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アメジストの章 その16

 そんなソフィアの思惑を知ってか知らずか、天使のソフィアは挑発するように声をかけてきます。


「うまく槍を使っているようだが、いつまで持つかな? ここからでもはっきり見えるぞ、槍の刃が刃こぼれしているな。お前のつばさもいつまで持つか。そろそろあきらめたらどうだ?」

「わたしは折れないわ。あんたなんかに絶対負けない。戦争兵器の力で、かわいそうなイズンたちを無理やり戦わせるあんたなんかに、絶対負けてなるもんですか!」


 天使が軽くはなった矢を、ソフィアが怒りにまかせて槍ではじき返しました。ガキンッという甲高い音とともに、はねかえった矢が天使におそいかかります。完全に油断していた天使は、突然の攻撃にうまくかわしきれませんでした。矢がつばさに当たり、バランスがくずれて落下していきます。なんとか風をつかみ、墜落はまぬがれましたが、ソフィアはそのすきを逃しませんでした。重力に身を任せて、天使めがけて急降下していきます。


「食らいなさいよ!」


 その場に静止するのでせいいっぱいだった天使は、あわてて矢を連射します。ソフィアは構えた槍の刃をうまく動かして、最小限の動きで矢をはじいていきます。白銀の稲妻のように、闇を切りさきソフィアは天使をつらぬいた……かに見えましたが、天使は三日月の刃を、冷静に弓で受け止めたのです。ピシピシッと白鳥のシルエットの弓にひびが入りますが、矢を一発はなつだけの耐久力は残っていました。超至近距離ではなたれた矢は、ソフィアの胸をつらぬいたのです。


「ううっ!」


 くぐもった悲鳴をあげると、ソフィアはそのまま地面へ落下していきました。追い討ちをかけようと天使が弓を引きましたが、白銀の弓は粉々に砕け、ちりとなって消えていきました。


「わたしの弓を砕くとは。だが、あれでは助からないだろう」


 天使の言葉通り、ソフィアの紫色のつばさは消え去り、白銀の槍も折れて砕けていきました。そのままどうにもならずに、ソフィアはがれきへと落下しました。


「あっ、ソフィア!」


 ルドルフと戦っていたアルベールも、ソフィアが落下するところを見ていたので、すぐに落下地点へとかけつけました。もろいがれきだったのがさいわいして、衝撃でからだがつぶれたりはしていませんでしたが、胸には矢につらぬかれた巨大な穴が開いています。エプロンたちも急いでソフィアのもとへかけてきます。


「うそだろ、ソフィア、しっかりしろよ!」


 アルベールにゆさぶられても、ソフィアは返事をしませんでした。ビーズでできた目は、完全に光を失っています。なにより頭に飾られていたアメジストが、暗く輝きを失っているのが、もはや間に合わないことを告げていました。


「ふん、ずいぶんとてこずったようだが、ようやくうるさいハエを殺したようだな」


 ルドルフのしわがれ声が、うしろから聞こえてきました。ソフィアを抱いたまま、ふりかえらずにアルベールはたずねました。


「ハエ……? なんだ、それは。だれのことをいっているんだ?」

「だれのこととは、ずいぶんまぬけな質問だな。お前もわかっているだろう。そこの戦争兵器の残りカスのことだ。だが、うるさいハエがいなくなって、ずいぶん静かになったな。あと残っているのはお前たちだけか。ハエの次はごみそうじとは」

「だまれ……」


 アルベールの赤い髪が、燃えるように逆立ちました。いや、実際に髪が燃えていたのです。髪だけではありません。いまやからだじゅうが燃えていました。ソフィアに火が燃え移らないように、アルベールは優しくそのからだを横たわらせました。


「そのすがたを見るのは、これで三度目か。だが、おかしいな、いつもは暴走状態で、意識を失っているはずだが」


 ルドルフは警戒するようにアルベールをねめつけました。からだじゅうが真紅の炎に包まれていましたが、目だけはいつものアルベールだったのです。アルベールは自分のからだの感触を確かめるように、肩をまわして両手をにぎりしめました。


「理由なんか知らない。だが、おれにとっても好都合だ。もし暴走して意識を失っていたとしたら、お前をぶん殴る感覚を味わうことができないんだからな」


 アルベールのすがたが消え、残された炎がけむりをあげました。アルベールはルドルフの背後に一瞬で移動し、力任せに背中を殴りつけました。はられていた結界がメキッと音をたててへこみました。


「ウララララッ!」


 炎をまとった隕石のように、こぶしを何度もふりおろすアルベールに、さすがのルドルフもヒッと悲鳴をあげました。結界を何重にもはりなおしてあとずさります。こぶしでは結界を破れないと悟ったアルベールは、自分の胸に手を当てました。胸から炎の剣が現れ、それを乱暴に引き抜きます。ルドルフは空に向かってどなりつけました。


「くそっ、役立たずが、なにしてる! 早くこの化け物を止めるんだよ!」


 紫色の矢が、雨のようにアルベールに降りそそぎました。しかしアルベールはよけずに炎の剣で結界を切り破ります。矢がアルベールをおそいますが、アルベールの炎にふれたとたんに、すべて灰になって燃えつきました。


「バカな……」


 アルベールが炎の剣を横なぎにふります。結界をはるひまもなく、刃となった炎をしゃがみこんでかわします。ひざまずくようなかっこうになったルドルフの前に、天使のソフィアがおりたちました。


「その弓、ソフィアが破壊したはずなのに」

「この弓はわたしが自ら創り出したものだ。破壊したところですぐに創りなおすことができる」


 天使のソフィアは、アルベールに弓をかまえました。しかしアルベールはまったく動じず、天使に向かって、「どけ」と一言つぶやきます。天使のソフィアは軽く首をふって、静かにいいはなちました。


「悪の化身よ、浄化されるがいい!」


いつもお読みくださいましてありがとうございます。

最終話まであと残り5話です。7/27に完結する予定です(日曜日に2話投稿予定です)。

どうか最後までお付き合いいただけると幸いです。

また、7/28からは、同じシリーズの新作を投稿予定ですので、よろしければそちらもどうぞ♪

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