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ノートクエスト  作者: 伊達柴紫
第1章水の姫
3/5

3話 初陣

2人と1体は、ココア村の池の前に立っている。

リク 「ある程度の大きさの水場って言ってたけど、こんな小さな池?でもいいのか?」

スラムン 「この国は暑すぎてすぐ乾くっスラ、前見た時はもっと大きかったっスラ」

ハル 「この大きさでもワープできるの?」

スラムン 「ちょっと試して来るっスラ」

 スラムンは池に飛び込む。スラムンの姿は完全に消えている。

リク 「本当にワープしたみたいだな」

ハル 「スラムンは特別なスライムなのかな。ワープのんて超常的なこと…」

 スラムンは勢いよく、飛び出してくる。

スラムン 「大丈夫だったっスラ。同時には行けないからリクから行くっスラ」

 そう言うとスラムンは再びリクを取り込みそのまま池へととびこむ。


 確かに飛び込んだ筈だったが、次の瞬間勢いよく飛び出している。

スラムン 「ちゃんと成功したっスラ」

 リクを解放し、また池にとびこむ。ワープした先からは、ミルク村が見える。当初の目的地であったその村からは煙が上がっていた。

リク 「(まさか、中長が暴れて家が燃えてるのか?)」

 ハルも池から飛び出てくる。

ハル 「無事ワープできたね。どういう原理かわからないや。……。ゆっくりしてる暇はなさそうだね」

 ミルク村から立ち上る煙を見ると同時につぶやく。

リク 「準備はいいか?」

ハル 「あぁ、スラムンの仲間と村人を助けよう」


―――ミルク村―――

リク 「村人の姿がねぇ」

ハル 「地響きが微かに聞こえる。きっと中長なんだと思う。それと…」

 ハルは近くで隠れている魔物達からの視線に気づく。リクもそれに気づいており、拳を緩めていない。

「こら!チャーイだめよ!」

 後ろから女性の声が聞こえる。女性が手を伸ばす先には子供が走っている。その少年はハルとリクの方へと走り寄ってくる。

チャーイ 「お兄さん達この村を助け…うわっ!!」

 

 このタイミングを待っていたかの様に隠れていた火うさぎが姿を現しチャーイの後ろから突撃する。チャーイの体制は崩れ、倒れ込む。それは火うさぎの上だった。服をかじられチャーイは逃げ出せない。火うさぎは背にチャーイを乗せ村の中心へ向かい走り続ける。

ハル 「地下に避難所を作っていたのか、リク、スラムン助けるぞ!」

そう言った瞬間さらに隠れていた火うさぎと、2足歩行をしている炎うさぎが現れる。

スラムン 「炎うさぎ、小長っスラ」

リク 「俺が引き受ける、2人はあの子を」

ハル 「了解」

 

 ハルは走り出す。進路を塞ぎにかかった火うさぎを足を止めずに斬り倒す。ハルが炎うさぎの横を通り過ぎると同時にリクへと接近してくる。

リク 「(踏み込み方上手いな)先点拳」

 自分の腕が届く範囲に炎うさぎが入った瞬間に突きを放つ。が、膝の屈伸を利用して炎うさぎは顔をずらしてかわし、リクへ飛び蹴りをする。それを片手で防ぐリクの顔は自分の技が躱されたことに少し驚いている。

 

リク 「(コイツ結構早いな、ナイフ試して見るか)」

 リクは不意にバックステップをする。その行動に炎うさぎはついていく事ができない。その一瞬で勝負は決まった。リクの投げるナイフが炎うさぎの胸に刺さり、炎うさぎは消えていく。

 リクは先程声をあげた女性に声を掛けに近づく。

リク 「チャーイ君は、僕らが助けます。奥さんは地下で安全にしていてください」

女性 「そんな!チャーイが危ない目にあってるのに私だけ、安全な所で待ってるだけなんて」


 後ろに立っていた老人が女性の肩に手を乗せて話しかける。

「マムミさん、あなたが無事じゃないとチャーイ君が戻ってきた時に悲しみます」

 女性は泣きながら、坂を降りていく。

村長 「あなた方は?」

リク 「自分はリクと申します。自分らは、この村にいる中長を倒して友達の仲間を助ける為に来ました」

村長 「こんな若者に頼むのも忍びないが、どうかこの村を助けてはくれぬか」

リク 「任せてください。中長の姿は見ましたか?」

村長 「岩でできた魔物です。ゴーレムとでも言うのでしょうか」

リク 「ありがとうございます。先程の女性のケアお願いします。必ずチャーイ君を助けますので!」

 そう言うとリクも村の中心の方へ走っていく。


 

ハル 「(くそ、僕とスラムンのスピードじゃ火うさぎに追いつけない…。それに、大分地響きが大きくなってきた、きっと相当中長に近づいて来てしまった)」

 ハルとスラムンも速い方ではあるが、火うさぎの素早しっこさの方がそれを上回っていた。

スラムン 「オイラを火うさぎの進行方向に投げてほしいっスラ」

ハル 「なるほど!わかった。行くぞ」

 スラムンはハルに飛びかかり、それをハルは左手で受け止めそのまま振りかぶる。それと同時に道の両脇からスカル剣士が現れる。しかし、動きを止めずスラムンを投げ、スラムンは火うさぎの前に着地する。

 お構い無しに直進する火うさぎはスラムンの体を通り抜ける。チャーイはスラムンの中に取り込むことで奪い返す事に成功する。

 

