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ノートクエスト  作者: 伊達柴紫
第1章水の姫
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1話 運命の出会い

オミクロン島は百年前に突如現れた魔王によって支配されてしまっていた。50年前に5人の勇者一行が各国の支配をする魔物を倒し解放して回った。そして魔王に挑んだが、痛手を負わせながらも敗戦してしまった。それから何度か立ち上がる者もいたが、尽く散っていったのであった。


 現在は魔王の居場所はわからず、5国にはそれぞれ『柱』と呼ばれる魔物によって、支配されている国や、今にもされそうな状態である。


 ―――火国 ある村―――

 この村は小さな場所ではあるが村人達には活気があり多くの人々が出入りしている。火国の暑さと共存するための家にはレンガ造りが目立つ。レンガを使用することで熱を発散させ彼らは寝苦しい夜を乗り越えてきた。

 

「みんなぁー 久しぶりに鳥捕まえれたよ」

はしゃいで駆け寄ってくる子供の名はリクだ。いつも笑顔で明るく子供ながらに沢山の村人達と交流し元気を振りまいていた。その性格からいつも走り回るイメージを抱かれていたが最近は真面目に特訓している姿が目撃されており、村のちょっとしたニュースになっていた。

 この子の父は島で屈指の炎魔法の使い手の剣士であり、民はその男を『炎マスター』、『炎の剣士』と呼んでいた。常に旅に出ている父をリクは誇らしく思っていた。時々村に帰ってくると先旅の話を村の人々の調子を伺いながら揚々と語る男であった。

 

~~~~~~

「リク お前は俺を追って剣士に必要はない。お前の好きな生き方をするんだ。俺はお前の面倒を村の人達に任せ切りでどうしようもない男だがお前の事を愛している」

リク 「僕、お父さんの事大好きだよ。剣はあまり上手く扱えないけど僕も魔物を倒したりして皆の事を助けたいな。最近ね武器を投げる狙撃の練習してるんだ!上手になったらみてね」

「あぁ。楽しみにしているよ」

 リクの頭の上に大きな掌が触れる。その暖かみを二人は一生忘れないだろう。

リク 「僕、将来お父さんの背中を守れるような男になるよ!」

「それは頼もしいな。未来が楽しみだ。よし、今日はリクの好きなシチューにしよう」

 歩幅の大きな父に駆け足でついて行くリクの顔からは幸せが溢れていた。

~~~~~~


村人 「おぉ相変わらず、リクの狙撃はすごいな」

リクには、狙撃の才があった。彼は空に飛んでいる鳥めがけてナイフを投げ一撃で射落としていた。その技術は父に習ったものではなく、自分で身につけたものだった。火国はその暑さから育てられる食物が限られているので、他国からの輸入や狩り、乾燥と暑さに強い植物を育て食料にしていた。


リク「あとで皆で食べようね」

村人「ああ。楽しみにしているよ」

 常に父親が村を離れているリクを村の人々は優しく接していたのだった。この村は過去に魔物の手から守って貰った過去があり、その恩人の息子の事を大切に扱うのは想像に易いがそれだけではなく、彼らはリク自身を見てこの子を村の総力をあげて無事に幸せに育てあげようと考えているのである。


「大変だ!!リク 炎の剣士が!!」

他国からの情報を仕入れていた村人が大声を上げ走ってくる。

村人「そんなに焦ってどうしたんだ」

リク「お父さんがどうかしたの?」

伝達係 「炎の剣士様が、光国で闇柱に敗れて…」

村人「たしかなのか」

伝達係 「今、光国の副マスターが来て伝えられた」


 リクの目の前は真っ暗になった。憧れの父が自分の知らない所で命を落とした事を受け止めきれないでいた。

いつもみたいに、少し遠出しているだけで、またフラッと帰ってくると思ってしまう感覚になっていた。そして彼の心の中には、仇討ちの炎が生まれた瞬間であった。


―――10年後 火国 サワラ砂漠―――

 青年は砂漠を迷っていた。何日迷っていたかは既に分からないほど限界であった。彼には水が食料が休息がたりていなかった。

 彼の名はハル、自分の目的の為に旅をしていたが砂漠で足止めを食らっているのであった。

 

ハル 「また、来たか」

 彼の前にいる膝の高さぐらいの大きさの丸いサボテンの魔物を見る。目が合った瞬間その魔物はハルに突撃してくる。その針に刺さればただでは済まない。

 ハルはポケットからナイフを取り出し、そのサボテンの魔物の眉間に刺す。一撃で仕留められたその魔物は声もなく消えていく。


ハル 「(このドロップしたやつ、食べれんのかな)!」

 ハルの足に針が掠り傷をつける。後ろから先程とは別の個体のサボッチが飛んできた様だった。

 砂嵐の中目を凝らし奥を見ると2足歩行の影がみえる。

瞬間、その影がサボッチをまた投げてくる、それをハルは身をよけかわすが、彼には既に踏み込む力も残っていなかった。そのまま倒れ込む。

 

