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【完結】今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 3学期

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4-Ex5. 3月……あまり変わらんな

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。彼女。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。特別な友だち。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

司書:図書室の受付お姉さん。仁志を「少年」呼びする。

 とある晴れた日の放課後。今日は朝から雪も融けていて久々に3人で帰ることになっていた。だから、俺は図書室で2人の部活帰りまでのんびりしようと思い、ここにいる。


 3年もいなくなり、学年末テストさえも終わった3月は図書室に閑古鳥を訪れさせていた。


「はあ……」


 思わずため息を吐いてしまった。


 もちろん悩みから来る溜め息で、もちろん悩みの内容は美海と聖納のことだ。


 頭を回転させ始めようと思った矢先に、目の前に人影が立つ。


「溜め息なんか吐いてどうした、少年。溜め息は幸せが逃げると言うだろう?」


 司書だ。


 図書室に来たのだから当然司書もいるわけだが、こうも気さくに話しかけてくれると親近感や特別感も覚えてしまう。


 それに耳ざとく俺の溜め息まで司書は聞いていた。


 勉強もちょっと疲れてきたし、俺の休憩がてら話し相手になってもらおう。


「いや、最近、美海と聖納のことで疲れている感じですね」


 聖納と別れたことを言っていないので、俺はちょっと濁しながらそう伝える。


 ここ最近、聖納が割とスキンシップ激しめなので、美海が事あるごとにヤキモチを焼いて頬を膨らませていた。かわいくもあるのだが、こうも毎回だと疲れてしまうのも事実だ。


「ははっ、変化というものは往々にして疲れるものだからな」


 司書は軽く笑って、俺に同意の言葉を投げかけてくる。


 ん? 変化?


 司書の口振りはまるで俺と聖納が別れたことを知っているかのようだった。


 美海か、聖納か、どちらかが喋ったのか?


「……もしかして、2人のどちらかから聞きました?」


 俺の問いに、司書がニヤリと笑う。


 あぁ、聞いているのね。俺がわざわざ濁した甲斐もないな。


「誰とは言わないが、話は聞かせてもらったよ」


 内緒話と言わんばかりに、司書は人差し指を唇に添えてにんまりとする。


 司書って意外と笑顔のパターンが多いな。


 そんなくだらない感想を抱きつつ、司書に隠すこともなくなったので本音ベースで話すことにした。


「ならまあ、話が早いですね」


「私から言わせてもらえれば、結局、あまり変わらんな」


「ですよね」


 あまり変わらない……か……。


 周りが当然抱くであろう感想を言ってもらえて、俺はなんとなく残念に思うよりも安心でホッと胸を撫で下ろした。


 それは裏を返せば、聖納がまだ俺の彼女として通っているし、男子たちへの抑止力にもなっているのだと確かめられた。


「むしろ、聖納ちゃんが少年や美海ちゃんに気兼ねをしなくなった分、籠から飛び出た鳥のように自由にしているようにも見えるな」


 籠から出た鳥……ね。


 籠が何を指しているかは解釈の余地もあるが、少なくとも聖納が今までより自由な感じになっていることは俺も同意だ。


「やっぱり、そう思いますか。籠から出た鳥なら大空へ消えて行ってしまうような気もしますけど」


 ただし、思ったよりもこの自由になった鳥である聖納は俺の周りから離れようともせずに一緒にいてくれる。


 さらにはいつも嬉しそうに何気ない話も含めて話しかけてくれるのだから、俺もなんだかんだで嬉しくなっていた。


「いやいや、籠がなくとも好きな場所には留まるものさ。今までと別の形、少年との唯一無二の特別な関係、それが聖納ちゃんの気持ちを強く大きく逞しくしているのかもしれん」


 強く、大きく、逞しく。


 少しでも聖納のためになっているなら本望でもある。


「元々、友だちなら別れることもないし、安心だと思いますけどね」


「いやいや、友だちだって疎遠になるものさ」


「そうですかね?」


「事実、私もあの頃の友人たちと今でも繋がっているかといえば、やり取りすら片手で収まるくらいの人数しかないし、そのやり取りだって極々稀なものさ。それぞれがそれぞれの道を歩み始めるとどうしてもそうなるからな」


 それぞれの道と言われてドキッとする。


 俺と聖納は理系クラスへの進級で、美海だけが文系クラスへの進級だ。


 今はまだ、クラスが違えども同じ高校だから一緒にいられる。


 だけど、大学生になったら?


