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バトルオブロード  作者: 森の番人
7/15

第7話「試合前」

クラス対抗戦の当日である4月18日となった。今日は午前中の授業はすべて『ロード』となり朝からミーティングをすることになった。

そのため朝練はいつもより短くして切り上げることにして集合場所である演習場へと向かう。

その通り道の自販機エリアで仮面女子の置野さんが飲み物を買っているのを見かけた。声をかけて一緒に集合場所に行くことにした。


「今日は私たちはロードのデビューすることになるのですね。少し緊張します。」

「置野さんは能力もアバターの操作もかなり上手になっていたから緊張をほぐすことが出来たなら活躍することが出来るよ。」

「それならいいんですが、私の能力は制御が難しいですから。しっかりと武器で相手を屠りますよ。」

「英二の単純な訓練はアバターに慣れるにはいいものだったからな。現実でも体を動かすのが得意ならアバターを動かすためにもアドバンテージになるよ。置野さんは現実では何かやっていたの。」

「はい、演舞の方を。昔ながらのもので剣を用いて神に捧げる舞なんです。」


演舞は今まで見たこともなかったので気にはなるが聞くことをやめておく。なんとなく聞かないほうがいい気がするからだ。


「なら、あとは実践あるのみだな。やられそうなら一旦引いてまた向かっていけばいいからな。チーム戦ならそういう戦い方が重要だからね。」


舞は武道に通じるものもあるし彼女の動きは練習の時から気になっていた。見ている分にはしっかりと動けているので問題はないはずだ。


「藍田くんにそう言ってもらえるのなら自信になります。」


仮面をしているから表情はわからないが声のトーンが少し上がったので恐らく喜んでいるのだろう。

クラスメイトが緊張したまま戦われてもただの的になってしまって困るだけ。そう割り切ることにする。

彼女は普段誰とも会話をしない。いや、必要最低限のことだけ話してそれ以外では全く話すことをしていない。

俺と会話はするのだが、これは姉と関わりを持っていてその姉の弟だからだろう。

それだけで彼女を警戒してしまう。特段姉とは関係は悪くはないが、姉の友人以外の人は信用が出来る人など数える必要がないぐらいの人数しかいない。


「さて、このクラスの人は時間までに集合することが出来るのか心配だな。」

「大丈夫でしょう。みんな問題児の集まりと呼ばれていますけど『ロード』に対しての気持ちは純粋なものですし、遅れて参加が出来ないなんてことがないようにしていると思いますよ。」


