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今日も2人だけで話そ? ~彼女2人が公認の二股恋愛!?~  作者: 茉莉多 真遊人
1年生 2学期

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3-25. 12月……ちゃんと幸せにせえよ?

簡単な人物紹介

金澤(かなざわ) 仁志(ひとし):本作主人公。高身長、顔は普通よりちょい下。

能々市(ののいち) 美海(みなみ):ヒロインその1。低身長の小動物系女子。栗色の長髪持ち。

津旗(つばた) 聖納(せいな):ヒロインその2。胸部爆盛。黒髪で完全目隠れ、眼鏡あり。せーちゃん。

松藤(まっとう):仁志の友だち。バスケ部。美海のことが昔から好きで告白する。

 周りを巻き込んだちょっとした騒動を経た後に美海と仲直りして2週間ほど経った。その後に来たテスト週間や11月の期末テストも終わって、生徒だけでなく、教師も年末ムードという感じだ。


 もっとも、3年は目が血走っているんじゃないかってくらいに必死な人たちが多く、3年生周りは触れてはいけないレベルでピリピリしている。まあ、推薦か何かの人たちは11月くらいで決まるのか、余裕綽々といった様子で駄弁っている様子も窺えるので、12月にもなると悲喜こもごもという感じが如実に表れてくる。


 その中、俺は松藤に放課後直後に呼び出されて、松藤の教室へと向かっていた。


「おぉ、来たか。俺が部活行く前のギリギリやな」


「来たかって……いきなり呼び出しておいてそれはないだろ」


 聖納は……いないようだ。まあ、部活もあるからな。テスト週間やテスト期間中だと俺の方に来るしな。というか、先日のライバル宣言っぽいの以来、美海と聖納が俺の取り合いのようになっていて、嬉しいやら辛いやらの日々を送っている。おかげさまで司書にはイジられっぱなしだ。


 あ、乃美にもちゃんとお礼を言わないとな……。


 って、閑話休題。


 松藤も部活はあるはずだが、呼び出しをするってことはそこそこに重要なことなのだろう。松藤は俺の方を向いて、相変わらず開いているかどうか分からない糸目で俺の方を見ている。


「まあ、細かいことはええやろ。それにちょうど人もはけたとこで話しやすいしな」


「で、どうしたんだ?」


 手短に。単刀直入に。そう言外に俺は伝えるように、本題へとざっと入ろうとする。


 松藤は少しだけ驚いた様子の後に、ふっと笑った。


「……しっかりとフラれたわ。テストに響かんようにテスト最終日の放課後にな」


 松藤は両手を軽く挙げて、まるで降伏宣言のようだ。


「……そうか」


 そうか。美海は松藤をフッたのか。それも一歩間違えれば、俺がそうだったかもしれないと思うと安心も安堵もできない。


 ただ、薄氷を踏み抜かなかっただけだ。


 その後、少しばかりの沈黙が続いていたが、松藤が手をプラプラと振って口の端を上げているとも一文字にしているとも言えないくらいの位置で固定している。


 聖納、本当に、松藤の表情を読めるのか? それは才能だぞ、きっと。俺には読めん。


「まあ、正直半々どころか万が一くらいやったから、覚悟はできてたわ」


 ……万が一? 嘘だろ? 俺の方がむしろ分の悪い状況だと思っていたんだが。


「万が一? 告白を保留していたのに?」


 俺のその反応が予想外だとばかりに、松藤は軽く首を縦に振って何かに納得した様子で口元に指を当てている。


「あぁ……そうか。金澤はののちゃんの引き延ばし癖を知らんのか」


 思いも寄らない言葉が松藤の口から出てきて、俺はきっと訝しげな表情になっていただろう。


「引き延ばし癖?」


「本当に困ったことがあると押し黙って、時間が解決してくれると信じ込む癖と言ってもええな」


 松藤は頷いてから俺にも分かるように説明してくれた。


 松藤なりの俺への贖罪か、あるいは、まだ自分の方が俺よりも美海を知っているというマウントの一種か。


「ってことは?」


 いずれにしても、俺の知らない美海の一面は気になる。


「今回の場合やと、俺が自然に諦めるのを期待していたんやろなあ」


 ……本当か?


 告白を自然消滅させる?


 しかも、小学校から仲の良かった友だちのような相手に?


「そんなことしたら、松藤と美海の仲が悪くなるだろうに」


 松藤は俺の意見に同意しているようで首を縦に振る。


「まあ、ののちゃん、抜けてるところがあって、良い方にしか考えんから、良くて元通りの友だち、悪くて俺とちょっと疎遠になるって考えが……正直あるかないか……それすら微妙なとこやな」


 ……嘘だろ? 抜けているって言うレベルか、それ?


