4-17. 2月……ほんとによかった
簡単な人物紹介
金澤 仁志:本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。
能々市 美海:ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。
津旗 聖納:ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。
木曜日、学年末テストが始まる前夜。
今回はテスト初日が金曜日ということで、今日の勉強配分が絞れて楽だった。
とはいえ、数学2種類が一度にやってくるというハードモードを乗り切らないといけないため、余裕があるわけでもない。
時間は11時を過ぎており、テストに備えて眠った方がいいかと考える頃合いに差し掛かっていた。
とりあえず、一旦、休憩にしよう。
俺は保温マグカップに入れていた紅茶を一口含んだ。まだまだ温かく、ホッと一息つける感じで少しだけ気が緩む。
「ふぅ……案外気にならないものだな」
一息ついて頭に過ぎるのは聖納のことだ。
テスト最終日、つまり、テストがすべて終わった日の放課後に聖納と会う。
その日に俺は聖納に恋人としての別れを告げ、代わりに「親友になろう」という提案をするつもりだ。
友だちよりも親友の方が特別な関係がするし、同じ理系進学だからお互いに頼れるような関係になれるだろうし、なんだかんだで話のテンポや話す内容も俺と聖納の相性が良いから親友としても申し分がないと思う。
唯一無二の異性の親友。
そういう立ち位置があってもいいじゃないか。
もちろん、親友だから叡智なことはしない。当たり前だが、セフ……げふん、明言は脳内であっても避けるけども、とりあえず、そういう友だちじゃないからだ。
でも、親友として2人で遊ぶくらいならいいんじゃないだろうか。まあ、それをデートだと言われてしまうと、そう頻繁にできそうにない難しい部分もあるけど、美海に浮気を疑われるのも嫌だしな。
ただ聖納と疎遠にならないように気を付けないといけない。
俺は健全な形で、聖納が自分を見失わないように、聖納が心から安心できるように、そんな関係や存在でありたい。
「だけど、テストの最終日なんて、聖納もイジワルだよな」
1学期の期末テスト最終日。
そこで俺が聖納をフッて、美海と付き合って、美海と聖納が二股恋愛の密約を交わした。
それと似たような状況をもう一度、学年末テストでさせるのだから。
今回、改めて俺は聖納をフって、二股恋愛を解消する。
テスト最終日に始まり、テスト最終日に終わる。
なんだか青春っちゃ青春なのかとも思う。
「ん?」
ふと、スマホに目をやると、美海から個人リンクの通知がきた。
『みなみ:よかった。ほんとによかった……』
美海には先日から「聖納が美海を恨んでいないこと」や「聖納が美海の罪悪感を利用してしまって申し訳なさそうにしていたこと」などをきちんと伝えた。
何度も何度も確認されたので、何度も何度も丁寧に伝えた。
今日もそんなやり取りを続けていたものの、しばらく通知が来なかったので勉強に集中できていたが、このタイミングで美海がようやく安堵しているメッセージを送ってきた。
長い、長い説得だったな。
「でもこれで、美海の罪悪感はある程度解消されたかな」
変われる。
俺たちはちょっとずつだけど変わっていける。
過去のできごとで絡まった縺れをゆっくりとでも解いていける。
1つ、1つ、美海を知り、聖納を知り、自分を知って、繋ぎ直していく。
『仁志:だからもう、美海は気にしなくていいんだよ』
念押しの一言。これがどれだけ効力を持つかは分からないけど、言って損することはない。
俺だけの力じゃ無理だけど、俺と美海と聖納がお互いに歩み寄れるならそれぞれの重荷を軽くすることもできる。
まあ、3人寄れば文殊の知恵とも言うしな。
『みなみ:うん、せーちゃんに聞いてくれてありがとうね』
美海はいくつものスタンプで嬉しさと感謝を表現していた。
『仁志:どういたしまして』
俺もメッセージの後にOKのスタンプも追加しておく。
『みなみ:ひーくん、大好き』
『仁志:ありがとう、俺も美海のこと大好きだよ』
『みなみ:今までよりも素直に大好きって言える感じがすごく嬉しい』
罪悪感の薄れからか、今まで以上に俺の方を見るようになったと言いたげな感じだ。その後に美海から別の嬉しそうなスタンプ、頬を赤らめた感じのスタンプとハートのスタンプが送られてきた。
『仁志:そう素直に大好きとか言われると、なんだか照れるじゃないか』
俺も素直にそう思ったことを伝えた。
今までもそうしてきたはずだけど、やっぱりなんか変わってきている。
それから少しばかりの雑談を交えた後に、美海が眠そうなスタンプを送ってきた。
お眠な美海が容易に想像できて、かわいい。
『みなみ:うゆ、夜遅くにごめんね。お互いにテストがんばろうね』
美海はどうも「うん」と打ちたかったところを「うゆ」と書いているあたり、メッセージまでも口がもにゅもにゅしてそうな感じになっているな。
もうちょっとやり取りしたい気持ちもあるけど、寝かしてあげないとな。
『仁志:こちらこそ夜遅くまで付き合ってくれてありがとうな。テスト、お互いがんばろうな。おやすみ』
『みなみ:おやすみ』
俺がそう返すと、美海はすぐさま返事とおやすみスタンプを押した。
俺もスタンプを返したけれど既読が付かないあたり、美海はもう寝ているのだろう。
さて、テスト勉強をがんばるか、それともさっさと寝て脳を休ませるか。
「体調管理のためにも寝るか」
結局、出した答えは勉強を終えて寝ることだった。
寝不足は頭も働かないし、体調不良にも繋がるからな。
その答えを自信満々に引っ提げて、俺はベッドの中に潜り込んだ。
「聖納……いい感じにまとまるといいんだが……」
寝る前に再び考える聖納のこと。
先日から毎晩寝る前、これまでの聖納との思い出が流れては消えて流れては消えてを繰り返して、名残惜しむような、もしくは、次のステップへ促すような雰囲気を出してくる。
聖納とこれからも良い関係でありたい。
俺はそう来る日の結末に思いを馳せるのだった。
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