仮面女子のいう通りほとんどのクラスメイトはロードに対してだけは真っ直ぐな気持ちであるように見て取れた。


「まぁ、俺が心配する必要はないな。そういう役目はリーダーと副リーダーだけでいいし。俺たちは指示を聞いて敵を倒すことをすればいいだけだし。」


俺はオリエンテーションでは決闘みたいな試合を経験はしているが本来のルールに則った試合はみんなと同じで初めてである。

だから、気持ちが朝から昂っている。

いつも通りの動きをすることが出来るのかなどと不安になることはない。むしろ楽しみが勝っているので早く試合がしたい気持ちが前に押しでるのを押さえている。

そうこうしていると演習場に到着した。

演習場の控室にいるということなので向かってみる。

入ると何人かのクラスメイトと山田先生がいた。

先生がいなければ演習場が使えないのでいるのは当たり前だが控室にいるのは初めてだ。


「英二、もう来ていたのか。」

「ああ、リーダーなのに時間通りに来るわけにはいかないからな。みんなの体調とかもしっかりと把握しなければいけないからな。」

「佐藤くん誰よりも早く来てから、準備していたんだよ。リーダーとしてしっかりしているから私も副リーダーとしてしっかりとしないといけないから大変だよ。」


加藤さんも俺たちよりも早く来て英二のサポートをしていた。彼女はいつも以上にやる気に満ち溢れている。

それからは英二からの今日の体調のチェックをしてからフィールドに言ってアバターを使った準備運動などをする。

数日間アバターを動かしていると気がついたことがある。アバターに対しての感覚などは日によって異なる。

服を着ている感覚に似ている。動きやすい日と動きにくい日がある。

この感覚は体調によって変化をする。体調が良い日には妙にしっくり来て、普通だとなんの違和感もない。逆に悪いと違和感があり少し不快感を感じる。

つまり、ロードをする上では体調管理が必須になる。その違和感のせいで負けるなんてことは恥ずかしくても言うことが出来ない。


「今日も新しい能力は出現しないか。でも、違和感はある気がするんだよな。」


今日は違和感がある。体調面は問題はないのでこれは初めての能力を使用したときと同じでこの違和感のところが変化するのだが、今回は全体的なものである。


「もしかして人からバケモノに変化するのかな。」

「なんだ、緊張しているのか。そんなふうには見えないが。」


英二がこちらの顔を覗き込んでいる。

いきなりいかつい顔は心臓に悪いので1発気晴らしに顔面を殴っておく。

鼻に直撃してなんだか気持ちよかった。もう1発殴りたい。


「心配をしている人間を殴るなんてお前おかしくないか。」

「そんな凶器を俺の顔に持ってくるのが悪い。反省しろ。」

「人の顔を凶器っていうのはやめろ。普通に傷つく。自覚はあるけど。」


英二の顔を殴ると違和感は消えていた。

変に違和感があると気になってしまうので顔面凶器くんには助けられたけど怖いわ。

これがクラスのリーダーであるためこのクラスは顔面凶器が率いるまじものの不良集団みたいと思われても仕方がない。

英二は頼りにはなるがこれをクラスの顔としては売り出すのならもっと適任者がいるので変えてもらうように意見をするようにしよう。

英二と今日のクラスメイトの調子を俺も一応は聞いておく。

英二との会話は1日のうちの会話量の半分は占めている気がする。それが日課といわんばかりに。

その日課をしていると数日前からなにやら視線を感じ始めた。誰かと思って視線の主を探していると意外な人物だった。

加藤アキだった。しかも、俺を見ている目はなにやら羨ましそうな目をしている。しかし、ずっと俺を見ているのではない。


(英二の方も見ているけど、その目が恋する乙女のような目なんだよな。)


意外にも英二を好きになるようなやつは同じような顔面凶器の人だったりがっつり格闘技系の子だと思っていたが以外にもギャル系だとは思わなかった。


「これはロードの練習とかで英二との時間を邪魔したら殺されそうだな。」

「どうした、邪魔だのどうのこうのって。」

「ん、なんでもない、なんでもない。」


考えていたことを口に出していた。

英二にはちゃんと聞かれてはいないのでよかった。英二を彼女に返却をしなければいけない時間だな。下手したら背後から刺されてしまう可能性があるからね。


「英二、俺は大丈夫だから加藤さんと今日のことについての最終チェックでもしてきなよ。」

「おう、お前にしては気がきくな。今日はしっかり働けよ。死ぬ気でな。」


英二は加藤さんの元に行った。これで俺の身の安心は保証される。

今日のアバターの調子に合わせるために体を動かしていく。体を動かすだけではなく能力もは発動させる。

体を動かした後に肺に溜めておいた火を人のいない方向に向かって吐く。調節は今だに慣れていないので失敗はしているが数回はブレスをすることが出来るぐらいの調節は出来るようになった。