ハル 「(こんな所で死ぬ訳にはいかない、ユナを助けるんだ)」

 ハルは水色に輝く小瓶を握りしめる。

 突如、投げられてきていた横の2体のサボッチが消えていく、何者かが倒したのだ。


「こっからでも届くよな」

 その声の主は、何かを投げていた。そこでハルの意識が遠のく。



 ハルが目を覚ますと辺りは既に真っ暗でハルの体には薄い布をかけられていた。連日夜の砂漠に体の芯まで冷やされていたが、布の他にも温もりを感じた。


「目覚ましたか、過労だな。大丈夫か?」

 ハルと歳が同じぐらいの青年は、焚き火をしながら砂に置いた丸太に座っていた。

「俺はリク、お前は?」

ハル 「ハル。助けてくれてありがとう。あのままだったら死んでたよ。……あの後どうなったんだ?」

リク 「奥にいたサボーマンは、サボッチからドロップした針を投げて倒した。腹減っただろサボテン肉だ」

ハル 「食べれたのか(砂漠で枝を見つけたのか?)」

リク 「おう美味いぜ。このピンクの花は毒らしいからハルは食べない方がいいぞ。甘くて美味しいんだけどな」

 その一瞬前の説明に反してリクは花の蜜を吸い、花びらを火に近づけた後にバリバリと食べる。

 

リク 「俺、食中毒にならない体質みたいなんだ」

ハル 「本当?ちょっと心配になるよ」

リク 「大丈夫大丈夫。てか、ハルはなんでこんな砂漠の中心にいたんだ?」

ハル 「俺は、火柱に砂にさせられた妹を元に戻すために『聖水』を探していたんだけど、そのまま砂漠で迷っちゃってた所をリクに救われたんだ」

リク 「そうだったか。なら早くこの砂漠なんか抜け出して聖水探さないとな」

『聖水』とは、魔物の力で姿を変えられた人を元に戻す事ができると言われている聖なる水である。しかし、市場にも出回っておらず実際に見た事がある人はほとんど居ない。


ハル 「うん。リクは何か用事があってこの砂漠にいたのか?」

リク 「ミルク村に向かっている途中で、えっと言いづらいが俺も遭難していた」

 その不安げな発言を聞いても、ハルにはこの出会いをマイナスに考えることはできなかった。


リク 「10年前に俺の父さんが、闇柱に殺されてな…。必ず仇討ちをする為に、旅に出ようと思って過酷な砂漠で修行してたんだけど、近くのミルク村に帰る途中で迷っちまった。」

ハル 「そうだったんだね…。闇柱って事は光国に向かうってことだよね」

リク 「あぁ。悔しいが今の俺の力じゃ全く敵わねぇ…と思う、だから色んな国を回って鍛えるんだ。ハルの詳しい目的は?」

ハル 「火柱を必ず倒したい。ユナを砂に変えた事を絶対に許さない、僕も色んな国へ行って情報集めと柱を倒す力を付けたい」

リク 「お互い魔物を倒し目的を達成したいってことか」

ハル 「そうだね」

 

「「一緒に行かないか?」」

 2人は同じ言葉を放つ。遠くで鳥の魔物の鳴き声が聞こえる以外静かな夜空の下で重なった声が響く。


リク 「いいのか?」

ハル 「それはこっちのセリフだよ。よろしくなリク!」

リク 「あぁ、よろしくハル」

 2人は固く握手する。

 ハルはリクの毎日鍛えたとわかる肉厚な手に触れ目の前の男の努力を認め称えた。

 リクはハルの魔物を何体も倒してきたとわかる魔物の血の匂いがする一方で細く綺麗な手に触れ認め称えた。

 

ハル 「その腰の剣見せてもらってもいい?」

リク 「ん?いいよ。それ俺のお世話になってた村の鍛冶屋のおっちゃんにもらったんだが、俺武器と言えばナイフを投げるのしか使えなくて、剣得意じゃなくてさ。気になるならいる?」

 ハルは剣を試しに振っている。夜に剣が空を斬る音は聞き心地が良い。

ハル 「いいの?お返しできるものなんて…あ」

 ポケットのナイフを取り出し、リクに手渡す。

リク 「借りてもいいか?」

 ハルに手渡されたナイフを手に取り、軽く上に投げ回したりする。


リク 「風の国のナイフか。すごい振りやすいしもち心地も最高だな」

ハル 「そう、よくわかるね。ぜひリクが使ってよ」

リク 「ありがとう!」

 2人はお互いの武器を交換する。必ずお互いの目的を果たすと誓いをたて交換した武器の剣身同士をぶつけ合った。鳴った金属音は二人のこれからの旅の始まりを伝える鐘の音のようだった。


 この運命の出会いがオミクロンの未来を変えることになることをまだこの島の誰一人として知らないのであった。

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