閑話「ユニが家出したその後」
エリック=ユニの王子だった頃の名前です
これはユニが城から家出したあとの話。
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朝、エリック第一王子に起床の時間を知らせるため部屋をノックした執事のクロウは違和感を感じた。
いつもならばすぐに帰って来る第一王子の返事がないのである。
普段第一王子は朝早くから活動している。
とある日はまだ日の出ていないうちから技を磨いていたり、またとある日は城の中の賢者達に魔法について何かを聞いて回っていたり、そしてまたある日は料理人に調理技術を聞いていたりしていた。
最近は暗い表情を浮かべていることが増え、そういったことをする日も減ったが、そういうお方なのだ。
そしていくら落ち込んでいても、普段はこの時間には間違いなく起きておりクロウがノックするのを待っている。
この後着替え、今日の予定を正確に伝えなければクロウが処罰を受けることを知っているからだ。
……最近第一王子の様子がおかしい。
これは城の侍女や執事であれば誰でも知っている事実である。
そして侍女や執事達は無能ではない、第一王子の身の回りで起きていることを知れば、皆その原因に思い当たる存在がいる。
「ま、まさか……」
『最悪の事態』を想像し身を震わせたクロウは、すぐに執事筆頭のところまで向かうのであった。
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「ぬぅ……!お、愚かな真似を……!」
玉座で神妙な面持ちで話を聞いていた国王が、その顔を怒りに染め第二王子達に叱責する。
「お、お待ちください父上!心当たりがございません!」
「そうです父上!それに何の証拠も無いではないですか!」
第二王子と第三王子は勿論今回の件は自分達には関係ないと食い下がる。
怪しい言い方になっているのはやましいことが頭の隅をよぎったからだろうか。
「黙れ……っ!貴様らが怪しい者と繋がっていると執事筆頭から報告が上がっておる…!くっ…お前達の性根を見抜けず裏を取るため時間を使った私が愚かだったか……っ!」
「「そ、そんな…」」
そんな表情をしてしまえば自白したも同然なのだが、それに気付かない第二王子達はなおも潔白を訴える。
「な、何かの間違いです父上っっ!俺は…俺は…!」
「おい!そこの執事!お前が執事筆頭か!?誤解だったと今言えば許してやる!」
泣いて頭を下げ何かを乞う第二王子と、大声を挙げて王の目の前で執事筆頭を脅迫する第三王子の様子を見て国王には更に苛立ちが積もる。
自分の息子が執事筆頭の顔すら覚えられないバカ息子だとは…。
「もう、……よい…」
「「……は?」」
「よ、よい、とは?」
「お許し頂けるのですか?そうですよね!僕達は王子で……」
「やかましい……ッッッ!!!」
国王の雷のような怒号を受け黙る第二王子達。
「もうここにおらんでよいと言ったのだ…っ!エリックを殺していないと言うのならば見つけてこいっっ!エリックが自分の意思で出たにしろそうでないしろ貴様らのせいだろう…ッ!エリックを連れてくるまで戻るなッッ!」
「「そ、そんな……うぅ…」」
泣き崩れるがもうどうにもならない。
もし万が一兄を見つけることが出来たとしても、これまで散々なことしてきた自分達に素直に付いてきてくれるわけがないのだ。
父の顔を見ると、もう何を言っても無駄だとわかる。
あまりの状況に頭の中が真っ白になり、蹲りながら泣くことしか出来ない2人。
「「うぅ……」」
執事筆頭含め、その場にいた使用人は全員泣いてる2人を冷めた目で見ているが、完全に自業自得なのであった。




