4-1. 1月……初詣に行こ!(1/2)
簡単な人物紹介
金澤 仁志:本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。
能々市 美海:ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。
津旗 聖納:ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。
年始。つまり、正月。俺は両親と妹の彩が戻ってくるのを待たずに家族とじゃなくて、美海や聖納と一緒に初詣に行くことになった。初詣って新しい1年の最初の1歩と言う感じでなんだか気持ち的には上がっているし楽しい感じもするよな。
初詣も最初こそ三が日に行こうという話を2人としていたが、あいにくの雨予報で、実際に雨だったこともあって今日4日に行くことにした。待ったおかげで今日はどうにか晴れというか曇りだ。
バスを待ちながら、クリスマスパーティー後の年末のことを思い出す。
年末はほぼ毎日、美海か聖納か、もしくは2人ともが俺の家に遊びに来てくれた。3人でいるときは健全な感じで収まっていたが、どちらかと2人きりになると2人ともそういう雰囲気になるから叡智なことに至ってしまう。
その度に思う。
2人が俺の1番になりたいと言ってくれていて、俺はそんな2人を傷付けないためにと思っていたが、2人ともと深まれば深まるほど2人ともを傷付けていることになるんじゃないかって。そうすると、俺もまた疲弊して苛まれて、結果的に全員が辛くなっているような気もする。
「俺が男らしく選ぶしかないよな。だけど……っと、バスが来たな」
幸いにして、バスが混んでいない。俺はさっさとバスに乗って、何人かの知り合いを見つけて挨拶を交わしつつ、空いていた最後部の座席に座る。最後部は5人くらい座れるようになっているから、この後に乗ってくる美海や聖納と一緒に座るのにもちょうどいい。
バスが走り出すと、考えていたものが戻ってくる。
この前、自分の気持ちははっきりしてしまった。いや、元からはっきりしていたはずなんだ。だから、俺が選ぶだけならほぼほぼ決まっている。
そう、なんだけど、それだけじゃダメなんだ。
そもそも、この関係が始まったきっかけをきちんと知った上で解決したい気もしている。ただし、なんだかんだでまだ教えてもらえていない。
「ひーくん、おはよ!」
美海の元気な声が目の前で聞こえてきた。
美海は小学生と間違われるくらいに断トツに小さくて、腰よりちょい上くらいまで伸びている長い栗色の髪の毛やくりくりっとした大きな目と焦げ茶の瞳とかが印象的で、見た目がかわいい小動物的な感じの女の子だ。顔立ちもあどけなくてちょっと幼さも感じさせるけど、ふとした表情とかはどこか大人びているときもある。
「おっ、美海、おはよう」
俺は驚いて出しそうになった声を飲み込んで平然とした感じで美海に挨拶を返す。ちらっと美海を見ると、ベージュのロングダッフルコートに、美海にしては珍しくロングスカートだ。いつも足元が寒そうな美海が心配だったので、ふわもこなアイボリーのロングスカートを着込んで温かそうなので安心する。
しかし、俺が考え込んでいる間に、バスが美海の家から一番近いバス停に停まっていたのか。
「んふー」
俺が美海を窓際の方に誘導して、バスが発車する前には美海が手に持っていた小さな茶色のバッグを膝の上に乗せてから頭を俺の肩にそっとくっつけてきた。
さっそく甘えたいモードっぽい。
「よしよし」
美海の頭をポンポンと撫でると、美海が目を細めて気持ち良さそうな表情をしてくれるので、俺はなんだか小動物を撫でているような感覚になってくる。
「ひーくん、久々やね」
「あぁ……って、久々って言うほどか? 30日から三が日会わなかっただけだし、それに大晦日のカウントダウンも昨日の夜だってグループリンクで通話しただろ?」
昨日も今日の初詣が楽しみだと言って、3人とも興奮冷めやらぬ感じで話していた。
なので、正直、久々という感じがしない。なんだったら、2学期に喧嘩して音信不通になっていた時の方がずっと長かったし、そっちの方が久々感もあるだろう。
「むー……久々って思ったら久々やよ! こうやって直接お話できるんも嬉しいもん! そういうとこ冷めてるんは寂しいな」
俺の何気ない一言が不満だったようで、美海はむすっとして、頬を軽く振らませながらジト目の上目遣いでじーっとこっちを見つめてくる。
かわいい。怒っていてもかわいいよな。美海のほっぺたをつつきたい衝動に駆られながらもこれ以上怒らせてもこの後が大変なので素直に謝っておく。
「ごめん、ごめん。俺も美海と会えて嬉しいよ」
「よろしい! あ、せーちゃん」
「聖納だな」
すっかり機嫌の直った美海が腕を組みながら外を眺めていたら、不意にバス停に停まるタイミングで聖納を見つけたようだ。俺も聖納の姿を見つけて、聖納がこちらに手を振っていたので手を振り返す。
「仁志くん、美海ちゃん、おはようございます」
聖納は一言で言えば、性癖になる属性を盛り盛り爆盛り女子だ。
顔の上半分を隠す黒々とした前髪、目隠れ状態でちらっと見える眼鏡の下側の青い縁、着込んでいる服の下に隠しきれない爆盛りの大きすぎる胸部、大人しくて俺を甘やかすような母性や落ち着いた雰囲気、ただし一旦暴走すると無敵列車と化してしまう危うさなどなど、とかく、属性が多い印象の女の子だ。
