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第18話 私の小さな女男爵さま

 


 ☆



 家族会議から一週間後の週末。


 エインズワース邸の庭には、多くの人々が集まっていた。


 その数、ざっと五十人。


 父と兄たちの他、王都工房の人たちや、はるばるオウルアイズ領の工房からやってきた職人たち。


 その他、木工関係の材料屋さんや外注さんなど、魔導小銃開発に協力してくれた人々。


 さらには王都在住の親戚や、なぜかグレアム兄の同僚の若手騎士たちまで見学にやって来ているありさまだ。




「うぅ……緊張してきた」


 大勢の人々を前に気後れしていると、傍らに立つ侍女のアンナがそっと耳打ちしてくれた。


「大丈夫ですよ、レティシア様。この数日、頑張って最後の仕上げをなさっていたではないですか。お嬢様の努力と成果を、お世話になった方々に見てもらいましょう」


「そうなんだけどね……」


 観客たちは、庭の池をぐるりと半周するように場所をとり、興味津々といった顔で私と、傍らのテーブルの台の上に置いた魔導ライフルを眺めている。


 なんとも言えない圧迫感。


 こんなに注目されるのは、回帰前の第二王子との婚約発表パーティー以来だ。




 あの時も最悪だった。


 皆の注目を浴びる中、二人踊ったファーストダンス。

 一見優雅に踊りながら、彼は見えぬところで私を手荒く扱った。


 思わず顔をしかめるほど力をこめられた手。

 乱暴なリード。

 私は人形のように振り回された。


 ––––思い出すと、怒りと屈辱で泣きそうになる。


 そんな私を見ていたアンナは、片ひざをつき、私の手を包み込むように握った。


 温かい手。

 私を慈しむ手。


 その優しい瞳が、まっすぐ私を見つめる。


「お嬢様は今日、この魔導具で世界を変えられるんです。未来を切り開かれるんです。それは、この世界の誰にも……レティシアお嬢様にしかできないこと。何を気後れすることがありましょう?」


 アンナはそう言って微笑むと、最後にこうつけ足した。


「お嬢様なら、きっと大丈夫です。––––私の小さな女男爵さま」


 胸の奥から熱いものが、勇気が込み上げてきた。


「ありがとう、アンナ。勇気でた」


 私はアンナの頬にキスすると、私の準備を待っているお父さまのところに歩いて行った。




「お父さま、お待たせして申し訳ありません」


「始めても大丈夫かい、レティ?」


 私の緊張を察したのか、お父さまの言葉が柔らかい。


 私は、大きく頷いた。


「はい、お願いします!」


 父は頷くと、観客に向かって声を張り上げた。


「諸君! 今日は我がエインズワース家の新作魔導具披露会によく集まってくれた。––––すでに知っている者も多かろうが、今回披露する魔導武器は、我が娘レティシアが考案・設計し、工房の職人たちとともに製作したものだ。その名を『魔導ライフル』という。私はこの武器が世界を変え、歴史を変えるものであると確信している! 諸君もぜひ、その威力をその目で確かめて行って欲しい。––––以上だ」


 お父さまの朗々とした演説に、皆の注目が私たちに集まる。


 続いてヒュー兄がアナウンスを引き継いだ。


「それではこれより試射を行います。魔導ライフルはこれまでにない『銃』という種類の飛び道具です。目標は池向こうに設置した板金鎧プレートメイルと魔導盾。それらをこちらの岸から我が妹レティシアが自ら狙い撃ちます。皆、まばたきをせず、しかとご覧下さい!」


 そう言って私を振り返り、ウインクするヒュー兄。


 その茶目っ気たっぷりの仕草に、思わず笑ってしまう。




 ガヤガヤと観衆がざわめく。


「え、あの子が撃つの?」


「伯爵家のお嬢様だろ?」


「鎧はともかく、魔法で強化した魔導盾には傷もつけられないだろうさ」


 そんな声が聞こえる。


 つかみは上々。

 ––––そう思った時だった。


「あんだと、ゴラァ。うちのお嬢があれしきの盾も抜けねえ武器を作るってえのかよ? お?!」


「うちの工房をバカにしてんじゃねーよ」


「はっ! 言わせとけ。結果を見りゃあそのトンチキも腰をぬかすだろうぜ」


「こっ、腰がはあああ?!」


 ぶっ、と噴き出す私。


 言うまでもない。

 王都工房の人たちだ。


「レティシアお嬢様っ! 頑張ってくださああい!!」


 2体のクマが描かれた手製の旗を振りながら叫ぶローランド青年。


 やめて恥ずかしい……。


 顔を覆った私に、ヒュー兄が笑いながらひと言。


「レティ、愛されてるなー」


「笑いごとじゃないですよぅ」


 頬を膨らませた私の頭を、兄は楽しそうになでたのだった。



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