


「そうそう、今さら何しに来たんって感じ」


 先輩のことをはっきりと思い出したのか、美海がぷりぷりと怒り始めた。


 そりゃそうだよな。


 自分をあっさりフッた男が後から上から目線で付き合ってやるみたいに言ってきたら、誰だってふざけるなと思うだろうな。


 あの後、結局、先輩はずっとバカにされているらしいけど、性格があれ以上歪まなきゃいいなあとは思う。


「で、美海が先輩を逆にフリ直して、俺と美海が付き合うことになって、さらには俺が気絶している間に聖納とも付き合うことになったと」


 気絶の部分を強調すると、美海の身体がビクンと震えた。


「うっ……なんだかそれはごめんやけど、でも、ウチら彼女が公認の二股恋愛やもんね。今まで女の子と付き合ったことないって言ってたひーくんが、いきなり2人と付き合うのもすごいよね」


「普通あり得ないけどな」


 一度フッたはずの……いや、それだと美海も該当するか。とにかく、聖納も美海も俺のことが好きで付き合いたいと言ってくれたときは、嬉しさよりも戸惑いの方が大きすぎた。


 付き合うのは1人だと思っていたし、それに、これからどうなるんだと不安も強かったしな。


「ちょっと楽しかったよ? ひーくんも満更じゃなかったんやない?」


 美海でも楽しかったのか。


 もちろん、不安もあっただろう。


 だけど、それと同じくらい楽しかったときを過ごした。


 俺もそう思う部分がある。


「まあ、そうだな。2人ともそれぞれ違った魅力があって、すごく魅力的だったしな」


 性格や会話もそうだけど、突然叡智な話で申し訳ないが、どっちも捨てがたい魅力があったんだよなあ。


 こう、柔らかさとか、触り心地がそれぞれ違って、みんな違ってみんないい、みたいな。


 ……これ以上、想像していると美海の座るところがなくなるのでやめておくけど。


 でも、やっぱり、美海の方が良いなって思った。


 それは間違いない。


 ここは理屈じゃなくて、好きだって強く思えたからだ。


 それは約束があったからかもしれないし、俺と美海だと違う部分が多いからこそ惹かれ合うこともあったんだと思う。


 それに、美海といると、なんだか元気になれる自分がいるからだ。


「むー、やっぱ、楽しんでたんやん」


 え、あの流れからの同意で、まさかの叱られ案件になるの?


「なにこの誘導尋問……俺、どう答えればいいんだよ……」


「ぷっ……」


 俺がやさぐれ気味にそう不平不満を漏らすと、面白かったのか美海が吹き出した。


「ははは」

「あはは」


 それから俺たちは笑った。


 お互いの距離感が分かっていて、お互いにちょっかいを掛けているような感じ。


 そうしていたら、急にチャイムが鳴り始めた。


「あ、チャイムだな。昼飯終わりくらいのかな? 放送部が放送を切り忘れているのかもな」


「ウチら部活じゃないし、そろそろ帰らんなんかな?」


 美海が言うように、部活がなければ下校時刻を過ぎているから、基本的には帰った方がいい。だけど、まだ俺も美海も話し足りない雰囲気がありありと出ている。


「美海はまだ時間あるか? 俺はまだまだ話し足りないことがいっぱいあるからな。だって、まだ1学期のことまでしか話してないしな」


 夏休みの初叡智の話をするかはともかく、夏休みの文化祭の話や2学期に別れる寸前までいった話、3学期のバレンタインや二股を解消した話など、話したいことはまだまだ尽きない。


 美海がいいなら、今日はとことん2人で話したい。


「うん! 今日はまだまだ時間はあるから……今日もふたりだけで話そ?」


 その後、俺たちはつい最近のことまでいろいろと振り返りながら話し合った。


 松藤のこと、聖納のこと、まだまだお互いに気が抜けないこともあるだろうけど、いろいろな人やいろいろことと関わり合いながら、俺はまだ美海と一緒に楽しんで過ごしていきたい。


 今日も……いや、これからもずっと2人で話していく時間をつくっていこう。

最後までご覧くださりありがとうございました!

これで『今日も2人だけで話そ?』は完結になります!


ifとしての聖納ルート、そのほか続編となるような2年生編、3年生編もいつか書ければいいなと思っています!

その際はまた仁志や美海、聖納たちが織り成す物語にお付き合いいただければ幸いです!



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