天使、活動拠点を手に入れる
ここは王都の北に位置する街アンター
王都が近いこともあって犯罪者の少ない平和な街だ。
そして平和なのにはもうひとつ理由がある。
「がはは!このブン様に参ったと言わせたやつには100万ゴールドだ!つええやつ挑戦してこいや!」
「我は侍サダマエ!我に剣で勝てばこれまでの挑戦者が出てきた金を全てやろう!」
人の往来が激しい中大きな声で注目を集める人達。
この街では年に4回高額な賞金の賭けた武闘会が開かれるためこうして腕自慢が多数見られるのだ、そのためもしスリでもしようものなら捕まえられてボコボコにされてしまう。
そのためみんなムキムキなのに平和という変わった街が出来上がっていた。
「やっと着いた…うわ、本当にみんな怖い…」
どういった街かは使用人達から聞いたことがあったため知っていたがそれでもビビってしまうのは仕方の無いことであった。
怖がってばかりもいられないので宿を探す。
少しはお金を持っているがそんなに良い宿には泊まれない、現状収入源は一切無いので慎重になるのは当然だ。
宿のような店は沢山ある、どこに入るか慎重に決める。
キラキラしてるあそこはやめておこう、絶対に高い。
あっちのボロボロの所は安そうだが、ご飯も食べたい。旅に出て記念すべき初めての食事がほとんど米の入っていないお粥などだったら悲しくなってしまう。
ちょうど良さそうなお店は…あった!
地味な建物だがそれなりに綺麗でなんだがいい匂いがする、もう少しでお昼なのでその準備をしている匂いだろう。
ここに決めた。
意を決して中に入りカウンターのおじさんに話しかける。
「あの〜一晩いくらですか?」
「おっ、お嬢ちゃん可愛いねぇ〜…一晩5千ゴールド、うちでご飯食べてくれるならご飯はサービスしちゃうよ!」
「本当ですか!では一晩お願いします!」
これはラッキーだった、宿の値段は良心的だしご飯は無料、お風呂もつかっていいらしい。
早速笑顔で会計を済ます。
「ほぅ…」
会計を済ますとおじさんに顔をジロジロ見られる、いやらしい目では無いのだが、なんだか値踏みされてるようで居心地が悪い。
「な、なんでしょうか?」
「あーすまないね!こんなべっぴんさん珍しいもんだから、お嬢ちゃんこの街には来たばかりかい?いつまで滞在する予定なんだ?」
「あ、はい、ついさっき来たばかりです。この街にはそうですね…多分しばらくはいると思います」
おじさんの目が一瞬怪しく光っていたのだが、それを見逃し正直に答えてしまう。
しばらくはここで冒険者登録をして活動しつつ、武闘会なんかにも出てみようかと考えていた。
「なるほど…お嬢ちゃん、いい話があるんだが聞いてかないか?」
「いい話ですか?」
「あぁ、お嬢ちゃん多分手持ちが心もとないんだろ?ならしばらくうちに泊まってったらどうだ?」
…?どういう意味だろうか、おじさんの言葉の意図がわからず首を傾げてるとおじさんは続けた。
「お嬢ちゃんは可愛い、多分この国の女全員集めても3本の指には入るだろう。だからお嬢ちゃんにはここで飯を食う時に他の客と相席してお酌してやったりして欲しいんだ」
「お酌ですか?それくらいなら別に構いませんが…」
「話をしたりお酌してくれるだけでいい、それだけで明日以降の宿代は全部タダだ、どうだ?」
「ええっ!?」
うう…正直かなり怪しい。
こんな破格な条件まず間違いなく普通ではない、何か裏があるのだろう。
だが節約出来るのであれば節約したい、背に腹はかえられぬというやつであった。
「どうする?」
「お、お願いします…!」
「よっしゃ!あとここで飯食わない日があってもいいが週に5日は出てくれよ、今晩からよろしくな!」
言われなくてもここ以外で食べることはほぼないだろう、今晩からというのも快く了承した。
(『裏』が怖いけど…まぁなんとかなる、はず)
なにより寝床とご飯を心配しなくて済むようになったのはとても有難かった。
今日はここまでです。