金恋SS『ラムネ味のチョコボーロ』
11月上旬。
隣室の央路との銀のラブリッチェマーク、その総どりをかけた勝負。
相変わらず続いていて、今度央路の部屋にやってきたら、どうも変わり種を買ってきた。らしい。
央路はさっきから、レジ袋からそのパッケージを見せびらかしてくる。
色覚に乏しい理亜には、反射光で見るそれのなにが特別なのか、見ただけではわからず段々とうざったくなっていく。
「だからなんだよ、見えてねぇって……」
しぜん、睨むようなかたちになっていた。
抗議はすぐに届き、央路も婉曲なことをやめる。
ようやく彼が喋る段によると、ラムネ味のチョコボーロだという。
「てめぇそれチョコの要素欠片も残ってねぇやつじゃねぇかっ!!?」
困惑する央路。
「おのれ森○――いいや、森○のラムネ、嫌いじゃないけど。
ただでさえ味がよくわかんないのに、チョコのタイトルでラムネ出して欠片もチョコ要素残ってないんだぞ?
チョコボーロからチョコ抜けたらただのボーロじゃん……?
買ったこと?
ああ、おもいっきしチョコ味とラムネと入ってると勘違いしてた。
たく、人様の童心をもてあそびやがって。
素直にラムネのガワをチョコ味にコーティングにしておけよって、ラムネ風味とかほんと」
どうやら手ひどく期待を裏切られたようだ。
すっかりげんなりしている。
「いやラムネ風味チョコじゃなくてさ?
チョコ味の!? チョコを! ラムネとの禁断の融合召喚っっつつつ!!!
――が、味わいたかったの。ならない?
ならいらない? いいや、いる。
……、あー殆どラムネのボーロ、んまんま、な?
ラムネ風味チョコとか紛らわしいだけだろ?
イチも、そう思うよな?
思ってくれるよな?
なに、まだ食べたことないから?
だったらいまから、思い知れ!」
箱をひったくり、中身を味わい、残る粒をめくるめく央路の口に押し込んだ。
やがて央路から、思い通りの反応をひき出せた理亜だった、ものの。
「でもこれが、売れてるんだろうな。
毎年どっかしらにあるんだ。
ラブリッチェマーク、なかなかでない。
次は普通のチョコのと一緒に買って来ようぜ……」
ラムネはラムネで、嫌いになれない。