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【完結】今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 3学期

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4-15. 2月……私だって好きなんですよ?(1/2)

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

 美海からようやく二股を許した謎を説明してもらった翌日。


 昼休みの1階ミニホールはやはり購買のパンのラッシュが終わると静かになる。


 ちょうど俺は昼食を聖納とともにする約束をしていたため、この機会に聖納にも二股のことについて話を聞こうとした。


 もちろん、二股の謎は解けた。美海は二股が間違っていたと自ら認めてくれている。


 だけど、それで満足してしまって、聖納をおいそれとフるわけにはいかない。聖納が二股関係でなくとも救われなければ、俺たちのこの関係が本当の意味での解決にはならないからだ。


「俺はもう逃げられない」


 そのためには、聖納からもきちんと二股についてどう思っているかを聞かないといけない。その上で美海も聖納も認めるような解決をしないといけない。都合の良い話をしていると自覚している。


 だけど、たとえ俺は欲張りだと言われようともその可能性がある限り、美海も聖納も極力傷つけたくない。


「仁志くん!」


 聖納が俺を見つけて、ぶんぶんと手を振りながら、ぶるんぶるんと胸も揺らしながら、逆の手には風呂敷に包まれたいつもの三段重を持っている。もはや、俺も驚かないし、夏ごろの1人1つの三段重でもなくなって、2人で1つの三段重にしているから腹が苦しくなることもない。


 これはこれで聖納とのやり取りを重ねた結果の1つでもある。だから、聖納は話して分からない相手じゃないはずだ。


「聖納、今日も弁当を作ってくれてありがとうな」


 俺に近付くと、聖納の胸はようやく落ち着いてきたが、その代わりに聖納の息がほどよく弾んでいる。ちょっと来るのが遅れていたから何かあって遅れたのか、教室から急いで来てくれたようだ。


「いえ、私が楽しみなだけです。だって、今日は一緒にお昼を食べる約束ですから!」


 聖納は俺に愛情を注ぎ続けている。


 少し重たく感じることもなくはないが、どうしても俺は非モテだから嬉しくなってしまう。


 こんなにも愛してくれている聖納に別れを告げるのであれば、俺にできることを最大限にしてあげたい。そんな矛盾ばかりの意気込みが俺の原動力になっている。


 俺はひとまず聖納とともに隣り合うように座って、ローテーブルに三段重を広げてもらう。


「相変わらず豪勢だな」


 基本的にご飯と卵焼き、鶏のから揚げはほぼ毎回あって、それ以外に野菜やキノコ類、魚介に肉などをバランスよく栄養も考えてつくってきてくれる。


 ただし、分量が多すぎることから、どうもカロリー計算だけは度外視なようだが。


「んふふ……胃袋をがっちり掴みたいですから!」


 これは聖納の常套句だ。聖納は料理や菓子作りが得意だから、そこで美海との差をつけようとはりきってご飯を作ってくる。


 もちろん、聖納の自信に見合った美味しい料理で、これが食べられなくなると考えるとちょっとだけ後ろ髪を引かれる思いに駆られる。


「胃袋は完全に掴まれている気がするな」


 ……いや、ご飯だけじゃないけどな。


 それだけだと俺、ただのひどいやつだし。


 そりゃ、聖納との付き合いも長くなって、決心を簡単に揺らがすほどの情や未練だってある。


 でも、やっぱり違うんだ。


 今までずっと考えてきたんだ。


「ふふっ……嬉しいです。仁志くん、あーん」


 これもいつもの流れだ。


 聖納がまず俺の大好物である鶏のから揚げを俺の口の中に放り込んでくれる。


 これをしないと聖納がムスッとしてすごく気まずくなるし、気まずくなるだけならまだいいが、あの手この手で叡智なことをさせられそうになるのでそれを阻止する意味でも断れないのである。


「あーん」


 聖納が周りを全然気にしないこともあってか、俺ももはや慣れたもので周りに誰がいようと「あーん」だけは即座に実行できるようになった。むしろ、今ではこれがないと始まった感じがしないまである。