次に鳥足に両手を変化させる。スムーズに変化することはできている。変化するのが遅いと使い物にならないのでスムーズな変化はありがたい。

この鳥足は握力が上昇するので強力な攻撃を盾で受ける時には変化させて武器を落とすことなくしっかりと耐えることが出来る。

あとこの足は攻撃にも移動にも使用することが出来るので便利だ。

この能力は他の能力と違って敵の不意をつくのには便利なのかもしれない。

最初の違和感を除いては問題はない。今日の試合は一人の体調一つが戦局を左右することはないはず。だが、みんなの体調がいいことに越したことはない。

あと気になるのは試合のステージだ。ステージは実際にフィールドへ行かなければわからないとのことなので試合開始少し前に確認しすぐさま戦略を練る必要がある。

これも授業の一環だ。急なステージ変更などは公式試合でもよくあることなので事前に立てた策は無駄になり新しい策が必要になることがある。

そのため、適応力を見るための試合とのこと。理事長もいきなり無茶なことをする。

下手したら面白くもない試合が続出するかもしれないのにだ。


「おい、そろそろ集まれ。今日の説明をする。」


英二が集合をかける。

まだ来ていない人がいるのではと思っていたら全員がもうすでに集まっていた。

ここ数日であまり練習に参加をしていなかった人たちも英二に素直になっていた。

彼は数日の間で加藤さんと一緒に参加に積極的ではない人に声をかけ続けたりするなどしてコミュニケーションを取っていた。

そのかいあってか英二の命令には素直に従うようになっていた。ただ、英二の命令は本当に参加をしなければいけないと錯覚させるようなことを言う。不良であるなら絶対参加を参加せずに先生にも怒られクラスに迷惑をかけることに抵抗を覚えないだろうが、下位の不良が上位の不良に命令されると従わざるを得ない。今はそう言った状況でもあるのかな。

冗談はまぁともかく、クラスの顔で面が悪い英二とクラスの中心人物になっている人気の加藤さんに何度も声をかけられたら参加しようと思うだろう。さらに参加しなければ英二の鉄拳が飛んできそうなので参加せざるを得ないだろう。


「さて、今日の試合だがステージがわからない以上は作戦なんてものは大雑把なものしか立てることしか出来ない。まずは役割を振り分ける。」


役割を決めるということらしい。


「まずは攻撃をする部隊。名前のままで敵の陣営に向かって進軍し戦闘をする。敵の戦力を削りつつ敵の目を集めてほしい。」


攻撃をメインとして暴れてもらうとのことらしい。それなりに火力と目立つことが重要になる。敵のリーダーを倒すのは最終手段であり、戦力を削って勝率を上げることだ。


「次は防衛。この試合ではリーダーを倒すことが勝利条件になっている。ならリーダーを守る役目が必要だ。俺だって数の暴力には負けるし息をつく暇がなく敵がやってきても精神的なスタミナが尽きてしまう。なら、ある程度俺を守る役目がいる。」


まぁ、攻撃陣をすり抜けてリーダーの首をとろうとする連中は絶対にいるだろう。そいつらからリーダーを守ることが主になる。


「次に攻撃と防衛のどちらにも参加できるような中間的ポジションだ。サッカーでいうミッドフィルダーだ。機動力がものをいう。」


2つにきっちり分けるとどちらかに特化した敵には押し負けることがある。たぶん。それに対応させるために配置するとのこと。さらに攻めるタイミングになったときに戦力を増やすことができる。


