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ノートクエスト  作者: 伊達柴紫
第1章水の姫
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5話 3人目

チャーイ 「お兄ちゃん達大丈夫かな」

スラムン 「ハルもリクもかっこいいし強いから、大丈夫っスラ」

チャーイ 「そうだよね僕らは2人を信じる立場でいなきゃ」

 2人は炎の壁に追いつかれないようにゆっくりと村の中心に戻りながらも、中長と距離を取る。

チャーイ 「この炎の壁どうにかしないと、皆やられちゃうよね」

スライム 「戦えないオイラ達でどうにかしてあげたいっスラ」

 

 その時だった。2人から少し離れた壁に包囲網の外側から強風が吹き壁に穴が生まれる。そこを1人双剣を背中にしょった者が通り抜ける。

スラムン 「かっこいいっスラ」

チャーイ 「それより、壁に穴があいたよ!」

「チャーイ君か?助けに来たぞ」

チャーイ 「そうです!あの、お姉ちゃんはその双剣で戦ったりできる?」

「ん?ああ」

チャーイ 「じゃあ、僕らは大丈夫だから、お兄ちゃん達を助けに行って!今中長と戦っているんだ!」

 彼女は、周りを見て自由な魔物が居ないことを確認する。

スラムン 「オイラがこの子を守るっスラ」

「わかった。中長の元へむかう。壁を作る魔物達もいつ自由に動くかわからない。気をつけてくれ」

チャーイ 「ありがとう!お姉ちゃんも気をつけて!」

 彼女は軽く踏み込むと、一瞬で村の中心へと駆けていく。

チャーイ 「僕もあれぐらいかけっこ速くなりたいな」


――――――――――――――――――――――――――――――――

リク 「ハァ 腕の岩あと1個だな。」

ハル 「そうだね。あれじゃなぎ払いもできないが、足には岩が残ってるし、油断はしないようにしよう」

 ハルはフルートを練習するにあたって、呼吸には常に意識しており、リクと基礎体力はあまり変わらないが、スタミナの使い方と回復の仕方は上手い。

リク 「風?」

 2人の元に彼女がたどり着く。2人は気を引き締め構える。

ハル 「人間?君は誰?炎の壁の内側には僕らしか居ないはずだけど」

「ウチの名はナギ、味方だ。中長討伐の助太刀をさせてもらう」

 ハルとリクはアイコンタクトを取り頷く。コイツは大丈夫だと確信し合っていた。

 

ハル 「ナギよろしく。僕がハルで、剣士だ。あっちがリクで格闘家だ」

リク 「よろしく。双剣使いで合ってるか?」

ナギ 「その認識で、大丈夫だ」

 ゴーレムは体についている最後の腕の岩を放つ。

ハル 「(攻強曲!)」

 

 リクの力が上がり、両足でしっかりと踏み込み飛び上がる。そして飛んできた岩の上でかかと落としをする。岩を簡単に砕く蹴りを見たナギは驚く。

ナギ 「すごい力と体幹だな」

リク 「ハルのバフ込みだけどな、ほんとに音を聞くだけで強くなれるんだな」

ナギ 「なんだか、風国のある村の伝統みたいだな」

 

 フレアゴーレムの腕は全て砕かれ大分弱そうな見た目になっている。

フレアゴーレム 「フゴォア」

リク 「嘘だろ」

 ゴーレムの肩の部分から腕と手が、初めと同じ様に生えてくる。

ナギ 「ただ体を消費するだけではなく、生み出せたか」

ハル 「これは、ゆっくり腕壊してる時間無いみたいだよ」

 既にどの方向を向いても炎の壁が見えるほど狭まってきている。

リク 「目をいきなり狙うしかないな」

ハル 「ナギ、戦力として数えていいんだよね?」

ナギ 「あぁ。その為に来た。ヘマはしないぞ」

ハル 「僕がゴーレムの動きを止める、ナギとリクで目をやってくれ」

リ ナ 「了解!」

ハル 「リタルダント」

 