 そのとき、俺たちはそれぞれの道を歩みつつも寄り添っていられるのだろうか。


「司書さんって、友だち、いたんですね」


 そんな不安を知られたくなくて、俺は司書に軽口を叩いてみた。


 司書は目を少し大きめに開いてから、いつも以上に口の端を上げている。


 司書の口元はこんなにも笑顔なのに、目が笑っていないだけでその笑顔が偽りだとすぐに分かった。


「……はっはっは。さて、美海ちゃんを嫉妬で狂わせちゃおうかな」


 マジかよ!?


 美海にないことばかり吹き込むんじゃないだろうな!?


「冗談ですよ! なんてことしようとするんですか! いや、ほんと、ごめんなさい!」


 俺はキッと睨んだ後に、大人しくうな垂れるように頭を垂れた。


 ちらっと見てみると、司書は溜飲が下がったのかいつも通りのニマニマニマっとした表情に戻っている。


「それはともかく、私は聖納ちゃんを見誤っていたようだ」


 その言葉とともに、司書は一転して眉間に少し皺を寄せた難しい顔も見せてくる。


「聖納を見誤る?」


 聖納を見誤るとはどういうことだろうか。


 司書は出会った当初に聖納から何を感じたのだろうか。


 俺の思いが通じたのか、司書がやれやれと言った様子で口を開く。


「2人から二股の話が出たとき、てっきり、聖納ちゃんは少年か美海ちゃんかに何か仄暗く思うところがあったのかと思っていたよ」


 仄暗くという表現は、むしろ美海の罪悪感の方が近いと思った。


 今でも美海の心の中には、その罪悪感が拭いきれずに横たわっているような節も見受けられる。


「仄暗く……なるほど……」


 そういう意味でも最近の聖納は、美海の罪悪感を薄れさせるためにわざと美海の前で過激なスキンシップを図っているような気さえもしていた。


「わざわざ表立って恋人になった2人に割って入るわけだからな。そう、最初は単なる邪魔をしたいだけだと勘違いしていた」


 あぁ、それで、司書は二股を容認していたのか。


 単なる邪魔程度なら問題ないだろう、と。


「聖納はそこまでイジワルじゃないですよ」


 ただし、聖納へのその評価は納得しかねた。


 司書は手をぷらぷらとさせて、「分かっている」と言外に伝えてくる。


「そう。だから、私もまだまだ人を見る目がないなと思ったよ。聖納ちゃんは狡猾かと思えば存外不器用で、美海ちゃんを大切な友だちだと思っているし、おそらく美海ちゃんよりも少年のことを愛していると理解したよ」


「……そうですね」


 俺は静かに肯いた。


 愛するが故に少し離れた位置に収まる。


 愛ってのは難しいな。


「ともすれば、今回の長い一幕は聖納ちゃんの一人勝ちとも言えるな」


「俺もそう思います」


 聖納は特別な友だちとしてこれからも仲良くしていきたい。


 そう願えば願うほど、下手すると前よりも聖納のことを考えているなと気付かされる。


 司書が一人勝ちというのも無理はないな。


「がんばれ、少年。まだまだ先は長いぞ」


「がんばりますよ」


 この「がんばれ」と「がんばる」の乖離がどの程度あるのかは分からない。


 だけど、一度決めた以上、なんとかやり通そうと思っている。


「…………」

「…………」


 しかし……司書が今日は終始真面目だな?


 思わず、俺は司書の顔をジッと見ていた。


 それに気付いた司書が余裕のある大人のお姉さんとばかりに、俺の視線にふっと笑う。


「どうした?」


 意図せずに身構えてしまった。


 こんな清らかな感じで終わるわけがない。


 司書はキレイめな感じのお姉さんだが、下ネタが好きでいつも容赦なくぶっ込んでくるのだ。


「いや、いつもの下ネタがないな、と」


 下ネタがないとなると、思った以上に拍子抜けをしてしまう。


 だが、俺の言葉によって、要らぬものを叩き起こしてしまったようだ。


「おっと、少年も欲しがりさんだな。大丈夫、美海ちゃんと聖納ちゃんが来てからするに決まっているだろ?」


 2人の前でそんなことされてたまるかあああああっ!


「そんなこと決めないでください! やめてくださいよ!? 後が大変なんですからね!?」


 その後、美海と聖納の部活が終わるまで、俺は司書と他愛もない話で時折からかわれながらも時間を潰すのだった。

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