「それってさ……いや、まあ、俺もそういうことあるからあまり悪しざまに言うつもりもないけど……美海って案外……ちょっとだけど……残念なところがあるんだな」


 松藤は先ほどよりも強く肯く。


 ほかの人への悪口って仲良くする要素でもあるとは言うが、まさか、好きな女の子への悪口でそうなるとは思わなかった。


「あっはっは、せやなあ。やけどな、それでも惚れた弱みってやつで、今でもののちゃんを嫌いになれん自分も大概やと思うわ」


 フラれても好きか。


 切り替えられない弱さと見るか、一途に思える強さと見るか。


 少なくとも俺にはあまりない強さだと思った。


「でも、今回はしっかりと? はっきりと? きちんと? 美海にフラれたと?」


 ということで、少しだけ松藤の心を折りにかかる。


 もちろん、松藤は苦笑いに変わる。これくらい大きく変化すれば俺でも何とか分かるな。


「ぐっ……なんべんも言わすなや……まあな、正直、びっくりした。もうないかなって思ったけど、『これからも友だちでいてほしい』ってはっきりと言われたわ」


 まあ、そうだよな。


 友だちのままでって言うよな。


 それで結局、前のように話せなくて疎遠になることも多いというか普通にそうだけどな。


「そうか」


「お前や津旗さんと何かあったんやろ?」


 美海の心境の変化。


 あの3人で泣いて、心の中を少しだけでも吐露した一件が関係ないとは断定できない。


「まあ、ないと言ったら嘘になるな。それが行動のきっかけになったかは分からないけど」


 松藤の顔が曇る。段々と大きな変化なら分かるようになってきた。


 というか、意外と松藤って表情筋が豊かか?


「そりゃ、お前が津旗さんにも傾きかけているって状況じゃ変わらんわけにはいかんやろ。このままじゃ……小学校のときの二の舞になると気付いたんやろしな……」


「二の舞?」


「ののちゃんが二股されたときな、それを知ってからもはっきりと浮気相手と戦わんとなあなあにしてたんや。それに加えて、彼氏の奴にも『浮気なんてせんといてよ!』とかそういうのを全然言わんかったようやしな」


 美海のトラウマにもなっている小学校時代の彼氏の二股騒動。美海は……何もできなかったのか。


「そうだったのか」


 だから、自然消滅的な感じで若干諦めていたのか?


 一歩でも踏み出せば、よかったはずのことを……って、俺もそうか……。


「自分がちょっとがんばれば、あとは時間が解決すると思っていたんやろうけど、まあ、上手くいかんかった。結局、二股しとった奴はののちゃんをフッてすぐに親の都合で県外に転校して、ある意味時間が解決したところもあるけどな。それと夏あたりのできごとやろけど」


「それは、小6の夏のは俺だった。思い出したよ」


「さよか。やっぱ、お前やったんかい」


「あぁ……」


 再び沈黙。


 静まり返る教室には校内でランニングを始めた運動部の掛け声が遠くから聞こえてくる。


 最初に沈黙を破ったのは松藤だ。


「……ちゃんと幸せにせえよ?」


 幸せにする。


 美海を選ぶということだろう。


 逆に言えば、聖納との関係を解消することになる。


 聖納と友だちになれるだろうか。


 俺はなれる気がするけど、聖納はどうだろうか。


「なるべく……がんばる……」


 俺が覚悟を決めたようなそうでないような半端な返事をすると、松藤は大口を開けてあっけらかんとした感じで笑いながら首を横に振った。


「ははははは! あぁ、いや、無理なら無理でええよ。むしろ、がんばらんでええ」


「は?」


 さっきと言っていること違うんじゃないか?


 そう思っていると、その謎を解き明かしてくれるようで松藤が俺に話しかけようとしてくる。


「あんな、ののちゃんにフラれたときに、『金澤にフラれたら次は俺やから別のところに行かんといてな』って、仮予約しといたからな」


 ……おいおいおいおいおい! 待てえええええいっ!


 なんで松藤がそんな予約を美海にしてるんだよっ!


 聖納もそうだけど、何、そんなに彼氏彼女の順番システムって一般的なの?


 超人気だと、整理券でも配るのか!?


「……ったく、なんで予約システムがあるんだよ」


 まったくもう……それなら俺も整理券用意するか!? きっと誰も取りに来ないけどな!? 虚しい……いや、仮に誰も取りに来ないとしても、美海と聖納に超絶怒られそうだからしない方がいいだろうな。


「まあ、なんでやろな? 普通そんなんないけど、なんか頭に浮かんだわ。というか、津旗さんも本当はそのはずやったんやろうけどな?」


 ……そうだよな。松藤に言われて改めて思ったけど、聖納が自分で予備彼女って言ったときって、どっちかって言うと、今の松藤みたいに友だちだけど次に付き合うからという感じだったような。


 でも、2人を同時に愛せるなら……とも言っていたな。あと、2番目っていう順位付けで優先度もつけていたな。


「……たしかに、最初は美海と別れたらって感じだったのに」


 分からん。俺が気絶してからの美海と聖納のやり取りが分からん。


「お前のなかでも解決してないんやったら、考えときや。聞くか聞かないか、知るか知らないか」


「あぁ……」


「時間もらって、ありがとな。今回のことで俺もなんか成長した感じするわ」


 そうして、松藤はどこか晴れ晴れとした感じの雰囲気で、部活へ行くためもあって俺の前から去っていく。


 俺は一段落したはずの中で、次の大きな段落の渦を感じ取って、一つも安心することができなかった。

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