 フレアゴーレムの動きが鈍くなる。リクとナギが同時にフレアゴーレムとの距離を詰める。まずはナギがゴーレムの目の前にたどり着く。その瞬間ゴーレムの手の岩1つがハルの方へ残りの腕の岩2つがナギを狙って飛んでくる。

リク 「いけ!!」

ナギ 「真輪斬!!」

 フレアゴーレムの目に回転斬りを喰らわす。ゴーレムは悶えて左手で目を覆う。

リク 「炎飛燕流 華核拳!」

 今日一番の渾身の技をナギを狙う岩に当て破壊する。

 ハルも辛うじて、岩を躱していた。

リク 「まだだ!」

 ハルに躱された岩がハルめがけて、後ろから飛んでくる。ハルはフルートを持っており無防備である。

リク 「(間に合わない)」

ナギ 「これを使え!」

 ナギは双剣を交差させる。そこにリクの足がつく。ナギが双剣でリクを押し、リクは双剣を足場の様に使い蹴り出しハルの横までとぶ。

リク 「もう1発ぐらい体耐えてくれ!華核拳」

 ハルを襲う岩もリクが破壊する。

ハル 「(ありがとうリク、僕も答えなきゃ)」

 ハルは攻強曲と、リタルダントを同時に弾く。普通プロでも2曲を同時に弾くことができるものはいない。しかし、ハルはリタルダントの遅い曲調の隙間に攻強曲の速いフレーズを入れ込む。息を吸う間もなく吹き続ける。超絶技巧である。

リク 「すげぇな」

 

ナギ 「風纏い 双輪斬・乱」

 ナギの後方から追い風が吹き、ナギの剣の振りを加速させる。すぐに向かい風に切り替え、体に負担がかからないように素早く腕を戻し、反対の腕で斬る。目にも止まらぬ連続斬りである。

リク 「あれが、風の魔法」

 

 ナギは素早いが、リクやハル程のパワーがない。だが、ハルの攻強曲のおかげで目を守る左手を砕いていっている。リクは風のナイフを手にもつ。

リク  「ナギ!トドメの準備を!」

 リクはフレアゴーレムの目に向けナイフを放つ、ゴーレムは岩を出し防ごうとするが、リタルダントのせいで間に合わない。強化されたナイフのスナイプはゴーレムの左手を貫通し目に刺さる。

ハル 「(あと一撃!)」

 ナギは息を吸い準備をする。

ナギ 「風纏い 交刻斬」

 ナギは両手の剣を同時に振るい✕字上に斬る。

 ゴーレムの頭が、胴体から転げ落ち消えていく。胴体と足、左手の岩も接合が解け崩れていく。


 【ハル、リク、ナギ 火の中長 フレアゴーレム撃破】



リク 「た、倒したぁ!」

チャーイ 「お兄ちゃーん」

 チャーイがハルに抱きつく。スラムンはリクの頭に乗る。

ハル 「2人ともよく頑張ったね」

 チャーイとスラムンを褒める。チャーイの頭を優しく撫でるとまた、可愛い笑顔を見せる。

ナギ 「咄嗟のことだったが協力してくれて、ありがとう」

リク 「こちらこそありがとう。あのまま2人で戦ってたらやばかったと思う。助かったよナギ」

ハル 「あとは、炎の壁だね」

 