「最後に、特別部隊。前3つの役割に属せず特別任務をやってもらうことになる。奇襲をおこなったりなどその場その場で対応してもらう。」


英二はそういうとこちらを睨んでくる。俺に何かをやらせるつもりだ。


「さて、部隊の詳細は話したので誰がどこに配属させるかを言うからしっかり聞け。」


そう言って一人一人の部隊配属を言っていく。

攻撃部隊に配属していく人数が他と比べて多く、次にミッドフィルダー、防衛ときて特別部隊。


「さて、宗斗お前は決まって特別部隊だ。」

「決まってとはなんだ。どうせ俺が死ぬような命令を出すだけだろう。」

「何を言っている。無様に死ぬような命令しかださん。」

「、、、。」

「冗談だ。しっかりと働いてもらう。あと、お前は俺の指示なしでも勝手に動いてもいい。」

「ほう、その心は。」

「そんなのは決まっている。お前は自分で考え動いた方が本来の力を発揮できそうだからだ。」

「そんなことはわからないだろ。」


英二はその言葉を聞いて笑う。


「そんなの勘だ。よく当たる。」


勘だけで俺を好きに動いてもいいという最高の指示をもらった。


「みんな部隊の役割を全うしてもらう。指示は俺と加藤の2人行う。ここにいることが出来るのは数十分だけだ。その間に準備をしてもらう。手を抜くなよ。時間まで解散。」


英二はそう言って手でここから追い出す仕草をする。

みんなも控室から出ていく。フィールドに行ってアバターでの準備をする人もいれば外に出ていく人もいる。

来るまで一緒だった仮面女子は俺にお辞儀をしてフィールドに向かっていった。俺は調整はすでに終わったので飲み物を買いに行く。

フィールドにいて通路を通らずに控室に行くことが出来る。

この演習場の仕組みでフィールドと控室の壁を取り除くことが出来るので今日はそれをやっていた。

この仕組みに気がついたのは昨日の放課後の最後の方で気がついた。最初からこれをしておけば話し合いとかも簡単にすることが出来たのだろう。


「飲み物は季節で変わるのだろうか。新作の飲み物とか追加されないと同じもので飽きるかもしれないな。」


自販機の中身が代わり映えするのかを入学をしてから1ヶ月も経っていないのに心配をしている。これから行くところはいつも行く自販機であり仮面女子がいたところである。

辿り着くと先客がいた。クラスメイトではない。しかも見たことのある人だ。


「宮本とええと誰だっけ。名前知らないや。」

「あれ?藍田、試合の時間とか準備は大丈夫なの。」


宮本は手を振って答えてきて質問もする。


「試合はまだだし、俺は下っ端だから準備することもないんだよ。で、そちらの方は?」

「この前は名乗っていなかったな。私は木村ハルコ。よろしく藍田くん。」

「よろしく木村さん。そっちのクラスこそ準備は大丈夫なのか。」

「うん、俺たちは午後からになっているからね。しかも午前中は授業もないから暇なんだよね。」


そう言って手に持っている飲み物を飲んでいる。


「そこで飲まない、藍田くんは飲み物を買いに来たのですよね。邪魔になるから避けなさい。」

「そうだったの。ごめんね。」


2人の立ち位置的に自販機で買うにはかなり密着しなければいけないぐらい場所を取っていた。

木村さんは見た目とは違い気遣いがしっかりと出来る人だ。

宮本はマイペースだ。

それはそれとしておいて水を買う。ジュースとかはあまり飲みたくはない。口の中に何かが残る感覚を試合まで持っておくのは何か気持ちが悪いので水にする。

この自販機で水を買うのなら2種類ある。ただ常温とつめたいかのどちらかだ。季節によっては常温の場合が良い時がある。


「藍田くんは下っ端とか言っていたけどそんなことはないでしょ。あれを見る限りではかなり強いと思うし。」


木村さんがそう言ってくる。


「いや、強いのかは何を基準にしているのかはわからないけど下っ端だよ。」

「まぁそういうことにしておくよ。この聞き方はいつか対戦相手になるかもしれないやつの情報を手に入れようとしているみたいだからな。」


宮本はにっと笑った。


「そういえば、2人が1年ていうのしか知らないけど、どこのクラスなんだ。もしかしてAクラスなのか。」

「「せいかーい」」


2人揃ってブイサイン付きで答える。


「宮本を見るだけでどこのクラスか当てるのは簡単だからね。」


この学校は全国クラスの強豪校であるのでか強そうなを中学生をスカウトする。

なら、当然宮本はスカウトされ、クラスはAクラスだろう。


「そういえば、Aクラスはどこのクラスと試合をするんだ。1年のクラス数は奇数だろ。どこかのクラスが2回も戦うのか。」

「いや、俺たちは1年とじゃなくて2年のCクラスと戦うんだ。2年もクラス戦があって数も奇数だからね。」

「1年も経験差があるのに戦わせるって。この学校は意外とスパルタだよね。」


まぁ、俺がデモンストレーションで戦ったのがCクラスの先輩だったのでそのレベルのクラスならAクラスは勝利することも難しくはないだろう。相手がCクラスだと気を抜くと負けてしまう可能性は大いにあるが。


