1-11. 5月……勉強しよ?(3/4)
簡単な人物紹介
金澤 仁志:本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。
能々市 美海:ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。
美海が無防備で寝ている。司書は図書準備室で作業をしている。図書室の中に他の生徒は誰もいない。
実質、俺と眠っている美海の2人きりのようなものだ。
ごくり……。
いや、なんで俺、生唾飲み込んでるんだよ。
唯一、ガラスの扉から俺たちのことは見える。しかし、夕方遅くで人も疎らなこの状況で見られる可能性は低いし、帰ろうとしている生徒が下駄箱と逆側にある図書室のガラス扉の方をわざわざ見るだろうか。
「って、見られる可能性って何だよ!?」
俺は図書室ということもあって、それに、美海も寝ているということもあって、小さな声で自分にツッコミを入れていた。というか、もうセルフツッコミでもしないといっぱいいっぱいでもたなかった。
「んぅ……」
美海の小さな口から漏れてきたちょっとこう……見た目に反して少しやらしいというか……意外とちょっと大人びた感じの艶めかしいというか、今の俺の語彙力だとなんとも言えない感じの声に、ビクッと俺の身体が想像以上にブレた。
起こそう。
マジでもたない。
「おい、み——」
ここで脳内に、見るからに悪魔の姿をした俺が現れた。ほぼ全身黒色でコウモリの羽が生えていて、ビョンビョンとバネ感のある2本のツノがあって、まあ、分かりやすいくらいにステレオタイプに悪魔な感じである。
最初にこの悪魔のイメージ作ったの誰なんだろうな、ってくらいに浸透している感じの悪魔のイメージだ。
『誰も見ていないんだから、その柔らかそうなほっぺたをつつくとか、なで心地が抜群そうな頭をなでなでするとか、ほどよくすっぽりと収まりそうな小さな身体にそっと抱きつくくらいはしていいんじゃないか?』
さすが悪魔だ。悪魔的な発想を俺に呟いてくる。
特に、若干回りくどい言い回しが悪いことを考えているときの俺っぽい。
しかし、いくらなんでも、ほっぺたをつついたり、頭をなでなでしたり、抱きついたりとかできるわけないだろうが。だいたい、美海はがっつかれるのが怖いって言っていたんだぞ。寝ている無防備なときにそんなことなんてしたら、2度と話しすらしてくれなくなるぞ。
『そんなこと言って、美海の反応が思ったよりもガツガツOK感出しているから、ちょっとくらいいいんじゃないかって、お前も薄々思っているだろう?』
……さすが脳内悪魔だ。俺の考えはお見通しである。
しかし、ここで負けるわけにはいかない。
一時の迷いで美海の告白をフイにしてしまったんだ。だから、もう、一時の欲望で美海からの信頼をフイにすることはできないんだ。
すると、ここで俺の固い意志に応じたのか、天使が現れた。
その姿は間違いなく美海だった。これまたステレオタイプな天使で、白いローブ? いや、美海の場合、ロングワンピース? っぽい感じもするが、それと純白の小さな羽、頭の上に黄色い天使の輪っかがついていた。
天使の笑顔がとても眩しく、そんな天使がゆっくりと口を開いた。
その清らかな感じで、悪魔の欲望を打ち砕いてくれ!
『ちゅーしちゃおうよ!』
……はい?
『ちゅーだよ、ちゅー! 分からない? キス! ささっと! 誰も見てないうちに! ウチにキス!』
おおおおおいっ! 待って、天使の仕事をして!? おかしいよな!? なんで悪魔より要求というか欲求というかが上乗せされているわけ!?
『ほら、ウチが口をもにゅもにゅして、柔らかそうで良くない?』
あ、確かに……じゃねえ! 誰か、天使を止めろおおおおおっ! 天使のようで悪魔じゃねえか! 笑顔が眩しくて無邪気だから余計にたちが悪いわ!
『え? じゃあ、セッ——』
言わせねえよおおおおおっ!? 悪魔あああああっ! いろいろ順番すっ飛ばすなよおおおおおっ!
だいたい、ここ学校だぞ、おい! 神聖なる学び舎よ? 真・性なる学び舎じゃないんだぞ!? てか、え? とか、じゃあとか、じゃないんだよ! なんでさらに上乗せしたんだよ!? 天使の要求につられて悪魔のプライド見せようとするなよ!
『勝負だ!』
『勝負だ!』
仲良しかよ! つうか、天使と悪魔の争いはポーカーじゃねえんだよ! しかも天使も悪魔も同じ方向の要求で張り合うな! どっちもセッ……を掛け金にして勝負を仕掛けていることになるじゃねえか!? 結託するな! 天使は逆サイドだろおおおおおっ! 頼むから仕事してえええええっ!
……ごめん、もうツッコミ入れ続けていないと精神が持たないんだわ。いや、本当に。
『あのさ……仁志くんはそう言うけどさ……結局、天使にそう言わせているのは仁志くん本人やよね?』
あ、ああ、いえ、はい、まあ、その……大変、申し訳、ございません!
美海を穢すような真似をして、本当に、申し訳、ないです!
……いや、待てい。なんでここにきて、天使らしい説教入れてくるの? 自省もしてもらえますか?
『うむ、素直でよろしい。そういう仁志くんのこと、ウチ、ガツガツしているって思ってないし、いいって思うよ? さて、悪魔くん、帰ろっか?』
『あぁ……』
仲良しかよ!
結局、俺は脳内の天使と悪魔に振り回された挙句、よく分からない感じで帰っていく。俺なんてまだ美海と一緒に帰ったことないぞ?
とにもかくにも、脳内でツッコミをし過ぎたおかげで冷静さを取り戻した。
起こそう。
また天使と悪魔が来る前に。
「おい、美海。寝ていると風邪ひくぞ? 夜眠れなくなるぞ? 変な姿勢で寝ると身体が痛くなるぞ? おーい? 声で起きないと肩とか触ることになるぞー? いいのかー? おーい? 美海? おーい?」
俺はまだ美海に触れず、故に揺り起こすこともできず、ひたすら起きるように声を掛けるしかしなかった。
ここでさらに予想外のことが起きてしまう。
「ん-? んふぅ……んにゅ……」
「へ?」
美海が寝ぼけてるのか、起き上がってこちらを向いたかと思えば、急に俺の頭を抱えるようにぎゅっと抱きしめてしまったのだ。
俺は、頭を美海にぎゅっと、抱きしめられてしまったのだ!
大事なことなので2回(以下略。
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