 炎が広がらないように気をつけながら、穴を開けるほどの風魔法を起こす為には溜めが必要となる。さらに、先程魔法を酷使したため、ナギのMPはほとんど空であった。

チャーイ 「僕は多少の炎だったら、火の耐性あるから耐えれるよ」

スラムン 「スラムンは、リクかチャーイと一緒に越えるのがいいっスラ」

ハル 「ナギは風なら…、僕だけ根性?」

リク 「おい、ふざけてる場合じゃねぇ、この火力だったら先に焼けるぞ」

ナギ 「MP的にもう風はきつい」

ハル 「熱っ!もうすぐそこまで来てる!」


マムミ 「チャーーーイ!!無事なのー??」

 壁の外からチャーイの母親の叫ぶ声が聞こえる。

この村にはこの火力を消せるほどの水はない。

チャーイ 「大丈夫だよー!!今行くね」

ハル 「リク、この炎の壁抜けれるか?」

リク 「あぁ。(熱っ)問題ない」

 リクは炎の壁を触る。

 いつの間にか発火していた魔物の行進は消え、炎の壁だけが小さくなっていた。中心に集まるにつれ、囲む魔物の数は少なく済むので、魔物達は内側か外側に抜けていた。内側に来た魔物が、家の陰に隠れリクとハルに奇襲をしてきたやつらであり、外側に出た魔物はナギが倒していた。


ハル 「作戦が思いついた。ナギあと一発なら風いけるか?」

ナギ 「突風でなければ問題ない」

ハル 「リクとナギに負担をかけるようになって、申し訳なく思っている」

 ハルは作戦の概要を共有する。

リク 「それが1番良さそうだな」

ハル 「いくぞ!攻強曲!」

 リクの力が上がる。リクはフレアゴーレムの胴体を持ち上げる。その上にリク以外が乗る。スラムンがハルを取り込み、ハルの分の重量を減らす。リクが岩を真上へ投げ上げる。流石に方向をつけて壁を越えさせることは叶わない。そこにナギが強い横風を起こし、壁を上から越える。岩はそのまま壁を越えて落ちていく。スラムンはハルを解放し、次に落下の保護のためチャーイを取り込む。

 

ハル 「衝撃に備えて!」

 リクは先に壁を越え、村人達を落下地点から離れさせている。

 岩は無事に地面に落ちた。炎の壁越えでの負傷者は0に抑えられた。


 直後、炎の壁は一点に集まり消えていった。

チャーイ 「ママぁ!僕、僕…。ごめんなさい」

 チャーイは泣き始める。

マムミ 「どれだけ心配したと思ってるの!」

 

 マムミはチャーイを強く抱きしめる。2人は抱き合う事で生を確かめ、愛を確かめている。炎の戦場よりも母の腕の中が1番暖かいとチャーイは感じた。

村長 「本当にありがとうございました」

 村人達が集まり、3人とスラムンへ感謝を述べる。スラムンはキョロキョロしている。

ポスラ 「スラムン!!!」

 その緑色のスライムはスラムンより少しひょろ長い。2体は体をぶつけ合う。

スラムン 「ポスラ!遅くなって、ごめんっスラ。怪我とかないスラか?」

ポスラ 「大丈夫ポス、中長に捕まったあと、1番速そうな火うさぎを味方につけて、村人達と一緒に避難してたポス」

スラムン 「よかったっスラ。あ、こっちにいる3人がオイラ達を助けてくれたっスラ」

 スラムンは3人を見上げ、リクとハルも微笑んで返す。

 

ポスラ 「この度は本当にお世話になったポス」

リク 「いいよ、ポスラ無事でよかった。」

スラムン 「オイラ達はこの国に残って、ワープ先を増やして準備してるっスラが、ハル達はどうするっスラ?」

ハル 「僕たちの今の実力じゃ火柱には、まだ勝てないと思う。だから他の国に行ってみようと思う」

リク 「次の目的地は、『聖水』の情報があるかもしれない水の国かな」

ハル 「!? いいの?」

リク 「おう!はやく手がかり見つけたいもんな」

ハル 「ありがとう」

リク 「うん。ひとまずお疲れ様だな」

 ハルとリクは拳を合わせる。ナギはそれはチラ見している。

リク 「ナギも混ざれよ」

ナギ 「えぇー」

 渋々手を出すナギに、リクとハルがナギの分も拳を突き出してグータッチをする。


 運命の出会いが魔物軍の一角を倒した希望をもたらす出来事であった。

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