「まぁ、あの理事長と校長を見ればわかるよ。理事長が校長にスパルタにするように指示しているんだよ。見た目のインパクト通りと強豪校って感じだよね。」

「確かにあの見た目にはびっくりしたよ。」


うちの高校の1番記憶に残るのは何なのと聞かれればあの理事長の容姿だ。最初はすごく違和感なのだが、次第になれていくらしい。


「そういえば暇っていうけど宮本と木村さんみたいなクラスの中心人物ならやるべきことはあるだろ。」

「私たちがクラスの中心人物って言ったかな。」

「それはクラスリーダーは名前が載るからね、学生専用サイトにね。」


そう、クラスリーダーは専用サイトに名前が載るのでだれがリーダーなのかはわかるようになっている。そうでなければ誰かリーダーかわからずに試合をすることになりリーダーがわかっているほうが圧倒的な有利になるからだ。


「ああ、そういえばそうだったか。ならAクラスのリーダーが誰かわかるかな。」

「宮本、お前らはリーダー直前まで決めてないからサイトには載ってなかったよ。今頃は載っていると思うけどな。」

「それはそうだ。リーダーに指名されたやつがずっとやりたくないって渋っていたからな。」


と宮本が言う隣で木村がそれを冷たい目で見ている。


(こいつがリーダーでやりたくないからって駄駄を捏ねていたんだろうな。見た目や行動からその時の様子が容易に想像することが出来るな)


宮本はあくまで他人がそんなことをしていると言っているが木村の目線からお前がリーダーだということがわかるし、今まで誰のせいで大変だったのか、あと殺意がわかる。

やっぱり女性を怒らせると怖いんだな。

俺は木村が宮本に対しての殺意にだけは巻き込まれたくない。だから、早くこの場を離れることにしよう。


「それじゃ、飲み物を買いに来ただけだから俺は戻るよ。それじゃ。」

「うん、じゃあね。」

「ああ、また。」


宮本の寿命がいつ潰えるかは俺が見えるまでもないだろう。

試合までには復活することが出来ることを祈っていよう。

飲み物を買ったはいいが、時間までには余裕があるが演習場に戻っていく。

自販機が見えなくなる位置までくると男の悲鳴が聞こえてきたが自業自得なので何も考えずに足を進めて試合のことを考えるようにした。

演習場に戻って2階のテラス席に向かう。控室はなぜだか知らないが英二が追い出していて入ることが出来ないからだ。

2階からはフィールド全体の様子を見ることが出来る。

俺はみんなの練習をしっかりと見てこなかったので誰がどんな能力を持っていてアバターの運動力がどのぐらいなのかを知らない。

せっかく時間があるのなら見ておくべきだと思った。

フィールドの中央では加藤さんを中心とした何人かが能力の使い方の練習をしていた。

加藤さんが魔法陣のような補助を出しながら説明して尖っている氷を生み出して的に向かって飛ばしている。氷の大きさは中ぐらいのペットボトルぐらいの大きさなのだが当たればかなり痛そうだ。飛ばしている速度はそれなり。

