第15話「先生に歳を聞くのは小学生に上がる頃には卒業してください」
「とまぁ、俺の圧勝だったてわけだ。、、、おいそんな目で俺を見てくるな。」
あんだけ落ち込んだり反抗していた英二さんがすっきりとした顔になって帰ってくると面白くて誰もが親が子を見るような目になるのも仕方がない。成長したんだな、こいつは。
「いやいや、それにしてもよくやってくれたぞ、英二くん。今後も頼むぞ。」
英二の肩をポンポンと優しく叩いてあげる。
「そうだ。よくやった。ヘタレリーダー。」
若松は俺が叩いた肩と反対側を叩く。
「そうですわ。私の抱擁で癒してあげましょう。」
美野が正面から腕を大きく広げて英二に急接近していくのだが、俺たちの腕を振り解いて一目散に逃げ出した。
「俺に抱擁はいらん。美野追っかけてくるんじゃねぇ‼︎」
英二は抱擁が嫌で逃げてはいるがあのいじけたときとは違って顔は何かつきものが落ちたようだ。心配して損した気分になる。
「お前たちよくやった。」
背後から山田先生に声をかけられた。気配を感じなくて口から心臓が飛び出しそうになった。
「「ありがとうございます。」」
「まさか、私の後輩を倒すとは思っていなかったが社会人チームに1年生のうちから勝つことがこれからの将来にもいい方へと近づくだろう。その分大変なのだがな。」
山田先生は腕組みをしながら俺たちを見て感心をしている。それもそのはずだ。終わりの集団と学校では言われているこのクラスが逆境を乗り越えたからだ。
しかし、山田先生は気になることを言った。
「先生、今後輩を倒したと言っていましたよね。誰のことですか。」
「うん、ああ。お前たち2人が倒した騎士の東堂アリサとリーダーだった日々成がだ。高校と大学の後輩でなよく可愛がったものだ。脳筋のアリサは何度倒しても立ち向かってきたし、頭でっかちの日々成は私から逃げようとするものだから捕まえて特訓させたものだ。どうしたお前ら。」
先生は昔話を楽しそうに語っていたのだがこちらの雰囲気がなんだかおかしいと気がついて声をかけてきた。
「「「先生って歳いくつですか?(だ)」」」
俺と若松と英二はついつい禁句を言ってしまった。
「お前たち私直々に指導してやる。生徒と思わんから覚悟しておけ。」
「「「散ッ‼︎」」」
「逃すと思ったら大間違いだぁ‼︎」
山田先生はこちらに聞き迫る表情でこちらに急接近してきたので3方向に分かれて逃げることにする。捕まったらおそらく精神的にも死んでしまいそうだからだ。
「男子って馬鹿ですわね。」
「あの発言を聞いたらそう思います。」
美野と置野さんは呆れた顔をしながら向き合うとおかしくなったのか笑い始めた。
走る俺たちもこの勝利というものを心から体までみんなで共有できたことで嬉しくなって笑い始める。
脱落した他のクラスメイトもこっちにやってきた。
向かっていくとみんな一目散に逃げていく。山田先生は俺をロックオンしているらしい。
この嬉しさも今のこの恐怖もみんなにお裾分けしてあげなくちゃ。
このままこの先もみんなで走り続けることが出来たらいいな。
光すら刺すことのないどん底の暗闇に生まれた時から鎖で縛られどこにも行けず誰にも助けられることがなかった。むしろ紙屑を投げられるような嘲笑の対象だった俺がこんな面白くて頼り甲斐のある仲間を見つけることが出来た。まだここが暗闇であることには変わらないが天には一等星のように光り輝く希望を見つけることが出来た。目標が出来たんだ。
走り続けようとあの光を見失わないように全速力で、この手伸ばして。
これから俺は様々な障害や人物に出会って立ち止まることがある。けど、今日の勝利を思い出せばまた走り出すことが出来る。
「待ってろよ。光の勇者を倒すのはこの俺だからな。」