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やり直し公女の魔導革命 〜処刑された悪役令嬢は滅びる家門を立てなおす〜 遠慮?自重?そんなことより魔導具です!  作者: 二八乃端月


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第54話 エインズワースの復活(後編)

 


 陛下が玉座につく。


「一同、顔を上げよ」


 いまや聞き慣れた陛下の声に、皆が顔を上げた。




 今日の陛下は正装だ。


 豪奢な服、華やかなマント。

 頭上に輝く王冠––––略式ではなく正式なものを見るのは、この人生では初めてになる。


 そういえば、こうして心の余裕を持って陛下の装いを観察したことはなかったかもしれない。


 私が、ほへー、と陛下を見上げていると、陛下がちらりとこちらを見た。


 目が合う。


 陛下は、一瞬私の姿を観察すると、ふっと笑って前に向き直った。


(?)


 なんか、ちょっとだけ引っかかる笑み。


 あの笑顔は、どこかで見たことがある気がする。

 悪戯を企む男子のような––––?


(???)


 だが私の引っかかりは、陛下の話が始まったためにすぐにうやむやになった。




「本日こうして新たな仲間を叙爵し、陞爵できることは、まことに喜ばしい。それは彼らがその爵位に見合うだけの功績をもって、我がハイエルランドの民に報いた結果であるからだ」


 陛下は『国』とは言わず『民』と言った。


 おそらくこの場に平民出身者がいることを意識したのだろうが、陛下のその心遣いは、確かに私の心に届いた。


 当事者であれば、なおのことだろう。


「先般残念なことに、これとは真逆とも言える行為を行った者たちがいた。彼らの家門のこれまでの貢献を否定するものではないが、貴族という出自に溺れ、本来果たすべき義務を怠り、仲間を裏切った行為は、到底容認することはできない。この場にいる諸君が彼らの過ちから学び、二度と間違うことがないよう期待する」


「「はっ!!」」


 謁見の間に響き渡る臣下たちの声。


 決してそろってはいなかったが、ホールにこだまするその声は、私の心を痺れさせた。


「それでは早速、授与を始めよう」


 陛下の言葉に、今回進行を命じられた中立派の侯爵が、あとを引き継いだ。




 ☆




 爵位の授与と陞爵は、下位の爵位から始まった。


 新たに十名を超える騎士爵が誕生し、ほぼ同数の男爵が誕生する。


 続いて子爵、伯爵への陞爵が行われ、やがて父の番がやって来た。




「オウルアイズ伯爵、ブラッド・エインズワース卿、前へ」


 進行役の侯爵の言葉に、すっと進み出るお父さま。


 力まず、でも颯爽と叙爵の場に向かうその姿に、我が父ながら見惚れてしまう。


 そう。

 最近は忘れがちだったけれど、ちゃんとしていれば格好良いのだ、私の父は。


 お父さまが陛下の前で立礼し顔を上げると、陛下は深く頷き、傍らの侍従から書状を受け取り、読み始めた。


「オウルアイズ伯爵、ブラッド・エインズワース。我が国存亡の危機に際し、率先して主君を護った貴君と息女、また真実を明らかにすることに尽力した子息の献身は何ものにも代え難い。よってその功績の大なるを認め、貴君の持つ伯爵位を侯爵へと陞爵。王家が所有するグラシメント地方の西半分を領地として下賜するものとする」


(「「おお……!!」」)


 ホールがざわつく。


 皆が驚くのも分かる。

 私自身も、思わず陛下を凝視してしまった。


 王国西部のグラシメント地方は、王国最大の穀倉地帯だ。


 広々とした平野に、なだらかな丘と森。

 そこを流れる2本の緩やかな川。

 まさに『王国の食料庫』と言って差し支えない、この国で最も豊かな土地。


 そして––––西の公国が度々奪取を目論んできた、国境を擁する半係争地でもある。




「オウルアイズ侯」


「はっ」


 陛下に呼びかけられたお父さまが、短く返事を返す。


「グラシメント西部の下賜については、土地が土地だけに辞退してもよい。だが、儂はそなたに託したいのだ。受け入れるのであれば最長3年間の国軍派遣を認めよう。––––どうするかはこの場で決めよ」