仮面少女に聞いた話だと加藤さんのように能力で何かを生み出して、それを飛ばす能力はそれぞれ扱うための工程があるとのこと。

まず最初に設定した能力を起動させる。体の中でアプリのように何かが立ち上がるらしい。すると補助設定をしているなら魔法陣のようなものが出てくるらしい。

その補助はその能力で生み出すものを自動で生み出してくれるらしい。

そして生み出したものをどこに向けて飛ばすかを設定する。直線で飛ばすのなら簡単らしいのだが弧を描くように飛ばすのなら少し難しいらしい。

上がって下がるような弧を描くのならまず上昇補正をかけて上昇するようにし途中で下降補正をかけて下降するようにすることでその軌道の弾を撃つことが出来る。

その逆の軌道なら逆のことをすればいい。

さらにこの補正は時間または距離を目印に事前に設定することが出来る。

これは最初から補助で設定していたといても動く相手とは見当違いのところへと飛んでいってしまう。なので敵に撃つ際には実際に見てから設定をしなければいけないらしい。

加藤さんはまた魔法陣を出して氷を生成する。そして、的とは違う向きに体の向きを変えて氷の弾を発射する。それは的に吸い込まれるように弧を描いて飛んでいき破壊した。

止まっている的だがしっかりと中央を捉えて破壊することに成功していることから加藤さんはしっかりと能力を扱えていることがわかる。

そこからは周りの人が的に向かって弾を発射をして当てる練習をしている。直線では当てることは出来ているのだが弧を描いては着弾率が半々だ。


「あの弾って火、氷以外に水、土、風があるのか。効果も様々だから把握していないといけないな。」


弾の種類は複数あるらしい。火は相手を燃やす、氷は質量、固さで潰したり槍状にして刺す。水は圧力で押す、動いている敵の足止めとかが出来そう。土は速度はないが弾同士の相性も良さそうで氷のような効果を持っている。風はよくわからない。斬り裂いているわけでもなさそうだ。

加藤さんは新しい的を用意してそこから距離を取っている。何をするのかと思ったら走り出した。そして、能力を起動させて走りながら的を射抜いていく。ただ走りながらではなく走りながら弾を生成して止まって撃つなど様々な方法をしている。

今のところ全弾必中。

加藤さんの顔はいつもクラスで明るい雰囲気を出しているのに今は真剣な顔つきになっている。


「ただ、明るいだけのギャルではなかったのか。意外だ。」

「そんなこともないぞ。」


振り返ると英二がフィールドを見ながら俺の独り言に答えた。


「いつもロードのことになるとあんな感じの顔つきになっていたからな。しかも能力の使いかたがうまい。理事長が才能を開花させてくれって言ったけどこのクラスそれ必要なのか。」

「いつのまにいたんだよ。驚いた。」

「宗斗、お前って案外一つのことに集中して周りが見えなくなるタイプだろ。言われたことないか。」

いい指摘だ。

「それは小さい頃から何度も言われて矯正だって言われて酷い目に何度も何度も合わされたよ。治らなかったから仕方がないよ。」

「そうか、ならいいんだ。」


英二はため息をついた。


「どうした。フィールドで試合直前の練習をしているクラスメイトを見てため息なんて。」

「いや、才能を開花させてくれって理事長に言われたが誰がどんな才能を持っているのかなんてわからないものなんだなって思ったからだ。わからないとどんな対策をすればいいかなんて分かりもしないからな。」

「1週間そこらですぐにわかるほど目がいいわけじゃないだろ。なら、地道にみんなの才能ってものを見つけていけばいいだろ。」


英二はリーダーという役職になったり理事長からお願い事を受けたりと彼の経歴からは拒絶したりさぼっていそうな感じがするのだがしっかりと仕事している。


(こんな見た目していながら仕事をしっかりとこなそうとしているとは根は真面目なんだろうな。ギャップがあって面白いからいいけどね。)

「そういうものなのか。俺は少し焦っているのかもしれん。お前が呑気そうなのを見て少し肩の力を抜くことが出来たわ。」

「喧嘩売っているの。買うよ、お前の喧嘩なら。」

「あほ、礼を言っているんだよ。柄でもなく試合前だから緊張でもしているんだ俺は。宗斗、お前にはしっかりと働いてもらうからな。」


頭をかきながら勝手に反省をしているようだ。気味が悪い。


「俺がしっかりと働けるような環境は英二の指示にかかっているだよ。いつもよりも険しい顔をせずに出来ない笑顔を作るように意識でも割いた方がいい作戦でも思いつくよ。」

「笑顔ね。小さな子供を泣かせた記憶しか出てこないから苦手だな。作るのは。」

「、、、ドントマインド。」


英二の悲しそうな顔を初めて見てほんの少しだけ英二、大半をその小さな子供に同情をする。


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