「おはよう、聖納」
バスも座席がようやく埋まり始めるくらいに人が乗ってきた。その中で聖納が俺たちの方へとすぐさま近寄ってくる。
聖納は紺のショート丈のダッフルコートと、デニムのロングスカートだ。黒系の小さなバッグを身体の前でちょこんとした感じで持っているのがなんとも聖納らしいな。
2人ともオシャレだよな。俺も紺のダッフルコートだけど、穿き慣れたジーンズで無難って感じだしな。
「おはよ、せーちゃん、窓側座る? 代わろうか?」
「美海ちゃん、ありがとうございます。お願いできますか?」
聖納は男性が苦手で、家族を除けば俺くらいにしか話すことすらできない。先生とも話すのに難儀していると聞いたことがあるので、よほどだと思う。
そのため、これから誰が乗ってくるか分からない通路側よりも俺の隣になる窓側の方が安全ということだ。
というわけで、俺と美海が一旦ずれて、聖納が窓側に座った後に俺が隣に座って、聖納と反対側の俺の隣に美海が座る。両手に花とはまさにこういうことだろう。知り合いの同級生は俺を羨ましそうに凝視してくるので、ほんのちょっとだけ得意げになってしまう。
と思っていたら、聖納が腕を組むように絡めてきて、さらには俺の手を自分の太ももあたりに誘導して、自分の手を俺の太ももに置いてくる。
「聖納……?」
「んふふ……」
俺も聖納のスカート越しだし、聖納も俺のズボン越しではあるんだが、聖納の方は手つきもいやらしくて、俺を興奮させる気満々だ。
「せーちゃん、ちょ、ちょっと……」
「聖納……これはちょっと……ギリギリアウトじゃないか?」
美海も負けじと俺と腕組みまではするけど、聖納のように手をどうにかしようという感じまではないし、むしろ聖納の行動を俺と一緒に抑えようとしてくれるのでありがたい。
外はマズいよ、外は。いや、家でもいつもこれだと困るが?
「だって、仁志くん、今日まで全然会ってくれないから。家に行きたいって言ってもダメって言われてしまいましたし」
聖納がこちらをまじまじと見つめているような気がする。前髪のせいで聖納の目を見ることがほとんどできないが、前に見た前髪の奥は綺麗な顔立ちで、ただし、額やこめかみあたりに消えきれない傷跡が残っているために本人が隠したがっている。
聖納は艶っぽい。美海がかわいいなら、聖納は綺麗だ。
それと胸もでかいし、叡智なこともすごいし上手いし、俺を喜ばすためにいろいろとしてくれる献身的な部分も男心をくすぐってくる。
「うっ……三が日は2人とも、家で家族と過ごすって決めたろ?」
さすがに年末のほとんどを俺と過ごした結果、2人とも年始くらいは家族と過ごしなさいと釘を刺されたようだ。まあ、俺も親の実家への帰省以外はいつも寝正月だし、三が日くらいは家で1人になってゆっくりしたい気持ちも大きかった。
実際、宿題を消化するのに1人の時間は助かったよな。
「そうですけど、今日、仁志くんのご家族が戻ってくるって話を聞いたから……姫始めの機会を逃しちゃいましたし」
「ぶふっ!?」
俺は聖納の言葉を聞いた後に周りを見渡し、誰にもその言葉を聞かれていないことに安堵した。
まさかいきなり「姫始め」なんて言葉を聞くことになるとは思わなかった。ってか、なんで知っているんだよ、そんな単語。聖納は学校の勉強もすごいが、さまざまなことへの知識量が半端ない。
「ひめ……はじめ?」
そう、美海の、きょとんとした感じのくらいがちょうどいいと思う。
美海は無知というよりは無垢って感じでかわいい。
そう言う意味では、かわいらしくて純粋無垢な美海と、綺麗で妖艶な聖納の2人はバランスがいいよな。
……自分で言っておいてなんだが、バランスってなんだよ、バランスって。
「あとで説明するからその言葉を外で使わないでくれ」
とりあえず、美海は知らずに「姫始め」という言葉を連呼しそうなので、釘を刺しておかないといけない。もちろん、美海もバカじゃないから釘を刺した時点でいろいろと察して口をそっと塞ぐ動作をする。
「あ、あぁ……そういう系なんね」
「聖納も……いいな? もう外で言わないでくれ」
「はーい。仁志くんを本気で困らせるようなことはしませんから」
「……ありがとう」
聖納も俺が本当に困ることはしない。
それはつまるところ、俺に拒絶されることを恐れているようにも見える。そういう感じで聖納をコントロールしたいわけじゃないが、俺だって聖人君子なわけじゃないので難しい。
まあ、聖納は過去にいろいろあったから、ちょっとしたことで壊れそうな印象もあって、接し方で気を付けなきゃいけなさそうな雰囲気もある。
「んふふ……ぎゅー」
「ウチも、ぎゅー」
俺の腕はすっかり2人の止まり木のようになって、ロクに動かせずにバスが目的地に着くまで2人に占領されたままだった。
考えていたこともとりあえず保留にしておこう。
やがて、街中の方へとバスが辿り着いて俺たちは降りた。
「着いたな」
「着きましたね」
「じゃ、初詣に行こ!」
俺は2人と手を繋いで目的の神社まで歩き始め、ふと、これがいつかどちらかの手だけと繋ぐことになるのかと頭を過ぎってしまうのだった。
ご覧くださりありがとうございました!
ここから第4章(最終章)の開始になります。
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