「!!」


 息を呑む父。


 これは、陛下からのメッセージだ。


『この国の食料庫を––––命運を預ける。だから、命を賭して守りぬいてみせよ』と。


 貴族派家門の多くが爵位を剥奪され、第一騎士団が解体された今、ハイエルランド王国の軍事力は半減している。


 統合騎士団は発足したばかりで人員確保が目下の課題。


 今日、騎士爵、男爵に叙爵された家門も、自前の騎士団や領兵隊を整えるには、相当な時間がかかるはずだ。


 こんな状況でもし、公国が侵攻して来たらどうなるか。


 公国に竜操士がどの程度残っているかは分からないが、先日逃げおおせた一騎だけでも、とてつもない脅威となる。


 だからこそ、父に––––『レティシア』という切り札があるエインズワース家に、グラシメント西部を託そうというのだろう。


 まるで王国の『決戦兵器』のように見られることに思うところはないではないが…………陛下とて必死なのだ。


 国を守るために。




 そんな土地を預けると言われた父は、果たしてどんな返事を返すのか。


 受け入れるのか、辞退するのか。


 そう思ってソワソワしながら見ていると、父は静かに一礼した。


 そして、


「陛下の大恩に感謝し、そのご期待に沿うことをお約束致します」


 きっぱりと、そう言い切った。


 再びホール中がざわめく。

 だがそれは、父に対する尊敬のざわめき。


 父の言葉に、陛下は何度も頷いた。


「そうか。引き受けてくれるか」


 そうして父は、我が国でもっとも力のある貴族家の当主となって、私の横に帰ってきた。


 私に向かって頷く、お父さま。


 そして、今日最後の叙爵者の名が呼ばれた。




「オウルアイズ侯爵家長女、レティシア・エインズワース嬢。前へ」


「はい!」


 私は、陛下の前に進み出ると、カーテシーで礼をした。


(「「ほう……」」)


 なにか、全方位から温かい視線を感じる。


 ……さっきより視線の数が圧倒的に増えている気がするのは、気のせいだろうか?


 気恥ずかしさを振り払って陛下を見上げると、陛下もまた好々爺のような顔で私を見ていた。


(もうっ)


 私が顔を顰めると、陛下は「ごほんっ」とわざとらしく咳払いをして、侍従から書状を受け取った。


 陛下がその書状を開き、読み始める。


「オウルアイズ侯爵家長女、レティシア・エインズワース。現エインズワース男爵である父親のブラッド・エインズワースの指名により、戦時特別叙爵勅許状の規定に基づき、同男爵位をレティシア令嬢に継承するものとする」


「は。謹んでお受け致します」


 陛下の口上に、一礼し、書状を受け取る。


 我が国初の女性への叙爵は、そうしてなんともあっさりと終わったのだった。




 私が再びカーテシーをして、父のもとに戻ろうとした時だった。


「ああ、エインズワース女男爵よ。まだあるのだ」


 後ろから陛下に呼び止められる。


「はい。なんでしょうか?」


 私が首を傾げながら陛下の前に戻ると、陛下は侍従からまた一枚書状を受け取り、それを読み始めた。


「エインズワース女男爵、レティシア・エインズワース。先の王城襲撃事件において、卿は自らの身を挺して、王と王子、さらにはここに臨席する多数の騎士たちの命を救った。その献身は何ものにも代え難く、またその功は、建国以来、類を見ないほど大である。––––そこで朕はそなたの功績を讃え、卿が持つ男爵位を『子爵』に陞爵。さらに王家が所有するグラシメント地方の東半分を領地として下賜するものとする!」


 読み終わり、書状ごしにチラッと私を見る陛下。

 私はそんな陛下に、思いきり聞き返した。



「はいいーーっ??!!」




じ、次回こそ第一章エピローグ……いけるのか?!


【読者の皆さまへ】


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― 新着の感想 ―
[一言] 飛竜って何が弱点だろうか?速射砲で対抗するべきかな?  公国に未来人が居そうで怖い!
[一言] 根回し無視のサプライズ! まぁ反乱みたいなもの起きたからどこから漏れるかわかったもんじゃ無いからなあ… 子爵へ叙されるのも貢献からいえば納得ですね。
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