ハル 「よくやったスラムン!(あの火うさぎまるで気づいて無いみたいにそのまま進んで行っちゃったな。)」

 ハルは先程と同じように足は止めずにスカルを倒す選択をし、剣を振るうが躱されてしまう。2体のスカルの横を通り抜ける時に放った前斬りが躱されてしまったが、間を通り過ぎ終えた瞬間に回転斬りをすることで、スカルに剣を当てていた。

 

チャーイ 「スライムがしゃべった!!」

ハル 「君怪我はないかい?そのスライムは味方だから安心していいよ」

 チャーイは驚いた顔をしており、スラムンは少し嬉しそうにしている。

スラムン 「あぶないっスラ!」

 スラムンは飛び跳ね、ハルの背中を狙っていた火の矢を取り込んで止める。しかしスラムンはダメージを負っている。

ハル 「スラムン!大丈夫!?」

スラムン 「スライム達は、打撃に強いかわりに魔法や、属性技に弱いっスラ」

ハル 「ごめんスラムン、あの弓を持っているスカル倒してくる」

 物見ヤグラから狙撃をしてくるスカルに指を指す。

 チャーイがハルの服の裾を掴む。

チャーイ 「お兄ちゃん、後ろからも骨来てるよ」

 先程倒した筈の2体のスカル剣士の骨が組み合わさってが合体し、メラスカルへと強化されていた。

ハル 「まじか…。(後ろの骨剣士と、前の弓矢持ち同時に対処しなきゃいけないし、他にも出てくる可能性あるな。)」


ハル 「先に復活した剣士の方を倒す。2人共矢に撃たれないように射線をきるぞ!」

チャーイ 「わかったよ!!」

 チャーイは少し不安げにハルについていき、スラムンはその後ろを弓を警戒しながらついて行く。

スラムン 「ハル、パーティーの仲間の数が足りないんじゃないっスラか?」

ハル 「…かもね」


  狙撃されない様に建物を利用する。リクいわく、火の国の村の家は炎耐性がとても強く設計されており生半可な火力では燃えないので、先程の火の矢を連射されても身を隠してくれている建物は問題ない。

 そこに、復活したメラスカルがやって来る。メラスカルはハル達を見た途端に燃える剣を振りかぶり襲いかかってくる。

ハル 「落ち着きがないな」

 ハルの剣がメラスカルの上からの剣の振り下ろしを防ぐ。

 

ハル 「(こんな燃えている剣とぶつかったのに、手元が熱くない)」

 リクからもらった剣は火の国で作られたもので、火へはめっぽう耐久力を発揮するのであった。

ハル 「本当にリクに感謝だな」

 ハルは自分の妹を砂に変えた火柱の顔を浮かべる。メラスカルと比べると相当桁違いな火力ではあるが、火属性の魔物を対処出来る武器を獲得した事で少しでも目的に近づいていることを実感する。


 ハルはメラスカルの剣を跳ね除ける。

スラムン 「まずは、剣を使ってさっきみたいに、スカルをバラバラにくずすっスラ」

ハル 「了解。スラッシュ!!」

 現在ハルが使える技で1番威力がある技がこのスラッシュである。直撃したメラスカルは体が崩れる。

チャーイ 「うわぁっ」

 突然目の前の魔物が崩壊し思わず声をあげる。

スラムン 「ハル、頭蓋骨を砕くっスラ」

 ハルは剣でメラスカルの頭部を砕く。メラスカルは時間がたっても復活することはなかった。

チャーイ 「お兄ちゃん怪我ない?」

ハル 「あぁ大丈夫だ。僕はさっきの弓矢持ちを倒してくる。2人はそのままここにいるか?」

 スラムンとチャーイは顔を見合わせる。

スラムン 「そこまで力はないっスラが」

チャーイ 「僕たちもついていくよ。」

ハル 「わかった。必ず守るけど、2人も用心してくれ」

 2人と1体は、物見やぐらに近づいていく。


 ハルとリクがミルク村で戦っている時、新たにこの村に訪れた者がいた。彼女は、小柄ながらに背中に双剣を持っている。

 彼女は村長に、村の現状を聞き中長ゴーレムの討伐を決意する。言葉数は多くないものの彼女が話すと、避難していた村人達も安心していくようであった。

 地下の避難所から出た彼女の視界にリクはいない。リクは既に村の中心へと走り出していた。

 彼女も村の中心へと走るがその速さはリクやハルを相当上回り、火うさぎにも軽く追いつく程のものだった。初速をみただけの村人達も皆口を揃えて「『風』の様だった。」とこぼす。


途中炎うさぎと出くわす。炎うさぎの素早い攻撃も彼女の速さには追いつかず全て空を切る。彼女は双剣を抜く。まずは左手で腹に一撃いれる。次に、炎うさぎの回し蹴りを飛んで躱し右手で肩を斬り左手で左腕を斬る。

 

「真輪斬」

 小さく呟くと、彼女は回転斬りを開始し炎うさぎにトドメをさす。小長に何もさせない力が彼女にはある。


 さらに中心へ近づいていくと、驚くべきものを見た。炎うさぎとメラスカルが横並びに隊列を組み行進している。厳密には横並びではない。村の中心を大きく取り囲み円になっていた。それだけであれば辛うじて、彼女の双剣技で後ろから魔物を倒し包囲網を外から破ることが可能であったが、彼らは行進と同時に炎の壁を作っていた。

「流石にこれはやばいな」

 彼女に炎耐性はない、この壁を越えるとなると相当ダメージを伴ってしまう。彼女の1番気がかりな事はこの包囲網の中にいるであろう、先に村に入った青年2人とチャーイという子供1人である。もしかしたら包囲網から出られなくなりピンチの上に中長に襲われている可能性もある。

 彼女は何か準備をはじめるこの炎の壁を越えるため。




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