21.『美波の幸福が』(恵美
読む自己で。
「悔しいぃ! ったぁ!?」
わたしは鉄柵を叩きつけてひとり痛みで悶絶していた。
わたしは勝負に勝って戦いに負けた。それは紛れもない事実。
美波は高柳中に取られ、美波が離れてからはひとり寂しい生活だ。
「物に当たるのは良くないな、加藤よ」
「あ、小早川……先輩」
こう言うのもなんだが、どうして先輩ではなく美波を選んだんだろう。
「先輩はつけなくていい」と口にし、彼女は穏やかな笑みを浮かべる。
「静さんはどうしたんだ?」
「教室で課題をやっている」
「小早川はなにしに来たんだ?」
「特になにもないな、屋上に来たら加藤がいたってだけだ」
そりゃそうだ、わたしになんか興味があるわけもないだろうし。
「小早川は納得してるのか?」
「ん? ああ、しているよ。というか、するしかないだろう?」
それもそう、美波が、高柳が、お互いが相手を求めたなら外野は黙るしかできない。
なんらおかしなことではない。ただ、
「もう少しワガママになってもいいんじゃないのか?」
だからって好きだって気持ちは簡単に捨てられないだろう。
その程度だったらそりゃ負けるに決まっている。
「どれだけ足掻いたところで状況は変わらないし、より惨めになるだけだろう? それに私はしてはいけないことをしてしまった。普通の友達に戻れたのも、彼の優しさあってのものだ。普通なら友達に戻れないどころか嫌われて終わりだというのにな」
そうか、乾にも協力してもらって変な環境を作り上げたんだよな。
でも、わたしが高柳の立場だったら心が壊れかねないぞ、それは……。
だから耐えた高柳は凄いし、潰れる前に支えられた静さんも凄い。
……やっぱり人はひとりでは生きられないんだ。金とかそういうことではなく、根本的な問題としてだ。
「……嫌だけど、美波が幸せそうなら良かったよ」
「ああ、中が幸せそうなら私も嬉しい」
認めたくないが、美波が認めた相手だということを忘れるな。
好きな子が好きな人と楽しそうにしているなら、できているならそれでいい。
ここで終わる。
ありがとう。




