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やり直し公女の魔導革命 〜処刑された悪役令嬢は滅びる家門を立てなおす〜 遠慮?自重?そんなことより魔導具です!  作者: 二八乃端月


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第36話 一つ目の立証 - 『実演』

 


 カン、カン、カン、カン!


 裁判長が木槌ガベルを叩いた。


「静粛に! 静粛に!! ––––弁護人、参考人に対する言葉が過ぎますぞ。相手方を侮辱するような物言いは控えなさい。あまり度がすぎるようなら、本法廷は貴君への法廷侮辱罪適用を検討することになりますぞ」


 どっ、と笑いが起きる。


「ぐっ……!」


 歯ぎしりし、こちらを睨む弁護士。


 私は微笑し、彼に小さくカーテシーをしてみせた。


(「「わははははははははっ!!」」)


 なんか、さらに笑いが広がった。




 裁判長が、カン、カン、と木槌を叩く。


「審議を続けます。––––参考人、先ほど貴女から『見えない魔力を音として聴く』という提案がありました。その準備をして頂いてもよろしいですかな?」


「承知致しました」


 一礼して証言台を降りた私は、証拠品が並んだ台のところに歩いて行った。


 傍らに立つ兄と目が合い、頷いてみせる。


 兄が裁判長に向かい挙手して言った。


「裁判長。5番の証拠品は、参考人レティシア・エインズワースが本件の捜査のため開発した『魔力探知機』です。取り扱いが難しいため、参考人自身の手で操作してもらいたいのですが、許可頂けますでしょうか?」


「もちろん許可します」


 頷く裁判長に会釈をすると、私はその機械––––魔力探知機を手に取った。




 私が苦労して作ったこの探知機は、二つのユニットから構成される。


 一つは、肩掛けのカバンに収納された本体。

 もう一つは、本体とケーブルで繋がるハンドプローブだ。


 本体には二つのダイヤルがついていて、プローブの見た目はハンドマイクのようにしてある。


 昔の怪獣映画を見たことがある人なら『ガイガーカウンター』を思い浮かべる人もいるかもしれない。


 本体の鞄を肩からかけ、プローブを手に取る。


 私は本体のセンサー感度ダイヤルをしぼり、波長検出ダイヤルを『中周波』に合わせると、裁判長の方に向き直った。


「それではまず、こちらの魔力探知機を使って通常の魔力を検知するところをご覧頂きたいと思います。––––検事さま。お手数ですが何か魔法を使って頂けますか?」


 グレアム兄さまは私の言葉に頷くと、早速魔法の詠唱を始める。

 そして、


「『灯火トーチ』!」


 発動句とともに、兄の指先に光が宿った。


 私はプローブを兄の方に向け、少しずつ感度ダイヤルを回してゆく。


 やがて––––


 《ビーーーー》


 探知機本体側面のスピーカー部から、ビープ音が鳴った。


(「「おおおお……」」)


 議場がどよめく。


 私がプローブを向ける方向を変えるとビープ音は遠ざかり、魔法に向けると再び大きくなる。


「このように、こちらの探知機では、魔力を『音』として聴くことができます。––––検事さま、ありがとうございます」


 兄が『灯火トーチ』の魔法を解除すると、《プツッ》という音を立てて探知機のピープ音も止まった。




 私は再びセンサー感度ダイヤルをしぼると、議場を見回した。


「さて。それでは早速、問題の『箱の音』を聴いてみましょう。––––検事さま、よろしいでしょうか?」


「いつでも大丈夫です!」


 グレアム兄が『箱』を胸のあたりに掲げて見せる。


 私は波長検出ダイヤルを、今度は『高周波』に合わせ、プローブを箱に向けた。


「それでは、お願いします!」


 頷いた兄が、箱のボタンを押す。



 押す––離す––押す––離す––



 押しっぱなしでは、あっという間に魔力を使い切ってしまうため、押し離しを繰り返してもらう。

 これも事前の打合せ通り。


(「「…………」」)


 議場の誰もが見守る中、私はゆっくりダイヤルをまわし少しずつ感度を上げてゆく。


 やがて––––


 《ビーーッ、ビーーッ、ビーーッ》


 魔力探知機が、人に感知できない魔力を捉える。


(「「おおおおおおおおーーーー!!!!」」)


 議場が揺れた。




 先ほどと同じようにプローブを向ける方向を変え、音の鳴り方を変化させる。


 完全には難しいだろうが、こうすることで見ている人たちの疑念を少しでも解消できればと思う。


「ほう、面白いものだな」


 裁判長の隣に座る陛下が、興味津々といった様子で探知機に見入る。


「左様。私もこういった魔導具は初めて見ますなあ」


 隣の裁判長が、うん、うん、と頷いた。




 ひと通りプローブを動かし終わり、兄に声をかける。


「検事さま、ありがとうございました」


 ボタンから指を離す兄。

 私は裁判長に向き直り、一礼した。


「以上でございます」


 再びの歓声。

 そして、やはり––––


「い、異議ありぃっ!!!!」


 横から金切り声が飛んできた。




 弁護士は目元をぴくぴくと引き攣らせ、背後の公爵は目を細め、険しい顔でこちらを睨んでいる。


 弁護士が叫んだ。


「いっ、今のデモンストレーションはイカサマだ! 検察と参考人が共謀して、タイミングを合わせて音を鳴らしているに違いない!!」


 その言葉に、ざわつく会場。


(「そういえば、あの検事と参考人は兄妹でしたな」)


(「まさかさっきのって、本当にイカサマなのか?」)


 苦しまぎれの異議が、議場に疑念を広げてゆく。


 私は、すっ、と手を挙げた。


 カンカンカンッ、と裁判長が木槌ガベルを叩く。


「静粛に! 参考人の発言を認めます」


 私は一礼して、正面に座る陛下と裁判長に語りかけた。


「こちらの探知機ですが、ダイヤルを合わせましたので、どなたに持って頂いても大丈夫です。––––よろしければ、どなたかお使いになってみませんか?」


「「…………」」


 顔を見合わせる、陛下と裁判長。


 次の瞬間––––


 ガタッ ガタッ!!


 私の言葉に、陛下と裁判長がすごい勢いで立ち上がった。



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― 新着の感想 ―
[一言] いつの世でも弁護屋ってウジ虫のクズばかり
[一言] 私の言葉に、陛下と裁判長がすごい勢いで立ち上がった。←好奇心を抑えられない大人子供達? その気持ちは分かる。
[一言] ワックワクのおっさん達はさぁ…
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