19話 5人目①
ルカはお母さんっ子だった。彼女の母親は「氷の姫」と呼ばれていた。そこに、人としての冷たさの意味はなどはなく、透き通った肌、消えそうな儚く美しい声から生まれた呼び方であった。王と結婚をしてから、毎日のように王と共に城の周りの都市を歩いたり、少し遠出して村を周ったりなどしていた。人柄もよく夫婦円満で歩く姿を見た村人達は、誰1人として国や王に不満を持っていなかった。5国の中で1番豊かで幸せだと民たちは信じていたのだった。ルカの母親が「氷の姫」と呼ばれるのには、もう1つ理由があった。それは氷属性の使い手として、その強さに注目されていたからだ。村が魔物に襲われた際には、王女が自ら前線に立ち戦い、王が村人と王女の間に立ち、双方を盾で守っていた。そんな姿を見て「この王に仕えたい」と言い、旅をしていた仲間と別れた者もいた。彼は今、水国で特兵長をやっている。そんな幸せな国にさらに幸せな一報が流れる。それがルカ姫の誕生だった。王女譲りの美貌を感じられる愛らしさと、凛々しさの中にある優しさ。彼女もまた、村人達から尊敬され愛されていった。
ルカ 「見てお母さん!」
ルカは、水塔を使ってみせる。子供がここまでの大技を使えるのは異例だった。違う家庭であればその膨大な魔力に忌み嫌われることもあるだろうが、この家庭においてそんな事はありえない。王女はルカに正しい力の使い方と水属性の素晴らしさを伝えた。
王女 「ルカ、お母さんの手冷たい?」
ルカの頬に触れる。その手をルカは両手で握る。
ルカ 「んーん!暖かいよ」
王女 「ありがとう」
ルカ 「んー?」
王女 「私の温もりを肌の熱を覚えていて。どうか私の事を忘れないでね」
王女はルカのおでこにキスをする。
ルカの母親との思い出の記憶はここで終わる。
その日王女は兵を連れて、「緑力の丘」へと向かった。そこに魔物の襲撃があるという情報を掴んだからだ。王は王女を心配しながらも彼女の意志を尊重した。
その丘の戦いについての詳細は誰1人分からない。誰も帰って来なかったのだ。緑が美しかった丘は雪と氷に包まれて、緑を全て失った。王とルカは悲しんだ。国民も兵も皆が王女の死を悲しんだ。1人の国の宝が失われてしまった。
それからルカは母親に褒められていたことをモチベーションにして、自分に習得できる水魔法のスキルを全て身につけた。一般の水兵の取っておきの技から、時には城に訪れた水マスターの技すらも自らの力とした。天才と努力の掛け算の結果が今習得できる全てのスキルを使いこなす、という偉業だった。島内最強と言われる光マスターでさえ、そんなことはできない。ルカの両親譲りの人柄のお陰で、国民からも尊敬はこそされるが、恐れられる事はなかった。次期王女として誰も文句はない。
――――――
ルカは雷で気絶をしていたが目覚める。自分の頭がマナの膝の上にある事に気づく。
ルカ 「マナ、助けに来てくれたんだね。ありがとう」
ルカは立ち上がる。マナがルカを抑えようとするが首を横に振る。ルカは先程までとてつもない不安に覆われており、苦手な雷も喰らっているが、それでもすぐに起き上がり戦おうとする。
ルカ 「私たちの愛する国だから、私が戦わないと駄目なの」
ナギ 「…。ウチはナギだ。よろしく」
ルカ 「助けに来てくれてありがとう。私はルカよろしくね」
ナギは小長の4と5を倒していた。ナギには、奥で凄い落雷の音が聞こえ煙が立ちリクとハルの姿がみえない。
ナギ 「(お前ら大丈夫だよな。すぐに行くからな)」
ナギは自身に追い風を浴びせ加速の援助をする。小長2と3の間に入り、回転斬りを構える。
ナギ 「真輪斬!」
小長1はとっさに小長2を後ろに引っ張り、ナギの回転斬りを避けさせる。小長3はナギに斬られ倒れる。ナギが技を終え地面につく前に、小長2が水の鉄砲をナギに撃ちまくる。
ルカ 「自由流[フリル]、踊水[ダンス]!」
小長2の鉄砲の玉はルカが生み出した水の流れに飲み込まれて、地面に着弾する。さらに、自身の足から小さな波を生み出し、その流れに乗ることで機動性を上げる。
ナギ 「ありがとう!(やるな。負けてられない。)乱風」
小長2人の体勢が崩れる。そこを目掛けルカが溜めていた技を放つ。
ルカ 「圧水[アース]」
小長2人に岩をも砕く勢いで、まるで横向きに滝が落ちたかのように水がかかる。2体は水に耐性があるが、それでもそのまま倒れ消えていく。
ナギ 「(あいつら絶対水耐性あったのにそれを一撃!?本当に強いな)」
ルカ 「あとは、あの柱を倒せば!」
マナ 「行こう」
3人は水柱と、ハルとリクがいる奥の方へ向かう。ルカは初めて誰かと一緒に戦う。魔物討伐に、兵と一緒に行く機会はこれまでも沢山あったが、その立場から守られる側になるか、その強さから守る側のどちらかだった。
ルカにとって、背中を預けることができ、今はマナとの間にだけあるが、信頼している人と共に戦うことは新鮮で頼もしい事だった。
ルカ 「(この戦いが終わったらナギさんと、マナと奥の2人にもちゃんとお礼をしなきゃ)」
煙が晴れていき、水柱の姿が鮮明に見えてくる。その足元には…
水柱 「遅かったな、こいつらは苦手属性の大技を3回も耐えていたぞ、褒めてやるべきだ」
リクとハルが、地面に這いつくばっていた。




