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第105話 空の戦い、地上の戦い

お待たせしました。

更新再開です。

 


 ☆



 市壁上空を通過した私は、ギアを一段落として後ろを振り返った。


 タタタタタタタタッ!

 ダダダッ! ダダダッ!

 ドンッ!! ––––ドンッ!!


 《ギャーーーーッ》


 私を追いかけてきた数百匹のカラスたちは、重層的に構築された弾幕の嵐に突っ込み、黒い滝のように叩き落とされてゆく。


 だけどその半分以上は弾幕の網をかいくぐり、引き続き私を追いかけてきていた。


(やっぱり一回じゃ無理ね。––––なら、もう一回っ!!)


 私は街の時計塔をかすめるようにして右旋回する。


『レティっ、増速!』


 ココの声に増速しながら、『8の字』を描くように飛ぶ。


 そうして二、三回旋回したところで、市壁の上に複数の加速魔法陣を確認する。


「それじゃあ二回目、行くわよ!」


 今度は、西側から弾幕に突入する。


 私は、仲間を殺され怒りの啼き声をあげながら追いかけてくるカラスたちを引き連れ、再び弾丸と魔法の嵐の中に突っ込んだ。




 ☆




 そうして同じことを三回繰り返したときだった。


「––––?! ついて来ない???」


 後ろを確認した私は思わず叫んだ。


 度重なる弾幕への突入で百匹程度にまで数を減らしたカラスたちは、ついに私を追うのをやめ、散開して距離をとり始めた。


「……ここまで、かな」


 予想していたことではあった。

 なにせ相手は鳥類の中でも知能の高いカラス。

 同じ手がいつまでも通用しないことは目に見えていた。


 加えてそろそろ地上の敵が、目前に迫ろうとしている。


 地を埋め尽くす、おぞましい魔物の群れ。


 準備をしなければならない。

 地上戦の準備を。




 私は魔導ライフルの右セレクタを「3」に合わせ、銃口を空に向けた。


 タンッ!

 ––––パァンッ!!


 射出された弾丸が上空で破裂し、しばらくその場で眩ゆい光を放ち続ける。


 要するに、照明弾だ。


 そしてこれは今回、地上側に地対空戦闘の終了を知らせる合図となっている。


「さて。ここから先は、空の戦いね」


 私が呟いた時だった。


『レティ! 後ろっ!!』


「!!」


 ココの叫び声。

 迫る魔力反応。

 私は咄嗟に、左に回避する。


 ––––ギャー! ギャー!!


