21話 1秒先の死
水柱 「また、やられたいのか。さっきのは無様だったぜ」
ハルとリクは、少し笑う。
水柱 「ピンチで、笑える度胸は評価してやる。だがお前たちの人生はここまでだ。俺が潰す」
リク 「お前はただの俺たちの超えるべき壁の1つだ。ここで勝って俺たちはまた1つ強くなるんだ!」
リクとハルが飛び出し、応急処置されたナギが続く。
水柱 「(剣士、格闘家、二刀流の順か)」
突然リクがバックステップを踏み、ナギが加速しハルを抜かす。水柱は想定の順番とは変わってしまい、防御のイメージが崩れる。
ナギ 「(上手く動きが鈍ってくれた)共輪斬!」
2本の剣をまるで1本のように重ねて扱い威力を上げ水柱の右足に一撃入れる。
ハル 「ナギいくぞ!」
ナギ 「あぁ!」
ナギは、剣を振るった後ですぐ体勢を戻しハルのイメージ通りの動きをする。その柔軟性は格闘家のリクをも超える。
ハ ナ「響輪斬!!」
三本の剣が、水柱の腹に深くダメージを与える。
そこにリクが水柱の懐に入り、ハルとナギは両脇にズレる。
リク 「(華核拳じゃ、威力が足りない)」
リクはその場でターンし、一瞬背中を水柱に見せ再び正面を向く時には、右足を出して蹴る。回転の勢いを無くさず、直線的な蹴りを放つ。
リク 「華天貫!」
その蹴りの威力は圧倒的で水柱の巨体を仰け反らす。
ハル 「なっ、すごい」
仰け反っている水柱に追撃をするのは、ルカである。
ルカ 「水龍!」
先程水柱が出した水蛇よりも2周り大きい水の龍が水柱の顔を食らいそのまま地面へと叩きつける。さらに、ナギとハルが斬りかかる。今までなら出来なかった高威力のコンボである。ルカが協力する事で再びナギとハルの攻撃体勢を整える時間が生まれる。
すでにリクもハルも、オババの予言の中に出てきた仲間がマナとルカである事を確信していた。
マナ 「ハル、姉さん 止まって!反撃来るよ!」
水柱が倒れながらも放つ水の槍を2人はマナの警告に反応してかわす。
リク 「(いいチームワークじゃん。柱を押してる)」
この状況で水柱が選択した技は全方位攻撃である。強者であるには多勢に無勢の際に必須になる技である。もちろん、ハル達もそういった技があるだろうと分かっていた。さらにルカがいる事でパーティーとしての防御力が上がっている事も感じていた。だが、防げなかった。吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。ただ1人を除いて。
水柱は、飛び起きる。そして目の前でただ1人立っている青年に向け水で作った竜巻の様な乱流を放つ。その青年は立ち尽くしてたかと思えば、次は俊敏にかわす。だが、かわした方向は水柱が完全に読み切っていた。
―――王の間突入前―――
リク 「全方位攻撃の時には、誰か1人を耐えさせて奇襲させるのはどうだ?」
ナギ 「面白いな。ウチは魔法で防御できるからマナを守るよ、リクかハルだな」
リク 「その場で防御力を上げる技ないか?」
ハル 「鼻歌で自分にバフをかけれる」
リク 「俺は自分でなんとかするから、ハル大事な場面頼んだぜ!」
リク 「まぁ、皆でその場で耐えれて、反撃出来れば最高なんだけどな笑」
―――王の間 現在―――
ハルだけが耐えていた。水柱はリクの予想通り驚きを隠せていなかった。しかし、しっかりと攻撃の手は緩めない。
ハルの避けた先に、水の槍が飛んできておりもう目の前だ。ハルは剣をもつはずの左手で顔を守ろうと腕を上げる。緊迫した状況で手を振りあげたと同時に手元に剣が無いことに気づく。水柱は槍の他に矢も放っておりハルの剣が狙われて手から離されていた。
ハルは先程喰らって倒れた技よりも威力が強いと一目で理解し自分は素手では守れないことを悟る。
―――風国 オレンジ村―――
ユナ 「お兄ちゃん、私はお兄ちゃんがいれば大丈夫だよ。お父さんもお母さんもいなくたって生きていけるよ。だから一緒に笑おうよ」
ユナとハルは、物心ついた時からオレンジ村に2人で暮らしていた。毎日朝昼夜に、近所の村人がご飯を持ってきてくれるのが当たり前だった。2人は大きくなるにつれて、周りに恵まれていた事を知った。村に2人を悪く言う人も迷惑と思う人もいなかった。人が優しい村だった。
オレンジ村を出たのは、ユナがきっかけだった。本を読むことが好きなユナは、色んな景色を見たいと言い出した。ハルに剣技とフルートを教え育ててくれた人も、ハルの実力を認めて旅の許可を出した。
2番目に訪れた町が、城下町だったので、火国でも1番に栄えている所だった。年頃の女の子だ、お姫様にユナは憧れており、その日2人は火城の近くまで見学しに行った。しかし城は既に魔の手に落ちていた。不法侵入だとユナとハルは捕まり、命からがら逃げ出す途中にユナが火柱に捕まり砂にされた。火柱は、砂をかき集め瓶に詰めるハルを笑った。ハルは小瓶を握りしめ、とにかく走った。
泣いた。走った。倒れた。諦めた。食べた。吐いた。
泣いた。歩いた。倒れた。信じた。吐いた。食べた。
砂漠のオアシスに『聖水』があるというガセネタを掴まされ、確認したが落胆した。そして迷い、運命の出会いを果たした。
―――王の間 現在―――
ハル 「(ごめん、ユナ。お兄ちゃんもうダメみたいだ。ユナの事は仲間に託すよ。あぁせっかく背中を預けれる仲間に出会えたのに、ここで死ぬのか。もっと楽しく旅をしたかったし、リクと一緒に強くなりたかったな。もっと生きたかったな)」
ハルの手のひらに水の槍が触れる。
その刹那ハルは死を悟る。死とは遠い様で近く、近い様で遠い、そんな気がした。
水の槍は凍り、砕けていく。
ハル 「え」
ハル 「これは、ユナの技」
ハルの掌は冷気を放っているが、ハル自身は寒くも冷たくもない。
【ハル 氷属性開花】
水柱 「(奥の手だったみたいな表情じゃない、まさかここで氷属性が開花するとは、まだ楽しませてくれるじゃねぇか)」
ハル 「ありがとう、ユナ。弱音吐いてごめん。必ず僕の手で助けるよ。だからもう少しだけ待っててくれ」
ハルは奇跡を起こす。この土壇場での出来事をこの場の誰1人と予想できなかった。
リク 「相棒、ほんとにびっくりしたぜ」
ナギ 「魔法使えるようになったな」
マナ 「大丈夫?」
ルカ 「私の水龍、凍らせて新技にならないかな」
こっちは、さっきまで死と肩組んでたんだぞ、なのにまともに心配を口にしてくれるのマナだけじゃん。でも冷たいとは、感じない。だって皆の心配も信頼も感じ取れるから。この戦い必ず勝とう。