「美味しいですか?」


「あぁ、美味しいよ。聖納もあーん」


 俺が食べたら、次は交代だ。俺は卵焼きを箸でつまんで、聖納の精一杯に広げた口に放り込む。


 聖納の口って、ご飯待ちの舌の動きとか、なんだか叡智なんだよなあ。前髪で目が隠れているから、目隠しをして口を広げているようにも見えるし、なおさら叡智に見える。


「あーん……仁志くんに食べさせてもらったらいつもの何倍も美味しいです」


「それはよかった」


 その後、あーんを数回繰り返すと聖納も満足して、ようやくお互いに自分の箸で食べ始めるようになる。


 すると、少しずつ会話が始まる。


 聖納は美海と違って、無言状態が長く続いても大丈夫なようで、黙々と一緒にいてくれることもある。その静けさが心地良いこともある。


 聖納はいろいろと属性やギャップを持っていて、間違いなく魅力的な女の子だ。


 考えれば考えるほど、自分は未練がましいと思う。


 聖納を選ぶ世界線はあるのだろうか、なんて考えることだってあった。


 だけど、少なくともこの世界線だと、俺は美海を選ぶことになる。


「先日のチョコも完食してくださったそうですね」


 そんなことで頭をぐるぐると回転させていたら、聖納が珍しく話しかけてきた。


 まあ、自分の贈った本命チョコを完食ともなれば、話題に上がることは当たり前か。


 俺は聖納の言葉に頷いた。


「あぁ、なんとか……1週間はかけたけど……」


 ええ、本当に、本当に時間をかけて、毎日少しずつ食べまして、先日ようやく食べきりました。


 しばらくチョコは要らないかなって思ったくらいだ。


「多すぎましたよね……ごめんなさい……」


「いや、聖納の愛が感じられて嬉しかったよ」


 今さら分量の話で謝られても何とも言いようがないので、それよりも俺はその当時に思ったことを率直に伝えた。


 あのとき、聖納の愛の重さはこれくらいかと本気で思ったから。


「ありがとうございます」


 聖納は口の中の物を食べきってから、俺に向かって嬉しそうに口元を綻ばせる。


 何があっても、この笑顔を絶やさぬようにしたい。


 そう思うと俺の顔が少し強張ってしまう。


 その後も少しの雑談を交えながら、三段重の中身を少しずつ2人のお腹の中に収めていく。だいたいの比率だが、あっても半々、普段だと聖納が7割がた食べてくれる。3割でも重箱1段分だから普通のお弁当と同じくらいだ。聖納は2段分食べてもケロっとしているから凄まじい。


 怒られることを承知で考えると、脳と胸に栄養が偏っている気がする。


「ごちそうさま」


「おそまつさまでした」


 俺が最後の一口を食べ終えると、聖納は三段重を慣れた手つきで風呂敷に包む。


 さて、昼休みはまだまだある。本題に、二股の経緯の話を聖納に切り出すか。いや、でも、もう一息つけたいな。だったら、いちごなオ・レでも飲むか。そういう流れで俺はちょっとだけ先延ばしにする。


「なあ、聖納、食後のいちごなオ・レでも——」


「それよりも話したいことがあるんじゃないですか?」


 しかし、聖納は俺の先延ばしを許さなかった。


 いつもそうだが、まるで心の中を直接覗かれているかのように、俺が何をしたいかとか何かを言いたいかとかが気付かれている。


「……気付いていたのか」


「もちろん。仁志くんの雰囲気から察せますから」


 この自信だ。


 聖納は読みを外さない。俺に対しては特に。


「聖納には絶対嘘を吐けないな」


「別に嘘を吐いてもいいですけどバレますね」


 バレる嘘を吐くわけもあるまい。


 俺は両手を軽く挙げて降参のポーズをとった。


「参った、参った」


 ちらっと聖納を見てみると、聖納はくすくすと声を殺しきれずに笑っている。


「うふふ……でも、話の内容までは完全に分かるわけじゃないですよ? まあ、察することはできますけど」


 内容まで察せられたらお手上げだ。そうじゃないと信じたい。


「じゃあ、隠しごとはなしだ。美海から二股を許可した経緯を聞いた」


「……そうですか」


 一瞬の間。しかし、狼狽えている様子もない。


 この話がされることをずっと覚悟していたかのようだ。


「美海は聖納のことを心配していた」


「そうみたいですね」


 ゆっくりと外堀を埋めるように、ゆっくりと美海から聞いた話を小出しにする。


 ただし、核心は言わないつもりだった。


 あくまで聖納の話を聞きたいからだ。


「聖納が俺のことを好きだから——」


「それよりも、私の傷に美海ちゃんが関係しているってことですよね?」


 俺ははぐらかそうとしていたことをバシッと言われてしまって、情けなくも一瞬どころかしばらく黙り込んでしまった。


「……もしかして、聖納はそれを知っていて……?」


「そうですよ、当たり前じゃないですか。仁志くんのこと、私だって好きなんですよ?」


 この時ほど、聖納の笑みが計算高いものに見えたことは今までなかった。

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