 いつの間にか背後の上空から迫っていた数匹のカラスが、私を掠めて下方に飛び去って行った。


「あぶなかっ––––」


『左だっ!!』


「っ!!」


 四方八方から続けざまに襲ってくるカラスたち。

 私はそれらを魔力探知を使いギリギリで回避する。


「このままじゃ––––っ、らちがあかない!!」


 自動防御アウト・ディフェンシアがあるとはいえ、あれも相当な魔力を使用する。


 避けずに攻撃を受け続ければ、すぐに魔力酔いでフラフラになってしまうだろう。


 カラス達は二、三羽でグループを作り、高いところから高低差を利用して速度を乗せて波状攻撃を仕掛けてくる。


 このままじゃ、ジリ貧になる。


「それならっ––––」


 私はカラスたちの一瞬の隙をつき、


「上昇っ!!」


 飛行靴に魔力を集中。

 急上昇して、カラスたちのさらに『上』に逃げたのだった。




 ☆




「レティっ!!」


「お嬢さまっ!!」


 下方から仕掛けてくるカラスたちを躱しながら凌いでいた私のところへ、お父さまとアンナが上がってくる。


「すまん。グレアムへの引き継ぎに手間取った」


 謝るお父さまに私は首を振る。


「私は大丈夫です。この戦いは編制も陣地も即席ですから、お兄さまも勝手が違うと思います。早く『空』を片付けて、地上の応援に行きましょう!」


「そうだな」


 私たちは頷きあうと、眼下を舞うカラスたちを見下ろした。


「私が散弾でカラスの相手をしますから、お父さまとアンナは私に『追従トラヘリオル』を発動して、背中を守って下さい」


「了解した」 「はいっ!」


 返事とともに、クマに命令して魔法を起動する二人。


 今のところ散弾……『魔力収束弾拡散射撃モード』を使えるのは私のライフルだけだ。


 お父さまの銃は、実体弾と通常の魔力収束弾。

 アンナの銃は、実体弾のみとなっている。


 やみくもに撃っても空を飛びまわるカラスには当たらないだろう。


 従って私が攻撃を担当し、二人には私の死角をカバーしてもらう。


「それじゃあ、行きます!」


 私は魔導ライフルを構えると、一番近いカラスのグループに向かって引き金を引いた。




 ☆




 ドンッ!

 ––––ドドンッ!!


 爆散し、落ちてゆくカラスたち。


 時折死角から突っ込んでくるグループには、お父さまとアンナが対応してくれている。


 そうして、数十匹程度まで敵を削った時だった。


「っ! お嬢さま、カラスたちが––––!!」


「逃げ始めたわね」


 アンナの言葉に射撃の手を止め、カラスたちを睨む。


 魔物たちは私たちに背を向け、散り散りになって逃げ始めていた。


 その一部に狙いをつけ、撃つ。


 ドンッ!

 ––––ドンッ!!


 仕留めた魔物は、一匹。

 この様子では、当てるのも難しくなってくるだろう。


 それを見ていたお父さまが目を細めた。


「……ダメだな。これでは我々三人が固まっている意味がない」


「散開して戦いますか?」


 私の問いに、お父さまは首を振った。


「それも危険だろう。射撃しているときは背中がガラ空きになる」


「では、どうすれば???」


 お父さまは私を見て微かに笑った。


「空の戦いはここまでということさ。あとは地上で、襲ってくる個体を都度撃破するしかあるまい」


「しかし…………いえ、そうですね。空中戦闘にこだわるより、見張りを立てて都度撃ち落とす方が、地上戦闘にも参加できて良いのかもしれません」


 正直『あともう少しなのに』という思いもある。


 だけどそれによって貴重な戦力が少数の敵に拘束されるのは、戦場全体のことを考えればマイナスだ。


 私は地上に視線を落とした。


 地を埋め尽くす魔物の軍勢は黒い波のように私の街に迫り、ついに二丁の重機関銃が火を噴き始めている。


 敵の先頭はすでに、北の市壁から一・五キロのラインを突破していた。


「分かりました。みんなのところへ戻りましょう」


 私たちは頷き合うと、北の市壁に向かって降下したのだった。



前回更新から間が空いてしまいました。

申し訳ありません。


その間、私が何をしていたかというと……全力で原稿を書きまくってました。

二巻の原稿を。

おかげでちょっと活字恐怖症気味です。


はい、という訳で皆さまにお知らせです。

本作の書籍二巻の発売予定日が決まりました!


12/15(金)です!!

※某書籍情報サイトに予定日が出ておりました。


……例によってまだ校了もしておりませんが、きっとちゃんと出るはずです。


内容としては、テオ・ソフィアとの出会い〜テオとの再会〜領地に起こったとある事件の顛末まで。


ぶっちゃけ、後半三分の一はほぼ書き下ろしです!

魔物襲撃事件は長すぎて入りませんでした(白目)


これに伴い、基本設定は共通ながら、Web版と書籍版でストーリーが変わります。

二回楽しめる、と思って頂ければ幸いです。


Webの更新も再開致しますので、引き続き応援よろしくお願い致します!


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[良い点] 空中戦はもっと派手かなって思ってました。わりとサクッとしてました。 [気になる点] なかなか敵がわからないですね。 [一言] お疲れ様でございます♪毎回とても楽しみです。二巻発売日決定おめ…
[一言] 白い鰐(原稿)は怖いと某漫画家さんも言っていましたから。 逃げようとするとのっぺらぼう(白い原稿と締切日)が襲ってくる夢を見ると別の漫画家さんも言っていました。 無理はしないでくださいね。 …
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